AT車において、シフトをR(リバース)やP(パーキングレンジ)に入れる際は、クルマが完全停止をしたあとで操作するのが基本。教習所でもそのように習ってきたことだと思う。これは、クルマがまだ動いているときにPやRに入れると、ミッションを破損してしまう恐れがあるためだ。
しかし昨今は、機械的に繋がりのない電制シフター(シフトバイワイヤ)が急速に普及してきており、その事情は変わっているはず。実際に試みることは断じて推奨しないが、はたして、走行中にギアをPやRに入れるとどうなるのか?? 従来型のシフトとの違いを紹介しよう。
文/吉川賢一、写真/AdobeStock(トップ画像=wolf0724@AdobeStock)
ミッション破損のリスクを排除するために生まれた「電制シフター」
「Pレンジ」は、オートマチックトランスミッション(以下AT)ギアボックス内部のギアシャフトがそれ以上回転しないよう、ギアにツメがはまり込むことでロックされる状態のこと。
クルマが完全停止する前、ギアが回転しているときにPレンジに入れ、ギアにツメがはまってしまうと、「ガッガッ」という大きな衝撃と、「ダダダ、ガリガリ」といった機械を叩くような音とともに、ロック機構が破損してしまう恐れがある。
ワイヤーやロッドとトランスミッションがつながっている従来シフトのAT車では、クルマが完全停止する前でも、誤ってPレンジに押し込む操作ができてしまったため、ドライバーが誤ってシフト操作をしたことで、ミッションが破損してしまうことが多くあった。
自動車メーカーとしても、誤操作を防止するためにシフトゲートに段差を付けたり、ロックピンやトランスミッションの耐久性を確保したり、誤操作によって(タイヤがロックすることで)スピン事故になることを防止するため、誤操作した際は、あえてロックピンが破損するような構造にしていた。
また、Rレンジに入れたあとにリバースギアがかみ合うまで数秒のラグを設ける(駐車場での切り返しで、Rレンジを急ぐユーザーが多かった)といった対策を織り込んでいたりしたが、それでもミッションを壊してしまうユーザーは少なくなかった。
誤操作によってトランスミッションを破損するリスクを排除するため、シフトチェンジを電気信号(シフトバイワイヤ)でやり取りするようにしたのが、「電制シフター」だ。
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