もし日本のクルマの半分がEVになったら仕事が激減する職種と生き残る道

エンジンオイル、クーラント液などの製造メーカー

 エンジンがモーターに切り替わってしまうと、エンジンに必須のオイル類は不要となる。エンジンの冷却、潤滑、洗浄、防錆、密封が役割のエンジンオイルは不要となるし、エンジン内部を循環してエンジンを冷却するクーラント液も不要となる。

 ブレーキオイルやミッションオイルなど、バッテリーEVとなっても必要とされる油脂類はあるが、ギア1速でも十分な速度カバーレンジをもつモーター駆動の場合、トランスミッションの必要性は低く、ミッションオイルは最小限となるため、ミッションオイルへの需要は減る傾向になる。参考だが、日産R35 GT-Rのミッションオイルは10L必要だが、日産リーフでは、たった1.4Lで済んでしまう。

 オイル自体はあらゆる機械で求められる重要アイテムであり、オイルメーカーとしては、自動車以外へ転用する道筋を、既に立てていることだろう。

ガソリンスタンド

 そしてもちろん、日本のクルマの半数がバッテリーEVになってしまったら、ガソリンの需要はガタ落ちとなるため、ガソリンスタンドも、従来の通りの経営では継続不可能となる。

 ガソリンスタンドは、1996年のガソリン輸入の解禁や低燃費なハイブリッド車の普及などの影響で、ここ10年で半数以上も減少しており、さらに昨今の原油価格高騰や円安の影響で、現状でもかなり経営は厳しいとされている。そのためか、すでに積極的な対策を進めているところが多く、フルサービス式からセルフ式へと変更(人件費の削減)はもとより、車検対応や保険の販売、中古車買取事業、レンタカー事業、カーコーティング事業、高級コーヒー店を併設、など、別業態を並行して始めるガソリンスタンドが増えてきた。なかにはエネオスのように、2年ごとに新車へ乗り換える「クルマのサブスク」事業を始めるなど、新事業にもチャレンジし始める事業者も登場している。

 また英国では、石油大手のシェルが、古いガソリンスタンドを改装したバッテリーEV専用充電ステーションを、2022年1月に営業開始している。9基の充電設備とコンビニエンスストア、コーヒーショップなど、顧客サービスも十分だという。日本にも、こうしたバッテリーEV専用ステーションが誕生する日は近いかもしれない。

ガソリンスタンドは、車検対応や保険の販売、中古車買取事業、レンタカー事業、カーコーティング事業、高級コーヒー店を併設など、別業態を並行して始めているところが増えている(PHOTO:Adobe Stock_Quality Stock Arts)
ガソリンスタンドは、車検対応や保険の販売、中古車買取事業、レンタカー事業、カーコーティング事業、高級コーヒー店を併設など、別業態を並行して始めているところが増えている(PHOTO:Adobe Stock_Quality Stock Arts)

規模の小さい整備工場

 部品数が少ないバッテリーEVは、故障の際に修理や交換のできる部分が限られている。そのため、自動車ディーラーや大手カー用品店では、顧客を逃さないよう(リピートしてくれるよう)、様々なサービスを事業展開しており、昔ながらのコンパクトな整備工場では、よほどの「強み」がない限り、大手に太刀打ちできなくなる可能性がある。

 これら小さな整備工場で働く自動車整備士の人々は、スーパーカー整備や旧車の修復専業、カーラッピング技術、内装の清掃など、何らかの技術に特化し、大手との差別化をすることで、生き残る道を探しているところもあるようだ。

 また、出張整備サービスを始めるのもよいと思う。たとえば、整備士のマッチング事業を展開する「セイビー」は、お客様の修理要望に対し、修理スキルを持った自動車整備士をマッチングし、タイムリーに修理をおこなう事業をしている。故障修理(エンジン故障、エアコン故障、オイル交換、セルモーター交換など)や、パーツの取り付け(ドライブレコーダー、バックカメラ、カーナビ、ETCなど)、車検点検なども対応している。個人で整備工場を持つ必要はないため(整備場所は顧客の駐車場や、近隣整備工場を借りる、その段取りはセイビーが行う)、自動車整備士側としては、固定費が無くなり収入も増やせるそうだ。

部品数が少ないバッテリーEVは、故障の際に修理や交換のできる部分が限られているため、規模の小さな整備工場も成り立たなくなる可能性が(PHOTO:Adobe Stock_Satoshi)
部品数が少ないバッテリーEVは、故障の際に修理や交換のできる部分が限られているため、規模の小さな整備工場も成り立たなくなる可能性が(PHOTO:Adobe Stock_Satoshi)

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 先日行われた東京オートサロン2023では、トヨタが、水素エンジンにコンバージョンしたトレノや、バッテリーEVにコンバージョンしたレビンを出展。カーボンニュートラルに向けた本気度が伝わってきた。

 クルマ好き=エンジン好きであることが多いことを考えれば、エンジンがなくなる(少なくなる)ことは、我々自動車専門メディアに従事する者とっても死活問題。日本では、2035年以降もハイブリッド車やプラグインハイブリッド車は販売できるとされているため、(本稿のお題である)日本のクルマの半数がバッテリーEVになるのは、(このままバッテリーEV化が進んでいったとしても)ずいぶん先の話ではあるだろうが、現状のエンジンが、現状の需要のまま維持できるのはあとほんのわずかだ。クルマ好きとしては寂しい限りだが、「クルマ」というものを衰退させないためは、時代の変化には対応していかなければならない。

【画像ギャラリー】国産モデルも続々登場!! 2022年に登場した、国産バッテリーEVたち(12枚)画像ギャラリー

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