経年劣化が原因? クルマの種類によっても出火の原因は異なる
古いクルマは構造上の問題と、経年劣化により出火する可能性は増える。燃料供給装置にキャブレターを採用しているクルマは、吹き返し(吸気ポートに起こる脈動でエアクリーナー側に吸入空気が押し戻されること)によってバックファイヤー(逆火のことで、マフラーから出るアフターファイヤーとは異なる)が起こり、火災につながるケースもある。
ワイヤーハーネスの被覆が劣化して銅線が酸化してしまうことや、スイッチ類の接点やボディの導通性が低下することで抵抗が増えて発熱するようになり、やがて発火するのである。
内装の表面に難燃性素材を用いても、車体の内部電装系の過熱による出火は、周囲に樹脂パーツや被覆があるので燃え広がりやすい。これが電装系が出火原因で車両火災となる代表的なケースだ。
クルマの使用年数が伸びていることから、こうした車体の劣化による火災は、今後も一定数起こり続けるだろう。
またスーパーカーは燃えやすいという巷の噂うわさもある。これはある程度年数を経た車体も含めれば、確かに頷けるうなずける話だ。
それはスーパーカーの多くは複雑な燃料系統と広いエンジンルームをもち、燃料漏れのリスクが高い傾向にあるからだ。経年劣化により燃料漏れがあれば、火災につながりやすい。
バッテリーにある大きなリスクとは? 電気が原因の車両火災はこれから増えるのか?
EVやハイブリッド車は、エンジン車と比べると扱う電圧や電流が桁違いに大きいので、安全対策を施していても、火災のリスクはある。
それでもハイブリッド車は200V程度の電圧でまだ控えめな方だが、EVはバッテリーの電圧でも400Vは普通で、最近では800Vにまで高めたモデルも登場している。
車体や充電器が新しいうちはいいが、経年劣化により急速充電での高電圧、大電流によるリスクは高まる可能性がある。
EVの要であるバッテリーはエネルギー密度を高めることが求められているけれど、エネルギー密度を高める、ということは発熱や発火の危険性も高まるという諸刃の剣でもあるのだ。技術や安全対策でカバーできているけれど、経年劣化によるトラブルは完全には防げない。
リチウムイオンバッテリーは、電解質に有機溶剤を用いてることもあって、一度火が付けば消し止めるのは非常に困難だ。その点ではニッケル水素バッテリーの方が安全性が高い。
最近はリン酸鉄リチウムバッテリーが採用され始め、より安全性が高まってはいるが、エネルギー密度が高いバッテリーというのは、それだけたくさんの電気を溜め込んでいるので、何か問題が起これば車両火災につながりやすい。
EVの普及が急速に進んでいる中国では、車体やバッテリー、充電器の品質にも問題があるのだろうが、充電中や駐車中に出火してクルマが燃えることが珍しくない。中国緊急管理省のデータによれば、2022年は前年に比べ32%もEVの火災事故が増えており、年間では1万台、およそ1日に7台のEVが燃えているらしい。
車両火災を防ぐために定期的なメンテナンスと防犯意識を!

クルマは各部が劣化していくことは避けられないので、定期的にプロの眼で点検することが故障や火災を防ぐ有効的な対策だろう。それでも目に見えない劣化や突然の故障は防ぎきれないので、走行中に異常を感じたらできるだけ早く止めて車体を点検し、状況に応じて警察や消防、ロードサービスなどに連絡することだ。
また屋外の駐車場でボディカバーをかけているクルマの場合、放火による被害で火災に遭うケースもある。令和4年の消防白書によれば令和3年中に放火による車両火災は157件、発生している。さらに放火の疑いがある車両火災も74件あった。
大事な愛車を火災から守るためには、点検整備と防犯意識を高めることが必要なのである。
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