クルマ好きが大学に入ると気になる存在、それが「自動車部」。国立私立を問わず、全国およそ120校以上の大学に自動車部があり、長い歴史を誇るところが多い。今回は、なかでも超老舗的存在である慶應義塾大学の自動車部をご紹介!!
※本稿は2023年6月のものです
文/奥野大志、写真/ベストカー編集部、撮影/大石博久
初出:『ベストカー』2023年7月26日号
■慶應義塾体育会に所属する自動車部
というわけでスタートした「ニッポン大学自動部調査隊」。全国の有名大学にお邪魔し、特色あふれる自動車部の活動内容と、クルマが大好きな大学生の元気な姿を紹介する。
栄えある第1回目は東京都港区に本部を置く、慶應義塾大学。明治時代の著名な教育者である福澤諭吉が1858年に開設(当時は蘭学塾)した大学で、知らない人はいないほどの有名校。今も昔も私学の最高峰と称され「ケイオウ」のブランドは古今東西、鉄板だ。
そんな慶應義塾大学の自動車部、正式名称は「慶應義塾體育會自動車部」(KOAC)という。
體育會(たいいくかい)という名称は、慶應義塾体育会に所属していることを表しており、KOACはれっきとした運動部なのだ。慶應義塾体育会のホームページには、他の運動部と一緒にKOACの活動報告が掲載されているので、そちらもぜひご覧いただきたい。
■2023年で創部90周年!!
取材にうかがったのは横浜市港北区にある日吉キャンパス。緑豊かな美しいキャンパスで、筆者(オジサン)にとっては甘い大学生活の思い出がよみがえりそうなところだが、自動車部練習場に足を踏み入れて驚いた。
ジムカーナができる広大な練習場(駐車場)や、ガレージが一体になった2階建ての部室など、とにかく施設が本格的。
春の新人歓迎の時期には、新入生を練習車の助手席に乗せて、練習場でサイドターンしているというからマジでカッコいい(新入生を横に乗せるから“ヨコ乗り”と呼ぶそうで、非常に有効な部員勧誘方法だとか……笑)。
取材に対応していただいたのは主将の鈴木悠太さんと広報責任者の佐々木洸(アキラ)さん。正装の詰襟姿がとっても凛々しい4年生だ。
「KOACは1931年に誕生したモーター研究会が始まりで、1933年(昭和8年)に3つのクラブが合併。慶應義塾自動車部としてスタートしました。今年で90周年です」(鈴木主将)
90年の歴史と、文字にするのは簡単だが、とにかく長く、果てしない。1933年は豊田自動織機が自動車部を設置した年であり、トヨタも日産もなかった年。
そんな時代に自動車の運転技術を競う文化が大学生の間に存在していたのだから、さすがケイオウと言わざるを得ない。続いてガレージの2階にある部室に移動したが、歴史と伝統を物語る品々に圧倒されっぱなし。
「KOACは全日本学生自動車連盟(学連)に所属し、主に学連主催の『ジムカーナ』と『ダートトライアル』、『フィギュア』という3つの競技に参加。各競技の成績を点数化した総合杯(チャンピオン)の獲得を目指しています。
どの競技も全日本と全関東があり、前者は全国の大学、後者は関東の大学と競っています」(佐々木広報)
ベストカー読者にジムカーナとダートトライアルの説明は不要だと思うが、フィギュアについては少々ご説明を。
フィギュアは教習所などで、乗用車やトラックなどの運転技術を競う競技で、数センチ差を争う自動車部伝統の種目。クランクや車庫入れなど、さまざまな障害を鍛えられた運転技術でクリアしていく光景は、ある意味最も自動車部らしいと言える。
で、直近の成績はどうかというと、昨年の全日本年間総合杯(3競技の合計)が早稲田大学に次ぐ準優勝、全関東が早稲田大学を下して優勝と、自動車部の世界でも慶早がガチでやり合っているのが面白い(自動車部版の慶早戦もある!)。
ちなみにKOACの全日本の獲得回数は、中央大学と並ぶ最多の5回。文字どおり自動車部の強豪校なのだ。
多くの部員をまとめ、好成績を出す秘訣はどこにあるのか? 鈴木主将に直球の質問を投げてみた。
「自動車競技なので、試合の瞬間を切り取れば、ひとりだけで戦っている個人競技に見えるかもしれませんが、そこに至るまでの整備や練習、予算のやりくりや遠征、さらにトラックの安全運行など、さまざまな活動により、ようやく試合に出られると各部員が実感しています。今、自分の動きがチームの勝利につながっていると認識できるところが慶應の特色です」
鈴木主将はさらに続ける。
「慶應を代表して活動していることや、創部90年の歴史ある部をつないでいるという自負もあります。4年間しかここにいられないからこそ、先輩から教わったことや4年間で得たことをしっかり後輩につないでいかないと。逆に言うと部のよき伝統や、部の強さは一瞬で失われてしまいますので、そこはしっかり意識しています」
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