■「センチュリーを群戦略、SUVにしたらどうか?」
こうした経緯もあり、章男氏からすれば(センチュリーは)「ボクのクルマじゃないな」という認識だったそうだ。
ところが、新型クラウンがさまざまなバリエーションを持たせてシリーズで『群』戦略として成立させるため、そのデザインを確認する時のこと。その際に章男氏は同席していた中島裕樹副社長に「ショーファーカーの群もないとダメなんじゃないの?」と思いをぶつけたという。
続けて「センチュリーってSUVにしたらどうなのだろうか?」という言葉が章男氏の口からその後に出てきた。開発陣はその言葉を胸に、実際にセンチュリーをSUVとして作ってみたら、今回公開されたモデルのようにカッコよく、パッケージのいいクルマとして仕上がってきたという。
■ブランドを引っ張っていくのは企業の「トップ」
ところで、章男氏もGA-Kプラットフォームのパッケージでセンチュリーを作るということに不安は感じていたのだという。だが、できあがった新しいセンチュリーのデザインを見た章男氏本人は一瞬で『ワオー!』となった。
章男氏が今回の新しいセンチュリーで言いたかったことは、「結局、ブランディングというのはその時々のトップがその会社のために思っているこだわり、お客様に対してのこだわり、これがないとできない」ということだった。すなわち、それはあくまでブランドを引っ張るのはトップであるということだった。
新しいセンチュリーとセダンタイプとの違いについてだが、ドライバーズカーの要素が6:4の割合で高いということになるという。
ちなみに3代目センチュリーのセダンタイプは、トヨタグループ社内に最もオーナーが多くいることもあり、今回の「新しいセンチュリー」を開発するに当たっては、そのグループ内のオーナーたちに数えきれないほどのヒアリングを実施したという。その意見に裏打ちされた形がSUVタイプとして結実したのである。
■現在のショーファーカーに必要なものとは何か?
世界のクルマで真の意味で“ショーファー”というと、もはやロールスロイスかセンチュリーしかないのかもしれない。専用のエクスクルーシブなショーファーはもはや絶滅危惧種であり、そのブランドを後世に残していく、延命させるためには何か新しい形、何かに挑戦することが必要だったのだろう。
ミニバンではなく、新しいSUVでチャレンジするということはわかりやすく、台数の出るカテゴリーであることが必要だったのだ。
今、センチュリーのセダンは日本においてはほとんど官公庁のクルマというイメージが色濃くなっている。しかし、章男会長にとってかつてクラウンがそうであったように個人で乗るユーザー向けに、フルオーダーで納車まで1~2年待っても乗ってもらいたいとの願いが込められている。
アルファードを初代からあえてショーファーカーとして使い、いわばその「走り」だった章男氏がステアリングを握り、ショーファーカーの視線でどう新しいセンチュリーを鍛えていくのか。父である章一郎氏は、自動車メーカーのトップである人間が戦後の黎明期からずっと同じクルマに乗り続け、この「センチュリー」というブランドを鍛えてきた。
章男氏はセンチュリーの群戦略によって、トップtoトップでこのセンチュリーを守っていく。新しいセンチュリーの発表会に章男氏は不在だったが、会場内にはそんな気概が満ち溢れていた。
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