■クルマ自動ドアの実現化は福祉・介護にも役に立つのではないか
AFEELAのコンセプトカーは、たくさんのセンサーを搭載し、知能のあるクルマを目指すとしている。例えば顔認証で人が近づくだけで開閉するドアが提案されている。
これはスマホの顔認証とECU、サーボモーターを組み合わせれば実現できることは予想できるが、実際にはドアの開閉による危険性まで含めた様々な安全対策が必要で、さらに電動化により重量増や消費電力の増大による航続距離への影響も考えると、本当に必要な機能なのか、今後議論される装備だろう。
むしろ自動ドアを実現するのであれば、車椅子のドライバーが一人で乗降できる機構や運転操作の簡素化など、これまでにないドライバーへのサポートなどクルマの可能性を広げる領域にこそ、技術開発が必要な分野ではないだろうか。
これによって介助者が必要なくなれば、人材不足や人件費負担、家族による付き添いなどの負担からも解放され、移動の自由を高齢ドライバーも含め皆が享受できるようになる。それによって経済も活性化されることにつながるハズだ。
また日本においては、充電の作業を煩わしいと感じさせるようではEVの本格普及はほど遠い。日本でソニーホンダがEVビジネスを成功させようとするのであれば、まずは独創的なアイデアと技術で、快適で利便性の高い充電環境を構築してみせてほしい。ホンダのディーラー網と、ソニーのユーザービリティの高い電子機器のノウハウがあれば、これまでにないシステムが構築できるのではないだろうか。
■ソニーとホンダの蜜月は果たしていつまで続くか
日本は新しいモノを創造する能力が低いと言われるが、ソニーとホンダはそれぞれの領域で独創性の高い商品でヒットを連発した発信力の強いブランドだ。
そして自動運転の分野においてもソニーのセンシングテクノロジーは武器になりうるが、親会社であるソニーは当然、他の自動車メーカーやサプライヤーにも製品や技術を提供して収益を得ることを狙うだろうから、どこまで独自技術を誇れるか難しいところだろう。AFEELAはある意味、ソニーの自動車ビジネスのショーケース的な存在でもあるのだ。
このあたりはホンダも同様で、ソニーホンダ以外の自動車生産量も確保しなければならないため、AFEELAに魅力が集中してしまうことは避けることになる。さらに自動運転や燃料電池ではGMとのパートナーシップもあり、自動運転ベンチャーのクルーズという従来からの協業関係もあり、そこにソニーが入り込んでくるのは難しい。
そう考えると、ソニーもホンダも協業できる領域は限られるのだから、合弁会社まで作る必要があったのかは少々疑問だ。協業によって生み出されるブランドイメージを確固たるものにするためだけに立ち上げたものであれば一時的な関係にすぎず、やがてはお互いがそれぞれの道を歩むことになるだろう。
生産はホンダが行うにしても、ソニーホンダモビリティだけで収益を確保できるようになるには、複数のモデルをラインナップする必要がある。そういった意味では今回のコンセプトカーを基本に、同じプラットフォームでSUVやミニバンを作り出す可能性は高い。
ホンダはクラリティ、ホンダeと先進的なクルマを作り上げながら、今一つヒットに繋げられなかったという苦い経験がある。そのコンセプト自体は悪くないのだが、そもそも市場規模が小さいところにも独創性を盛り込んでしまったのが失敗の一番の原因だ。
ニッチなカテゴリーでマニア受けするような凝った製品作りをするのはリスクが大きいことを、身をもって知っているハズだ。だからこそ、ソニーと協業する一方でGMと共同開発した燃料電池スタックを外販する方針を発表し、クルマ1台のパッケージに拘らない姿勢を打ち出している。まさに何でもあり、死に物狂いで色々な手段で未来の方向性を探っている状態だ。
だが、ようやく1割のシェアを確保したEVが乗用車の世界でメインストリームになるのは、意外と時間がかかりそうな気配でもある。したがって長い目でみれば、ソニーとホンダの蜜月は続いていくことはないのかもしれない。あるいはエンジンを止めると宣言したホンダは、今後の業績次第ではソニーに吸収されてしまう可能性もある。
まだ生まれたばかりのブランド、コンセプトカーを発表したばかりの状態ながら、すでにレッドオーシャンになりつつあるEV業界に殴り込みをかけるソニーホンダ陣営にはそれでも、トヨタ連合同様頑張っていただきたいのである。
【画像ギャラリー】近づくだけでドアが開閉!? 未来感あふれるAFEELAのコンセプトカーを写真でチェック!(6枚)画像ギャラリー
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