■欧州進出を狙う中国の高級EV
そして、中国勢のなにより強いのは、台数を作れるところだ。いくら人気でもタマがなければ意味がないが、中国勢はバッテリーや半導体も国内に独自のサプライチェーンを持ち、量産能力が高い。2022年の中国BEV販売台数は590万台で世界最大。EUは中国に次ぐが、半分以下の260万台に過ぎない。
そのEU市場に、安価で出来のいい中国製EVがなだれ込もうとしているのだ。その煽りを真っ先に喰らうのは日韓勢、特にトヨタと日産は影響を受けそうだ。
EU市場の保護的なライフサイクルアセスメントによって、中国のEVは締め出されるという話もあるが、この件に関して大手サプライヤーであるフォレシアのコラーCEOは否定的な意見を示している。
世界のリチウム精製の50%以上を中国に握られており、かつ欧州メーカーが中国市場でクルマを売りまくっているという状況で、EU市場から中国EVを締め出せるはずがない、というのだ。もちろん中国政府も、政争に発展するようなことがあれば躊躇はしないだろう。
■日本車の天下である東南アジアを脅かす中国メーカー
では、日本車が圧倒的なシェアを持つ東南アジアはどうだろう。
2023年3月に開催されたバンコクモーターショーで、上海汽車Maxusの高級ミニバンMifa9が話題を呼び、一番人気となったそうだ。
中国車の品質向上は著しく、わかりやすいゴージャスさや充実した装備という点ではすでに日米欧韓を凌駕、さらにコスパに優れるとなれば、選ばれるのも当然。
アルファードが絶大な人気を誇るタイ市場で、中国のEVが人気を博すということが、何かを示唆しているような気がしてならない。
東南アジア含めたエマージングマーケットでは、EVの比率はまだ低く、すぐに大きな影響が出るとは考えにくい。だが、わかりやすい魅力を備えた中国車が次々に進出していくことを考えると、じわじわとボディブローのように効いてくるだろう。
もちろん日本市場では、日本のメーカーを脅かすほどのシェアを中国メーカーが取るとは思えない。しかし、日本の主要産業である自動車産業の収益が、じわじわと減っていくようなことになれば、私たち消費者自身の購買力が下がり、欲しいクルマも買えなくなる、という未来がやってくることを意味するのだ。
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