万が一の事故の際、クルマに乗る人の命を守ってくれる「シートベルト」。2008年には、後席も含めた全席で着用が義務化されており、「後席でもシートベルト」は、少しずつ浸透してきたようにも思います。
しかし実は、シートベルト着用義務には例外も多く、たとえば乗用車の場合、病気の幼児を病院に搬送する際や、乗車定員内ながら子供の数が多くてシートベルトが足りないときなどは着用義務が免除されています。また、郵便配達などクルマから頻繁に乗り降りが必要な仕事中や、選挙活動中の選挙カー、そして緊急走行中の緊急車両も免除されます。
確かに、郵便配達中やゴミの収集中などは、低速でもありますし、少し走っては止めて降りてを繰り返すため、免除は妥当かもしれません。選挙活動中の選挙カーも(もちろんほかのクルマがぶつかってくるというリスクはありますが)極低速で走行していることから、必要ないといわれればそうかもしれません。では、緊急走行中の緊急車両はどうなのか!?? 実態を調査した資料をもとに考えてみます。
文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_jaraku
写真:Adobe Stock、写真AC
事故発生リスクは極低いものの、3年間で130人が負傷している
一般財団法人救急振興財団の助成により、大阪大学医学部付属病院 高度救命救急センターなどがまとめた「救急車による交通事故及び事故防止に関する取り組みの全国調査」によると、(全国726消防本部のうち)調査に回答のあった553消防本部において、調査した3年間の救急車出動件数の合計は1190万1210件(2017年1月1日から2019年12月31日)、このうち、緊急走行中に事故が発生した件数は1659件でした。救急車の出動10万件に対して13.9件(割合は約0.01%)という事故発生リスクながら、調査に回答のあった消防本部では、これらの事故によって3年間で1人の死亡者を含む130人の負傷者が発生したそうです。
これら負傷者でもっとも多かったのは、救急車と衝突した相手のクルマに乗っていた人(40人)、次いで多いのが救急車の処置室にいた救急隊員(29人)、そして、搬送中だった患者さんやその付き添いの人(26人)でした。これら救急車の後部処置室に乗っていて(事故によって)負傷した人のうち、実に89.1%が、シートベルト未着用だったそうです(救急隊員は負傷した29人中26人、患者さんもしくは付き添いの人は26人中23人)。
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