■4月以降に値上げが加速するとの声あり
しかし問題はそのタイミングだ。ノートは2023年5月からとしているが、これはノートが比較的納期が短いことで価格改定がある意味スムーズに行われている。
しかし、これが納車までに1年やそれ以上かかるモデルでは、それだけバックオーダーを抱えているのだから、そのなかで価格引き上げを行えばいたずらに混乱を招くことになるだろう。
日本車の価格引き上げについては、ノートのようにメーカーオプションを見直しながら引き上げ幅をできるだけ抑えようとしてくる傾向が目立ってくると筆者は判断している。そうなると、価格引き上げを発表してもその実施が1年後やそれ以上になってしまうモデルも出かねないものと考えている。
最近目立っている新規受注停止車については、受注再開のタイミングで“新価格”に移行しやすいともいえるだろう。
スズキは2022年11月にオンライン開催した2022年度上期(2022年4月~9月)の連結決算会見において、鈴木社長は“単純に原材料費高騰などを価格に転嫁する値上げはできない”とした。さらに、“装備内容の見直しなどで価格を抑えやすくなる”ともした。過剰装備気味のいまの新車の装備内容の見直しで価格抑制は可能だということらしい。
スズキは販売現場をまわってもセールスマンからは、「ウチのクルマは装備をおごっている」といった発言をよく聞く。確かに日本の軽自動車は自動変速やオートエアコン、クルーズコントロールなどが普及グレードでも当たり前のように装備されるが、世界の同クラス車ではエアコンすら装着されないケースもあるので、その意味では“過剰装備”といわれてもおかしくない。
ただ、一度そこまで装備をグレードアップさせ、ユーザーもそのような装備があるなかで乗っていたのを、ある日突然装備を減らすというのはなかなか難しいだろう。
■原材料高騰の中 生産価格の抑制にメーカーも必死
筆者は2022年秋に南カリフォルニアを訪れた時に、アメリカンブランドの「トヨタカムリクラス」のセダンのレンタカーを借りた。そのモデルは2022年モデルでは自動ブレーキまで非装着として価格アップそして納期遅延をできるだけ抑えようとしていた。レンタカーで借りたモデルだったが、筆者としては複雑な気持ちになった。
また2023年2月に2022年10月に改良を行ったトヨタカローラセダンが筆者のもとに納車されたが、それまで乗っていた現行・前期型のダブルウィッシュボーンリアサスペンションがトーションビームに変更された(ガソリンエンジン車)。
なまじ3年ほどダブルウィッシュボーン車に乗ってしまったので、「ああ、やっぱり4輪独立サスペンションではないな」ということは乗り出してすぐわかった。
“のり弁当”で入れていた白身魚フライの価格高騰が顕著なのでコロッケに切り替えるか、そのまま50円値上げするのとどちらが顧客満足度を維持できるかというのと同じぐらい難しい選択を、これからメーカーやディーラーは迫られることになりそうだ。
日本では全体的に価格を引き上げずに商品を売ることを“良心”と捉えた報道が目立っているが、これが目立ちすぎると“値上げは悪”ということになりかねない。これが悪循環となり、まわりまわって自分たちの収入がなかなか上がらないことにつながっているとは、最近よく語られる話。
自動車用鋼板の値上げなど、自動車生産の根幹部分の原材料費もいよいよ値上がりが顕著となってきた。そして、いままでメーカーやディーラーの、まさに血のにじむ企業努力で値上げをなんとか抑えてきたが、それもすでに限界に近付いている。
筆者の見方としては2023事業年度下期、つまり2023年9月以降日本車の車両価格引き上げは目立ってくるのではないかと考えている。
新型プリウスは販売現場では「思っていたより価格は先代比で上がっていなかった」という声も聞く。モデルチェンジやマイナーチェンジでの価格改定で原材料費の高騰などを転嫁するのはよくあること。
新型プリウスは発売後の値上げもコミコミでの価格設定ではないかといった声も販売現場では聞くが、その一方で値引きゼロを原則としているので、極力先代からの価格アップを抑えているという声もある。
今後注目なのは6月デビュー予定の次期型アルファードの車両価格となるだろう。日本国内で圧倒的な販売シェアを持つトヨタが、いまの車両価格引き上げムードをどのように捉え、そして今後どのように動くのか、そこに今後の日本国内での日本車の車両価格の動きを左右させるものがあるといっても過言ではないだろう。
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