EVにとって猛暑は大きなリスク?? 今後EV火事が増えると予想されるワケ

■屋外での保管では猛暑日の暑さが新たなリスクに

猛暑の外にクルマを停めると、30分で車内は50℃を超える。また、ダッシュボードは約70℃まで温度が上がる。強い日差しにより、地面もとても暑くなっている(写真:aapsky-stock.adobe.com)
猛暑の外にクルマを停めると、30分で車内は50℃を超える。また、ダッシュボードは約70℃まで温度が上がる。強い日差しにより、地面もとても暑くなっている(写真:aapsky-stock.adobe.com)

 そしてEVには新たなリスクが生じつつある。それは暑さだ。このところの真夏の暑さは尋常ではない。

 日向にクルマを停めておくと、30分で車内は50℃を超える。ダッシュボードは70℃前後にまでなり、黒いボディのクルマであればボディの表面温度は80℃を超えることもある。

 EVのバッテリーはフロアの下にあるから日差しの影響は受けにくいと思われているが、路面からの照り返しも強いし、駐車場ともなれば様々な要素が絡んでくる。

 例えば機械式駐車場は鉄骨で作られているが、防錆のために表面を亜鉛でコーティングしているものが多い。

 これによって腐食は防げるが、同時に亜鉛の銀色は光を反射する。これが通常の駐車状態では想定していない状況を作り出すことも充分にありうるのだ。

 車体を支えている床板の亜鉛メッキ鋼板や隣接するクルマが太陽光を反射して、車体の裏側に日光を届ける可能性もある。

(編注:すべての自動車メーカーが、火災や事故といったさまざまなリスクを想定しながら、新車開発を行っている)

 短時間ならそれも問題はないが、日中ずっと熱せられることで、バッテリーユニットの一部だけ加熱され続ければセルが損傷を受けることだって起こり得る。

 こうした照り返しや熱反射ガラスによる太陽エネルギー集中が、思わぬ部分へダメージを与えることにもつながりかねないのである。

 そうしたダメージが蓄積して、火災につながることもあり得るのが高性能なバッテリーを搭載したEVに潜んでいる問題点と言える。

 充電中や走行中はバッテリーマネージメントシステムが機能しているから、バッテリーの温度が上昇することがないようにすることはできる。

 しかし、電源が入っていない駐車中は、システムが起動していない状態で、バッテリーマネージメントも機能しない。その状態で外部から加熱されることは想定していないのが現状なのだ。

■充電中だけでなく今後は保管中もリスクになる? 

この写真は、EV・バッテリー火災対応1500度の超耐熱ブランケット。2023年6月行われた東京国際消防防災展で筆者が撮影。炎上中のEVにかけることで延焼を防ぐことができるという
この写真は、EV・バッテリー火災対応1500度の超耐熱ブランケット。2023年6月行われた東京国際消防防災展で筆者が撮影。炎上中のEVにかけることで延焼を防ぐことができるという

 充電中に火災を起こすのは電動バイクなど廉価な電動車両だけだと思っているなら、いささか認識が古い。

 中国では新エネルギー車(ほぼすべてがEV)が、昨年1年間におよそ2500件の火災事故を起こしている。

 これを保有台数10万台あたりに換算すると20台となるが日本の場合、ガソリン車が火災を起こしているのは10万台あたり1.5台と言われている。

 日本と中国を一緒にするな、と言われるかもしれないが、今後中国製EVが日本で存在感を増していくことを考えれば、EVの火災リスクが高まるのも自然なことなのだ。

 急速充電器も海外では火災を起こす事故もある。それは送電線の劣化や結線作業の不手際など外的な要因もあるが、急速充電器自体の劣化や故障も起こり得る。

 基本的に電流関係の安全装置は、それ自体が壊れても電流を遮断するように設計されているが想定外の事態だって起こるかもしれない。

 このところの猛暑は、それら充電器の寿命や信頼性を低下させる恐れもある。事実、日向に設置された急速充電器が日差しによる温度上昇で熱暴走し、安全装置が働いて稼働を停止するという事態も起こっている。

 猛暑によって急速充電器が壊れまくれば、EVの使い方は限られてしまう。急速充電器の設置場所、EVの駐車スペースは、これまでのエンジン車と同じように考えてはいけないのだ。日射対策をする必要がある。

 また消防もEVの火災に対して、被害を最小限に食い止める消火方法を導入していく必要があるだろう。

次ページは : ■キチンと理解して予防する姿勢が重要

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