新材料の登場や技術のブレークスルー、開閉機能を諦めることで弱点を克服
開閉できるサンルーフが数を減らしていった一方で、昨今は開かないタイプのサンルーフが増えてきています。電動開閉機能を省くことで開くタイプよりコストを抑えることができ、構造がシンプルにできて開口部を広くとれること、強度と耐久性、耐熱性能を高めた樹脂材料が登場したことで、2005年ごろから登場し始めました。樹脂製ルーフとすることでガラスに対して半分程度の重量で実現できる(=燃費悪化を少なくできる)ことも大きなメリットです。
コストを下げる目途が立ったことで、より廉価なクルマにも設定できるようになりました。例えば、ダイハツ「タフト」のスカイフィールトップは、軽自動車としては異例なほどに大きなガラスを採用したことで、クルマのキャラクターに合わせた世界観をつくり上げることに成功しています。
樹脂製だけでなく、ガラス加工の技術が進化したことで可能となったアイテムもあります。たとえば、トヨタハリアーに採用されている、ガラスの間に液晶の膜を通し、障子越しのような色味を持たせる「調光パノラマルーフ」はそのひとつ。調光ができることで、夏の日差しをやわらげながら、冬には暖かい日差しを届け、従来のサンルーフでは必須だった日よけが不要となったことで、軽量化も実現しています。ほかにも、新型アルファードで採用されている「左右独立ムーンルーフ」では、2列目の右席と左席にそれぞれに電動シェードを配置されており、右側だけ開けて左側は暗くするという、アイディアで弱点を克服するアイテムも登場しています。
従来のサンルーフでは、採光が欲しければ日差しを我慢する必要がありましたが、これらの登場で採光と日よけを両立することができました。サンルーフは、新材料の登場や技術のブレークスルー、そしてあまり使わなかった開閉機能を断捨離したことで弱点を克服し、再び注目され始めてきたのです。
ユーザーにとって嬉しいかたちに進化した結果
「大きなサンルーフ」と聞いて思い出すのは、かつてミツビシのデリカスターに採用されていた「クリスタルライトルーフ」です。明かりが少なくなりがちな3列目の乗員も太陽光を受けられ、快適な車内空間を実現していました。スイスの登山電車、ベルニナ急行やゴールデンパスラインのような雰囲気も感じられ、いま見てもいいアイディアだなと思います。
クルマに乗る人にとって、車内の明るさや解放感は、移動の心地良さに直結する非常に重要なもの。ユーザーにとって嬉しいかたちに進化した結果が、「開かない」サンルーフだったのです。
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