三菱がPHEV部門で2022年上半期ワンツー達成! ランエボマイスターは三菱PHEVの4WDをどう斬る!?

■三菱の4WDテクノロジー

 こうした三菱4WDの進化の歴史を知ることなくして現在の三菱4WDの在り方を語ることはできない。

 アウトランダーPHEV、エクリプスクロスPHEVはともに前後アクスルに電動モーターを搭載し、電動駆動4WDとして走る先進的なパワートレーンを備えているのが特徴的だ。駆動力およびその前後配分は電動化することでより緻密に、かつ自在に制御することができる。

 しかし、制御するためにはロジックの確立が不可欠であり、重要だ。三菱はWRCで培った電子制御ロジックをランエボやこうした4WDのPHEV車両にフィードバックしている。ランエボ時代は油圧多板クラッチを電子制御し、またブレーキ制御と組み合わせ高度な走りを支えていた。

 それが現代のPHEV車では前後駆動力を自在に配分し、また必要に応じて4輪のブレーキを個別にかけて制御し、ドライバーが求めるヨーレートを引き出している。

■三菱4WDはPHEVで大きく進化

2021年登場の現行型三菱 アウトランダーPHEV
2021年登場の現行型三菱 アウトランダーPHEV

 アウトランダーPHEVとエクリプスクロスPHEVはほとんど同じパワートレーンと思われていて、その制御にも差異はないと考えている人が多いだろう。しかし、実際には微妙なところで差別化が図られている。

 というか、後から登場したモデルにはより新しい制御が組み入れられているというべきだ。そういう意味では最新型アウトランダーPHEVに採用されている制御が最も新しい。

 エンジンやモーターの出力向上だけでなく、どのように駆動力を発揮させるかの面で制御の進化が現れているし、また実はブレーキの使い方にも進化が盛り込まれている。

 AYCはランエボ以前には油圧クラッチで左右の駆動力配分を制御し、車体にヨーレートを発生させる装置だった。油圧のキャパシティやクラッチ容量などにより、0:100制御は不可能で、コーナリングの一場面で駆動力配分を使う。

 ドライバーがその特性を理解し、コーナーのどの区間で、どの程度のキャパシティを使うかが乗りこなしの肝となっていたわけだ。

 電動モーターを使うことで、その制御幅は大きく拡大し、またドライバーが意識的に操らなくても車載のセンサー情報が理想的なヨーの発生や収束を可能としている。特別な乗りこなしテクニックを知らなくても、自由自在に思ったラインをトレースできるレベルにまで進化してきたのだ。

■ガソリン車時代の魅力

ガソリン車時代のAYC搭載車は、速くコーナーを抜けるにはコツを必要とした。多少オーバースピードでコーナーに進入し、豪快にドリフト姿勢に持ち込むシーンが世の自動車ファンをランエボの虜にしたのだ
ガソリン車時代のAYC搭載車は、速くコーナーを抜けるにはコツを必要とした。多少オーバースピードでコーナーに進入し、豪快にドリフト姿勢に持ち込むシーンが世の自動車ファンをランエボの虜にしたのだ

 だがしかし、実はまだ100点満点ではない。それはブレーキング時のヨーコントロールに進化の余地が残されているからだ。

 コーナーにアプローチする際に減速を行う。ランエボなどガソリン車の時代はフットブレーキとエンジンブレーキにより減速を行うが、ブレーキは減速のための装置として機能していてAYCより優先されていた。

 そのためブレーキを強く踏んでしまうと、AYC機能が制限されてブレーキアンダーステアが生じてしまっていた。

 それを回避するために多少オーバースピードでコーナーへアプローチし、AYCで車体にスリップアングルを発生させてコーナリング抵抗で減速させながらクリップに向きを変えるのが特殊な乗り方と言えた。

 そこからアクセルオンすることでパワーを4輪にかけ、4輪ドリフト走行姿勢に持ち込むことで「ゼロカウンター走法」が可能となる。もちろん、これはサーキットを攻める場合の走法だが、その華麗な4輪ドリフトシーンは世界中で多くのランエボファンを魅了したはずだ。

次ページは : ■ブレーキAYCを初搭載したエクリプスクロスPHEV

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