トヨタ ハリアーにPHEVをなぜ導入?? トヨタ販売現場の声と今後の展望

販売店ではどう受け止める? RAV4とのすみ分けはいかに

 RAV4にPHEVが設定された際には、大フィーバーとなり、PHEVが受注停止となったのは記憶に新しい。今回、大人気車種ハリアーにPHEVが設定されたが、販売現場の様子はどうだろう。

 筆者が取材を行ったのは、プレスリリース後ではあるが、正式発売前の段階。それを加味しても、ハリアーPHEVに対するユーザーの反応は、少し冷めたように感じた。

「改良モデルの登場と新グレード(PHEV)の設定はありがたいが、問題はクルマがいつ来るのかということに終始しています。年単位の待ち時間はほぼ確定だと思うので、RAV4の時のように、いけいけどんどんで販売することも難しいでしょう。熱の入り方は、販売店ごと、あるいは営業マンごとに結構差があります」(トヨタ販売店営業マン談)

 販売店で話を聞くかぎり、RAV4 PHEVとのバッティングはほとんどないようだ。通常モデルのハリアーも充分魅力的であり、PHEVに偏重した売り方もされていない。ハリアーPHEVでは、すみ分けや売り分けで、販売店が苦悩することはなさそうだ。

ハリアーPHEVから見えた日本市場の危機感と気になるライバルは?

ハリアーPHEVの直接的なライバルとなるレクサスNX450h+。価格は714万~738万円
ハリアーPHEVの直接的なライバルとなるレクサスNX450h+。価格は714万~738万円

 ライバルは、PHEV搭載モデルの筆頭格として三菱アウトランダーPHEVが想像できる。ただ、価格やキャラクターはどちらかというとRAV4寄りのアウトランダー。ハリアーPHEVとガチンコという感じはない。

 価格帯だけで考えると、マツダCX-60が適役だが、全幅・全高が若干広く、高くなるため、ボディサイズが一回り大きく感じる。セダンライクな乗り味の好きなハリアーユーザーが、CX-60のデザインや乗り味をどう感じるのか。ここにも疑念が残るため、直接的に争う相手ではないだろう。

 やはりハリアーのライバルとなるのは、同門のレクサスNXになるだろう。先代でもプレミアムSUV市場で大きな覇権争いをした両車。価格はNX450h+の方が高いが、この構図も先代のハリアー対NXと同じ状態である。ハリアーかNXか、どちらを選択するかで迷うユーザーが多いのではないだろうか。

 いっぽうで、筆者には今PHEVを選ぶ必要があるのかという疑問も湧いてくる。

 ハリアーPHEVのパワートレインは、RAV4 PHEVのものと同じものだ。RAV4 PHEVの車両本体価格は563万3000円に対して、ハリアーPHEVは620万円である。500万円台なら考える余地があると思うが、600万円の大台に乗ると、PHEVにこだわらなければ高級SUVの選択肢は輸入車にも大きく広がっていくからだ。

 装備や質感の差があり、通常モデルでもハリアーとRAV4の間には、約60万円の価格差はあるが、果たして620万円出してPHEVにこだわる必要があるだろうか。

 電動車に対する日本市場の先行きも、確度の高い決定が下されていない状況で、積極的にハリアーPHEVを選ぶ理由が、まだ筆者には見当たらない。圧倒的なパワーは魅力の一つだが、現時点でハリアーを選ぶなら、Zレザーパッケージにオプションを盛っていくほうが、この先5年間の保有満足度は高くなるような気がする。

 日本の施策がしっかりと決まらなければ、各メーカーは、さらに海外へ目を向けた商品開発を進めていくだろう。ハリアーPHEVの登場から、不確定な日本の方策への警鐘を筆者は感じ取った。ハリアーPHEVに対する、国内、そして海外の反応を注視しながら、今後の展開を見守りたい。

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