違和感あり?? お得感は皆無?? 急増する復活車名それぞれの事情と目論み

 かつての車名が突如として復活することは昔からよくあること。例えばスープラはBMWとの協業で生まれ変わったり、多くの変化を遂げています。

 しかしなかには「車名だけ」は引き継いで、コンセプトや車格が大きく変わってしまったクルマも多くあります。

 2010年代後半はそんな車名復活が特に多かったようにも感じる年代。多くの車名が復活しましたが、それぞれいいところ、そしていまひとつのところを分析します。

文:渡辺陽一郎/写真:編集部


■トヨタRAV4は車格アップも低価格で売れそうか??

 最近は車名の復活が多い。トヨタはRAV4/ハイラックス/スープラ、ホンダはシビック/CR-V/インサイト/NSX、三菱ならエクリプスクロスという具合だ。

 車名の復活は、今の日本車メーカーが国内市場を軽く見たり、商品開発が場当たり的になった結果ともいえる。

どっしりと大きくなったRAV4。しかし価格戦略も見事でルックスも若返りを図れている。このあたりはトヨタの戦略勝ちかもしれない

 日本は多くのメーカーにとって世界生産台数に占める割合が20%以下の小さな市場だから、不人気になると辛抱強く売ろうとせず、比較的安易に車種を廃止してしまう。

 しかしそれが行き過ぎて国内の販売不振が深刻化したり、SUVが好調に売れたりすると、慌てて復活させる。

 例えばRAV4とCR-Vは、かつて国内で人気の高いSUVだったが、フルモデルチェンジを繰り返すに連れて北米指向を強め、ボディを肥大化させて売れ行きを落とした。

 あまり売る努力をせずに廃止したが、近年はSUV市場が好調で、品ぞろえを充実させる必要に迫られた。そこで慌てて復活させている。

 真剣に考えるべきは、RAV4、CR-V、あるいはシビックなどを使ってきたユーザーの心情だ。愛車が国内販売を打ち切れば、自分がメーカーから見放されたような寂しい気持ちになる。

 クルマとはそういう商品だ。落胆したり怒ったりして、他メーカーの車種に乗り替えるユーザーも多い。それが忘れた頃に国内販売を復活させたのでは、愛車に対する愛情を弄ばれているように感じるだろう。

 販売店からは「車種を廃止すると、別のメーカーに乗り替えてしまうお客様も多い。復活させても、もはや戻っては来ない。売り方は新規投入と変わらず、出直しになる」という声が聞かれる。車種の廃止は慎重に行うべきだ。

 車種の復活が成功したのか、あるいは失敗かという判断は、復活したクルマの商品力によって決まる。

 共通するのは、復活しても、日本向けのクルマには戻らないことだ。RAV4、CR-V、シビック、インサイトなどは、いずれも初代モデルは日本向けの商品だった。CR-V以外はすべて5ナンバー車で誕生している。

 この後、ボディの拡大も含め、海外指向を強めて国内販売を終えたが、復活したRAV4やCR-Vを見ても日本向けではない。海外向けに造った商品の国内販売を再開したに過ぎない。

 それでもRAV4は、魅力的な商品に思える。理由は2つある。

 まずは前輪駆動をベースにしたシティ派SUVでありながら、悪路を走破できる機能を充実させ、オフロードSUV風の商品に仕立てたことだ。

 エクストレイルにも当てはまる話だが、SUVの本質はオフロードにある。ただし本格的なオフロードSUVになると、ボディが重くなったり空間効率が下がるなど、日常的に使う時に不都合が生じる。

 その意味で前輪駆動ベースのSUVをオフロードモデル風に仕上げるのは、ユーザーニーズに適する。

 つまり「ハリアー&C-HRのようなシティ派SUVと、ランドクルーザーのようなオフロード派SUVの中間」という開発コンセプトが優れたRAV4の商品開発に繋がった。

RAV4の車内は高級感を併せ持つもの。200万円台からスタートする価格帯は大きな魅力だ

 RAV4に魅力を感じる2つ目の理由は、SUVが全体的に大きくなったことだ。

 日本で生産を終えた3代目RAV4が登場した2005年頃は、エクストレイルやフォレスターの全幅は1800mm以下で、パジェロイオのようなコンパクトな5ナンバーSUVもあった。

 したがって全幅が1800mmを超えるRAV4は大型化された印象が強かったが、今は全幅が1800mm以下のSUVは少数派だ。RAV4を見ても、さほど大きくは感じない。

 おそらくRAV4はこれから堅調に売れるだろう。サイズ的にはハリアーとC-HRの中間という位置付けがちょうど良く、価格も中間に位置付けたから比較的割安だ。復活ではなく新規投入されたSUVとして相応に成功する。

■CR-Vも車格アップだが価格が高く成功は厳しい?

 CR-Vも近年では北米指向を強め、国内で売れ行きを落として廃止された。「人気の高いヴェゼルがあるから、CR-Vは廃止しても構わない」という判断だった。

 しかしSUV市場が拡大して認識が変わった。オデッセイなどのLサイズモデルからSUVに乗り替えるユーザーが「ヴェゼルでは小さすぎる」と不満を言い始めたからだ。

 そこでCR-Vを復活させたが、現行型は日本でかつて販売されたCR-Vとは異なる特徴もある。まずエンジンは1.5Lターボと2Lハイブリッドを用意した。

クルマとしては完成度も高く広々としているものの、懸念すべくはやはりその価格だろうか?

