「走る仏壇」を覚えてますか…よくも悪くも愛された証!! 殿堂級のあだ名で呼ばれた名車たち

あだ名で呼ばれた官公庁御用達車は国民的人気の表れだ トヨタ・クラウン

あだ名は伊達じゃない! 「殿堂級のあだ名」で呼ばれた名車たち
くじらというあだ名を付けられた4代目クラウン。空力を考慮して丸みを帯びた斬新なエクステリアのためか、1955年の誕生以来初めてクラス首位の座から陥落した不名誉な記録も

 日産自動車の主力モデルであるスカイラインがあだ名で親しまれたように、昭和の時代、長らくライバル関係にあったトヨタ自動車のクルマも、さまざまなあだ名で呼ばれてきた。なかでも日本国民にとっての“アガリのクルマ”として君臨し、パトカーやタクシー、社有車など「日本車のベンチマーク」たる地位を確立し、現行モデルで16代目を数える「クラウン」も印象的な愛称が多いクルマだ。

 初代モデルの登場は1955年。小型車チャンネルだった「トヨペット」ブランドから発売されたセダンは、「クラウン(王冠)」のエンブレムを配した2代目から高級車路線へと舵を切り、3代目にして搭載した直列6気筒エンジンを同車の象徴的なフォーマットとし、ライバルである日産自動車の「セドリック」、「グロリア」と熾烈な販売競争を繰り広げていく。

 そうしたなか、1971年に発売された4代目は先代までの上級志向のオーセンティックなデザインから一転、空力を意識したスピンドルシェープ(紡錘形)と呼ぶ先鋭的なデザインを採用する。

 前後を集約させた丸みを帯びたシェイプに、ボディ一体型のバンパー、ボンネットフードとグリルの間へ車幅灯とウインカーを内蔵した今見ても斬新なデザインは、その見た目から「クジラ」と呼ばれることに。

 自動車デザイン先進国である欧州のトレンドを意識したと思われる“攻め過ぎた”デザインは、保守的なクラウンのユーザー層に響かず、販売実績でライバル車にクラス首位の座を奪われることになったが、時代を先取りするかのようなデザインの革新性は、クロスオーバーモデルで自動車ファンを沸かせた現行モデルにも通じる、クラウンの底力と言えるかもしれない。

 また、80年代前半、6代目後期に設定されたハードトップモデルは、つり上がった目じりが印象的な異形ヘッドランプや、先端がせり出したフロントマスクなどが“鬼の形相”に見えることから「オニクラ」と称された他、2000年代に入ってからリリースされた12代目は、伝統の直列6気筒からV型6気筒などプラットフォームを一新した際の広告キャッチコピー「ZERO CROWN」から「ゼロクラウン」と呼ばれる。

 クラウンといえば、7代目で採用された広告コピー「いつかはクラウン」も有名だが、販売促進のキャッチコピーがそのまま愛称として受け入れられるのは、オーナーとメーカーの信頼関係を象徴しているのかもしれない。

22年モデルチェンジなしの「走るシーラカンス」! 三菱 デボネア

あだ名は伊達じゃない! 「殿堂級のあだ名」で呼ばれた名車たち
1964年に登場した初代デボネア。以来、三菱自動車のフラッグシップとして22年間も基本設計を変えずに生産され続けた。ボディバリエーションは存在せず、4ドアセダンのみだった

 実のところ、筆者はいわゆるスーパーカーブームより後の世代のため、クルマのあだ名全盛期をドライバーとしてリアルに体験した世代ではない。だが、「そういう呼び方もあるのだなぁ」と幼心に鮮烈に記憶しているのが、当時愛読していた「こちら葛飾区亀有公園前派出所(こち亀)」で登場した三菱自動車の「デボネア」に関する内容だった。

 1964年に発売された初代デボネアは、1986年に2代目へとモデルチェンジするまでの22年間、その基本設計やデザインを変更することなく生産された。そのことから“生ける化石”として知られるシーラカンスになぞらえた“走るシーラカンス”と呼ばれていた。

 こち亀では、ある日後輩とクルマでパトロールしていた主人公・両津勘吉が走行中の初代デボネアを発見。「’60年代の生き証人、現代の反逆児」、「どんな思想を持っているやつかしれない」と散々な言われようのなか、実際にデボネアのドライバーがかなりやっかいな人物で……、というのがストーリーの概要。これを読んだ自分を含む当時の少年たちの間ではそんなデボネア像が出来上がってしまったのかもしれない。

 デボネアはその後、三菱の高級ラインとして3代目まで続き、1999年12月に35年に渡るモデルライフに幕をおろしたが、当時を知る自動車好きにとってデボネア=シーラカンスなのである。

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