逆走、ブレーキとアクセルの踏み間違えなど、高齢者の操縦ミスによる事故が増えている。操縦ミスが認知症に起因しているといった報道も多くみられることから、自分はまだまだ大丈夫と、他人事のようにニュースを見ている人がほとんどだと思う。
しかしそれは大間違い! 若年層でも安全に運転するために必要な脳の機能に問題ありの人はたくさんいる。脳機能は加齢だけではなく、生活習慣などさまざまな要因により低下するため、若いからといって必ずしも安全に運転ができる脳=運転脳が保たれているとは限らないのだ。
そこで今回は、運転脳の衰えをいち早く察知する方法と、衰えを食い止める具体策を紹介しよう。
文/室井 圭、医療監修/塚本 浩(脳神経内科専門医・けんせいクリニック院長)、写真/写真AC
運転中は脳がフル稼働
運転に必要とされる能力は、記憶力、注意力、集中力、視空間認知力(物体の位置や向きを認識する能力)、場所の認知、危険察知・予測能力、行動の俊敏性や正確性を維持する能力、感情のコントロール力などなど。
つまり、クルマの運転は脳をフル稼働させなくてはならない行為で、脳の機能低下は運転パフォーマンスの低下に直結するということだ。
たとえば、単純そうに思えるブレーキを踏むという動作であっても、脳はせわしなく働かなくてはならない。具体的には、ブレーキを踏むまでには下記のようなプロセスを踏む必要がある。
1.目や耳から入った情報を脳が受け取る。
2.視覚・音声情報を分析する。
3.ブレーキを踏む必要があるかを判断する。
4.ブレーキの位置を確認する。
5.ブレーキを踏むように脚に指令を出す。
6.脚の関節や筋肉が脳からの指令に従って動く。
脳の機能が低下して1→6のプロセスが正常かつ、スムーズに行われなくなると、ブレーキ操作が遅れたり、踏み間違いが発生することになる。
カーブを曲がる、細い道を通り抜ける、車庫入れをする、追い越しをする、車線を変更するなどなど、すべての運転動作を難なくこなすためには司令塔としての脳の機能が正常に働いていることが必須となるのだ。
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