■EUが一気にEV化を進める理由とは
これをESG投資という。従来の財務情報だけではなく、E(エンバイロンメント:環境)、S(ソーシャル:社会性)、そしてG(ガバナンス:企業統治)を重視した投資を指す。SDGs(国連の持続可能な開発目標)とも深く関係し、2010年代後半からESG投資の大嵐がグローバルで吹き荒れた。
このような環境関連の投資と経済対策が、まさかここまで急激に進むとは、日系メーカーはもとより、欧州メーカーですら正確には予測できなかったはずだ。
そうしたなか、まずは欧州プレミアムブランドの一部がEV専用ブランドへの転身を図ることを表明している。
アウディが2026年までに、そして長らく世界の自動車産業界(及び自動車関連技術)をけん引してきたメルセデスベンツは「市場環境が整えば、2029年までにグローバルで新モデルをすべてEV化する」という事業方針を打ち出しているところだ。
■日本メーカーはどうする?
当然、欧州でのEVシフトの嵐は、日本メーカーの経営にも大きな影響を与えている。
欧州自動車工業会によると、欧州内での日本車シェアはトヨタ6.3%、日産1.8%、マツダ1.3%、三菱0.7%、ホンダ0.4%という状況だ。各社とも、2035年を最終目標とするというより、まずは足元の数年先の対応に苦慮している模様だ。
むろん、EVシフトを含めた電動車対応では、日系メーカー各社にとって欧州市場よりも製造・販売台数が多い中国やアメリカの動向も睨む必要がある。
特にアメリカでは、2021年7月のバイデン大統領による「2035年までに新車50%以上を電動化」という大統領令と、2022年8月に具体案が公表された「IRA」(インフラ抑制策)の影響が極めて大きいと指摘する日系メーカー幹部が少なくない。
こうしたグローバルで複雑に絡み合うEVシフトに対して、日系大手3社の対応を俯瞰(ふかん)してみよう。
■日系大手3社のEVシフトへの対応は?
まず、トヨタは2030年までにトヨタ全販売数の1/3相当となる350万台をEV化するとしている。一部報道では、この動きをトヨタがさらに加速させようとしている、と言われている。
この報道の信用度に関わらず、トヨタとしても世界のEVシフトの変動幅が大きい現状では、EV関連での事実上のトヨタアライアンス(ダイハツ、スバル、マツダ、スズキ)とのEVブランド戦略のすみ分けを模索していると考えるのが自然だろう。
ホンダは、そもそも一匹オオカミだが、唯一の友好的パートナーであるゼネラルモーターズ(GM)との連携で、ホンダ主力市場のアメリカをまずは抑えに入る。また、中国では当面、中国でのNEV(新エネルギー車)政策への対応で中期的な様子見といったところ。その後、2040年にグローバルでEV及びFCV100%を目指すが、その道筋はまだはっきりと見えてきていない。
日産は現時点で、ルノーとの資本関係の変化のなかで中長期的なEV関連投資を模索している状況だ。当面は、e-POWERのグローバル展開で食つなぐが、2010年代のEVシフトを先導した知見をもとに、無理な事業戦略は描かないと見込まれる。
いずれにしても、欧州基点で急加速しているEVシフトの行方は、大筋では先ゆき不透明であり、そのなかで日系メーカー各社が”もがいている”状況である。
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