■過剰化するアクション! 第1作の強盗団から世界を救うスーパーチームへ
アクションはビルを破壊したり、家一軒を爆破するという定番系から、車をパラシュートで落下させるというこのシリーズだからこその見せ場もある。ドムの仲間たちがそれぞれ車に乗り、ハッカーを奪還するためアゼルバイジャンの山岳地域に落下するのだ。
このシーン、実際に車を落下させ、その様子を、頭にカメラを装着したスタントマンが同時にダイブして撮影したという、まさに手に汗握る“スカイミッション”なシーン。実際にやっているからこその大迫力だ。
もうひとつ、アクロバティックなスカイ系のカーアクションが、アブダビの有名な高層ビル群、エティハド・タワーズ。5棟ある高層ビルのうちの3棟を使って、ビルからビルへと車で飛び移るという、これもまた前人未到のスカイミッションと呼びたくなるアクションをやっている。
このアクションシーンで注目したいのはスカイミッションする真っ赤な車。これがWモーターズのスーパーカー、ライカン・ハイパースポーツなのだ。1台が340万ドル(今の日本円でおよそ4億4000万円!)で世界に7台しかないというとんでもなく高価でスペシャルな車。
これが最後は粉々になってしまうのだが、さすがに酷使するシーンはライカンっぽく仕立てたポルシェで代用したらしい。
Wモーターズはアラブ諸国初のスーパーカーメーカーなので、このアブダビのシーンにはとてもマッチした車ということになる。
そこで、そのほかにどんな車が登場するのかチェックしてみよう。
まずは冒頭に登場するステイサム扮するデッカードから。彼が弟の病院から帰るときに乗っているのはジャガーFタイプRクーペ。
同じくドミニクとの勝負で正面衝突する車はマセラッティのギブリ、ロスでドミニクと再会して車対決するときはアストンマーティンDB9。イギリス人だからなのか、ドミニクと比べるとヨーロッパ系の高級車が多い。
一方、ドミニクの車はプリムスのバラクーダ、同じくプリムスのロードランナー。この車がデッカードのマセラッティと正面衝突する。アブダビとロスではダッジ チャージャーに乗っている。
またブライアンの車は、ファミリー向けのクライスラー タウン&カントリー、スバルのインプレッサ、アブダビではマクラレーン、ロスに帰ってからは日産のR35 GT-R、そして最後はトヨタスープラ。彼が青いGT-Rに乗るのは1作目、5作目の『MEGA MAX』(2011)に続いて3度目だ。
こうやって並べてみると、シリーズの1作目を思い出させるような車のラインナップ。近年は高級車にシフトした印象のシリーズだが、このときはまだ初心を忘れていなかったのか。あるいは、ウォーカーへの配慮だったのかもしれない。
ミアとの間に生まれた息子が遊んでいるミニカーのデザインはブライアンの愛車、GT-Rがベースになっていたりもするし、そもそもラストシーンでドムとブライアンが乗っているのはドムがダッジ チャージャーで、ブライアンがトヨタのスープラと、ふたりの出会いを彷彿とさせるチョイス。
しかもそれが……という部分は未見の人には伏せておくが、ファンなら目頭が熱くなってしまうだろう。
●解説●
ショウの犯罪組織から恋人のレティ(ミシェル・ロドリゲス)を奪還したドミニク(ヴィン・ディーゼル)だったが、彼女は記憶を失っていた。そんな彼に悲報が届く。東京にいた仲間のハンが何者かに殺されたというのだ。
その犯人はドミニクたちが痛めつけた犯罪組織のボス、ショウ(ルーク・エヴァンス)の兄デッカード(ジェイソン・ステイサム)だった。
デッカードの復讐を受けて立つドミニクだったが、そこにミスター・ノーバディ(カート・ラッセル)と名乗る米国政府の男が現われる。犯罪組織に拉致されたスゴ腕のハッカーと、彼女が開発した監視プログラム“神の目”を奪還して欲しいというのだ。
監督はジャスティン・リンから、『死霊館』シリーズ等のホラー映画でお馴染みのジェームズ・ワンにバトンタッチ。興業的にもシリーズ最高の数字を叩き出したが、やはりそこにはポール・ウォーカーの遺作という要素もあったに違いない。
本作撮影中の2013年11月30日、自動車事故でウォーカーが亡くなったことを知った関係者は12月1日に撮影を中止。監督のワンと映画会社のユニバーサル幹部はすぐに会議を行い、ウォーカーの思い出に敬意を払いつつ撮影を続投することを決定したという。
この時点で撮影は半分が終了していて、残り部分の脚本をリライトし撮影を再開。過去作やアーカイブから映像を引用したり、ウォーカーの実の兄弟ケイレブ&コディに代役を頼んだりして、どうにか完成にこぎつけた。
完成版を観る限りではそういう苦労は伝わらず、ごくごく自然にウォーカーが演技をしているのだから凄い。全米公開は当初、2014年7月11日に予定されていたが、最終的には2015年4月17日に延期された。
本作、ワールドワイドで15億1000万ドルというシリーズ最高の数字を叩き出し、これはまだ破られていない。
また、ジェイソン・ステイサムの参加に関しては、シリーズのプロデューサーも務めるヴィン・ディーゼルの意向が大きい。『EURO MISSION』では当初、犯罪組織のボスをステイサムに演じて貰いたかったのだがスケジュール等の都合が合わず、代わりにルーク・エヴァンスが登板。
諦めきれないディーゼルは、彼の兄として最後にカメオ出演してもらい、本作につなげたというわけだ。
ステイサムとは仲良しらしいディーゼルなのだが、ご存じの通りドウェイン・ジョンソンとは不仲。本作でも共演シーンは限りなく少ないのみならず、実際に顔を合わせなければいけないシーンではデジタルを使用するという徹底ぶり。
プロデューサーでもあるディーゼルはSNSでジョンソンに『X』への出演をオファーしたものの、ジョンソンはそれでも拒否したというのだから、その確執は深い。『X』でジェイソン・モモアが出演しているのは、もしかしてジョンソンの代わり?
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『ワイルド・スピード SKY MISSION』
Blu-ray:2,075円(税込)/DVD:1,572円(税込)
4K ULTRA HD+Blu-rayセット:6,589円(税込)
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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※2023年1月の情報です
コメント
コメントの使い方今では常識となった仕事より家族を優先することを真っ先に徹底し、海が好きだからこそ海洋調査や保護の為に寄付を惜しまなかった。
甘いマスク以上にナイスガイさに強く憧れたヒーローでした