歌手のYOSHIさん右直死亡事故は防げなかったのか? バイクの右直事故を防ぐにはどうすればいいのか? クルマ・バイク双方の運転手が徹底すべきこと

■10年間でバイクの交通事故死亡者数は大きく減っているのに、50代以上のライダーの死者数はむしろ増えている!

 2021年1年間で、全国で自動二輪(排気量50cc超)乗車中に交通事故で亡くなった方の数は自動二輪332人、原付131人の計463人でした。

 自動二輪での死者数は、2011年の515人から、2021年には332人と、183人(35.5%)も減少しています。それにもかかわらず、50代以上のライダーの死者数は逆に2011年の124人から8人増えて、2021年に132人となってしまいました。

出典:警察庁交通局 令和3年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について
出典:警察庁交通局 令和3年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について

 また、死亡者の全体に占める50代以上の割合は、2011年には24.1%だったのに対し、2021年は39.8%と大きく増加しています。

 大型バイクに乗るリターンライダーの数が増えたことが、オッサン世代の死亡事故増加につながっていると見られます。北海道警の統計では、過去5年間で観光・ツーリング目的で北海道を大型バイクで訪れて交通事故で死亡した31人のうち、50代以上は17人と、全体の半分以上、54.8%を占めています。

 また右直死亡事故の件数ですが、警察庁が発表している2021年の全国の交通事故統計情報オープンデータ(総件数305196件)には右直事故そのもののデータはありませんでした。

 交差点内でクルマが第一当事者(過失度合いが高い)と自動二輪が衝突して死亡事故になった件数(右直だけでなく出会い頭・左折・正面衝突も含む)は全部で118件、そのうちでライダーの年齢が45歳以上だった件数は60件、50.8%となっていました(データが45歳以上の10歳刻みで分類されているため)。

 警視庁がまとめた都内での過去5年間の原付含む二輪車乗車中の交通死亡事故のうち、右折時の死亡事故が占める割合は9.4%となっています。

■ドライバーにはバイクの挙動が予測不可能だと思っておくぐらいでちょうどいい

バイクに乗った経験のないドライバーが、バイクの「次の挙動」を予測するのは難しい。ましてや交差点では死角が発生しやすいため、ドライバーとライダーの双方が想定しえない事故が起こる(Kanazawa photo base@Adobe Stock)
バイクに乗った経験のないドライバーが、バイクの「次の挙動」を予測するのは難しい。ましてや交差点では死角が発生しやすいため、ドライバーとライダーの双方が想定しえない事故が起こる(Kanazawa photo base@Adobe Stock)

 リターンライダーの方なら、久しぶりにバイクに乗った時に「バイクって思い通りに操れて、クルマと比べて圧倒的に小回りがきいて加速もよくて楽しい!」と感じたと思います。

 ですが、裏を返せばそれは、「かつてバイクに乗っていたあなたでさえも、クルマに乗っているうちに、バイクの加速性能や機動性の高さを忘れていた」ということでもあります。

 そう考えると、バイクに乗った経験のないドライバーが、バイクの「次の挙動」を予測するのが、どれだけ難しいことかわかるかと思います。

 またつい忘れてしまいがちですが、バイクはクルマよりも小さいため、クルマからはバイクの存在に気づきにくく、見えたとしても実際にいる位置よりも遠くにいるように見える上、出ているスピードも実際よりも遅く見えます。

 このバイクの特性により、クルマしか運転しないドライバーは常に、バイクを「過小評価」しがちです。ドライバーからはバイクの存在に気づきにくいうえ、次にどう動くのかを予想するのが難しく、バイクが視界に入っていたとしても、まだ遠くにいてすぐには近づいてこない、と感じてしまっているのです。

 これが右直事故の大きな原因です。バイクから見るとクルマが強引に右折してくるように見えますが、クルマからはバイクがそんな近くにいるようには見えないのです。

 また、先行するクルマが右折し、後続するあなたのクルマも右折しようとしたとき、あなたのクルマからは一台目の右折車が作る死角により、直進しようと交差点に進入してくるバイクが見えていない可能性があります。特に一台目に右折したクルマがトラックの時は死角が大きくなり、危険度が増します。

バイクからは右折車2台目のクルマが見えているが、右折車2台目のドライバーからバイクが見えていないケース(筆者製作)
バイクからは右折車2台目のクルマが見えているが、右折車2台目のドライバーからバイクが見えていないケース(筆者製作)

 一台右折した後、「自分もいけるかも」と右折待ちしているドライバーが思うのは自然なことかもしれませんが、確認を怠って右折をするのは本当に危険です。

 ライダー側は、後続車がつられて右折してくる可能性が高いことに注意すべきです。

 バイクからは二台目の右折車が見えているため、ドライバーからも自分が見えていると思い、「まさか右折してこないよね」と思い込みをしがちになります。そのため減速せずに交差点を直進してしまい、重大な右直事故につながってしまいます。

 また、このケース以外にも、死角を原因とした右直事故がよく起きています。

 右折しようと思っているクルマから、対向車線のトラックの後ろについて走っているバイク死角で見えず、そのトラックが交差点を左折しようとした時に、後ろにいるバイクに気づかないまま右折しようとして右直事故を起こしてしまうケースなど、ドライバー・ライダーの両者が想定しえない事故も起こりえます。

対向車からもバイクからも、死角によってお互いが見えていないケース(筆者製作)
対向車からもバイクからも、死角によってお互いが見えていないケース(筆者製作)

 バイク対クルマの事故では、バイクに乗っている側の被害がどうしても大きくなりがちです。ライダー側の過失度合いが低くても、あるいは全く非がなくても、死んでしまったら元も子もありません。

 筆者を含め、全てのライダーは、「対向右折車よりも直進する自分のバイクの方が優先されるべき」だという考えにとらわれて事故に巻き込まれることだけは避けなければなりません。

 ライダーは、右直事故はバイク側でしか防げない、という気持ちを持ち、常に事故を予測して走るライダーになりましょう。青信号の交差点にクルマの間をすり抜けて進入するなど、死角が多くドライバーから予測が極めて困難な行為は、右直事故の直接的な原因となります。

 そして、必ずヘルメットを被ってあごひもを締め、近場に出かけるときでも胸部などにプロテクターを着用するようにしましょう。

 また、ドライバーは、見通しの良い道路であっても、右折時には他のクルマの死角から急にバイクが現れたり(上記で説明した通り実際には急でないことも多い)するかもしれない、ということを頭に常に入れておかなければなりません。

 スピードの出る道路で、信号が右折用の矢印付きの赤に変わってからの右折でも油断はできませんが、直進のバイクが前方から来る可能性のある青信号での右折の際は本当に気をつけてください。どちらがいい、悪いと言ったところで、事故を起こしたり、人が死んでしまったらもう取り返しがつかないのですから。

筆者が愛用するプロテクター(胸部と膝・脛部)、胸部プロテクターはマジックテープでジャケットの内側に固定、バイクに乗車中の事故死者のうち、胸部損傷によるものは3割近いので、胸部プロテクターをつけるだけで多くの命が助かる
筆者が愛用するプロテクター(胸部と膝・脛部)、胸部プロテクターはマジックテープでジャケットの内側に固定、バイクに乗車中の事故死者のうち、胸部損傷によるものは3割近いので、胸部プロテクターをつけるだけで多くの命が助かる
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