■バランスの取れた商品開発がスズキの強み
スズキに話を戻すと、2022年度上半期決算は、前年同期比が32.5%増の2兆2175億円で過去最高になった。純利益も1151億円で14.5%増加している。国内販売についても、最近は増加が続く。2022年9月の国内販売台数は、前年の146%に達した。同10月は128%、同11月は116%となっていた。
スズキの好調な販売の背景には、バランスの取れた商品開発がある。国内市場で見ると、2022年1~11月におけるスズキの国内販売順位は、トヨタに次ぐ2位であった。以下、ダイハツ、ホンダ、日産と続く。
国内の売れ筋カテゴリーは、2022年1~11月の場合、軽自動車が39%を占めた。スズキは軽自動車が中心のメーカーだから売れゆきを伸ばしたと思われそうだが、軽自動車の届け出台数にかぎると、スズキよりもダイハツが多い。
つまり、スズキは、小型/普通車も相応に販売したから、軽自動車がダイハツより少なくても総台数では上回ったのだ。ダイハツの国内販売総数に占める小型/普通車の比率は6%だが、スズキは17%だ。ダイハツはトヨタの完全子会社で、日本では主に軽自動車を担当するが、スズキにこのような役割はない。
スズキによると、「軽自動車が今後も高い人気を保てる保証はなく、小型/普通車にも力を入れている」とのことで、販売面のバランスもいい。
そして2022年1~11月におけるスズキの小型/普通車の登録台数は、スバルや三菱よりも多かった。スズキの小型/普通車の販売比率は17%でも、相当な販売規模に達しているわけだ。
■スズキの「軽くてシンプル」なクルマ作りこそが好調な販売を支える
この好調な売れゆきを支えるのが、スズキのクルマ作りだ。軽自動車の場合、スペーシアなどは装備をかなり充実させているが、アルトのように100万円以下の価格帯に買い得グレードを設定した車種もある。
アルトはマイルドハイブリッドも用意するが、ベーシックなFFのAやLなら、車両重量は680kgに収まる。そのために電動機能を採用しなくても、2WDのWLTCモード燃費は25.2km/Lと良好だ。価格は100万円以下に収まる。
アルトのように機能をシンプルにして車両重量を軽くすれば、自ずから燃料消費量も減り、複雑で高価なメカニズムも不要になる。半導体などの部品点数も減り、納期も短く抑えられる。
つまり、軽くてシンプルな商品開発は価格が高まったり、納期の延びたりする今の課題を解決する有効な手段だ。アルトなどのスズキ車は、特別なクルマ作りは何もやっていないが、商品開発の本質を突いている。
スズキ車は納期も短く、販売店では「ジムニーなどの例外を除くと、大半の車種の納期が4か月以内に収まる」という。スズキのクルマ作りは、地味で話題になりにくいが、参考になるところが多いと思う。
【画像ギャラリー】軽くてシンプルなクルマを作るからスズキは販売好調!? スズキのクルマが売れるワケ(11枚)画像ギャラリー
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