 1.5Lターボは2.4Lの自然吸気エンジンに匹敵する性能を発揮して実用回転域の駆動力も高い。

 ハイブリッドではエンジンが主に発電機の作動に使われ、駆動はモーターが担当するから加速が滑らかだ。いずれもSUVでは個性的なパワートレーンだから、CR-Vを選ぶ理由のひとつになり得る。
 
 そしてターボには3列シート仕様も用意され、乗員の足が2列目の下側に収まるようにするなど、3列目の快適性を高める工夫も見られる。

 SUVの3列目としては、大柄なCX-8の次に快適だ。今後の課題は質感と価格だろう。インパネのステッチ(縫い目)は、コンパクトSUVのヴェゼルでも糸を使った本物なのに、CR-Vは樹脂で模様を付けた模造だ。

 質感に不満を抱えながら、価格は全般的に割高になる。

 3列目シートも一般的な相場は2列シートに比べて7~15万円の上乗せだが、CR-Vは19万1160円(本革シート仕様は22万3560円)に達する。もう少し上質にして、買い得感も強めたい。

■エクリプスはSUVで復活!! エクリプスクロスは成功か?

 かつてのエクリプスはスポーツクーペだったから、SUVのエクリプスクロスが復活したとはいえないが、運転の楽しさを追求するコンセプトは似ている。エクリプスのSUV版がエクリプスクロスだ。

 全幅は1800mmを若干超えるが、全長は4405mmに収まり、峠道では機敏に良く曲がってスポーティな運転感覚を味わえる。

ランエボの4WD技術を継承したエクリプスクロス。単なるSUVとは思えないような挙動も見せるが、まだまだ日本市場ではマイナーか?

 後席を含めて居住性にも余裕があり、外観のカッコ良さ、運転の楽しさ、ワゴンの実用性というSUVの魅力をバランス良く両立させた。

 エンジンは充分な動力性能を発揮する1.5Lターボが搭載され、2019年5月になると、デリカD:5と同じ2.2Lのクリーンディーゼルターボを搭載したグレードも加わる。

 SUVとあって三菱のブランドイメージを高める役割も果たしており、商品として成功している。

■ホンダシビックはクルマのよさでファンを頷かせる??

 シビックはホンダの基幹車種だったが、2000年に登場した7代目は、3ドアハッチバックの日本仕様を廃止した。

 国内では5ドアハッチバックとセダンをそろえたが、2001年に登場した初代フィットが絶好調で売れたこともあり、販売を低迷させた。

 2005年発売の8代目は3ナンバーサイズのセダンのみになり、売れ行きは一層落ち込んだ。その結果、シビックは2010年に国内販売を終えた。

現行シビックは走りは非常に質感が高い。かつてのシビックのイメージとは趣が異なるものの、走りのよさはきちんと継承している

 海外専用車になったが、セダンを国内の寄居工場で生産するようになったことを切っ掛けに、ハッチバックとタイプRはイギリス工場製を輸入して、シビックが復活した。

 売れ行きは堅調で、ホンダは身勝手なシビックを見捨てなかったユーザーに感謝せねばならない。

 ボディは大柄で価格も安くないが、走行安定性と乗り心地のバランスは良い。

 フォルクスワーゲンゴルフなどの欧州車に比べると直進安定性は見劣りするが、峠道などでは日本車らしい軽快感を味わえる。

 そして1.5Lターボのハッチバックにも6速MTが用意され、若い頃に往年のシビックを乗り回したユーザーには嬉しい。大人に成長したシビックファンに相応しいクルマに仕上げた。

■ホンダインサイトは3世代すべてのコンセプトが異なる

 インサイトはハイブリッド専用車だが、初代は1999~2006年、2代目は2009~2014年と途切れながら販売されてきた。3代目は2018年の末に発売されている。

 開発者は「初代は実験的な燃費追求型のハイブリッドだった。2代目は低価格によりハイブリッドの普及をねらった。3代目はハイブリッドが普及した時代背景を受けて、クルマとしての上質感を重視した」という。

 意図は分かるがユーザーは困る。販売の終了で「インサイトは終わった…」と寂しい気持ちにさせられ、忘れた頃に復活する。商品は継続的に開発と改善を積み重ねないとダメだ。

 しかし現行型の商品力は高い。プラットフォームやボディの基本部分をシビックと共通化しながら、走行性能、乗り心地、内外装の質感をバランス良く高めた。

ホンダ関係者は「シビックとアコードの中間」と明言するが、そこに需要があるかはちょっと微妙なところ。とはいえ商品力が高いのがホンダであり、そこは安心できる部分

 開発者が述べるようなセダンらしい上質感があり、フロントマスクの形状は、シビックよりも日本のユーザーの感性に合うだろう。

 価格は高いが、カーナビまで含めてフルに装着されている。LXの価格は326万1600円だが、カーナビ関連がオプションならば296万円くらいになる。

 シビックとのバランスで見ると、1.5Lターボに20万円ほど上乗せすると(装備の違いは補正する)、インサイトを買える。

 インサイトは日本の車両開発の水準を知るにはちょうど良いクルマだ。機会があったら、読者の皆さんも試乗されると良いと思います。「日本のセダンはこんな感じ」というイメージをつかめるでしょう。

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