【メーカーは隠したい??】最小回転半径が意外に大きい車の事情、小さい車の理由

「さっきの交差点、曲がるところだった! いますぐUターンしたい!」、こんなシーンに出くわしたことはないだろうか。そんな時に気になるのが「切り返さずにUターンできるだろうか?」。この“車の小回りのしやすさ”を表す数値のひとつに「最小回転半径」がある。今回は、この回転半径の秘密について、元自動車メーカーエンジニアの立場で考察する。
文:吉川賢一


■回転半径とは何か?

 ここ日本は、(道路整備が十分に進められてはいるものの)島国かつ国土の3分の2が山地であるという絶対的な地形条件があって、道路事情や駐車場事情は決して余裕があるとは言えない。そういう状況にあって、クルマの最小回転半径はもっと重視されるべきだと、筆者は考える。

 最小回転半径とは、右か左にハンドルを奥まで切った状態でゆっくりと旋回し、一番外側のタイヤの中心が描く円の半径のことを言う。

 メーカーはこの数値を国土交通省へ提出し、認可を受け、クルマのカタログに掲載している。

 実はこの数値、実車で計測した値ではなく、計算式によって割り出す理論値だ。実車で測定をしない理由は、検査車両のばらつき、計測時の誤差、試験場の状態(気温、埃など)で変わるなど、予測不能の結果が出やすいためだ。この最小回転半径は、フロントタイヤの最大切れ角が影響するため、サスペンション設計者が割り出すことが一般的である。

■最小回転半径の相場は?

 では近年、国内で発売されている一部のクルマの実力を見てみよう。

 この最小回転半径、「5m以下だと小回りが利くクルマ」と一般的に言われる。

 逆に、5.5m以上になると小回りが利かず、「不便」に感じてしまうようだ。最小回転半径が5.0m以下にあるヴィッツやマーチは小回りが良いクルマとしてイメージ通りだ。

 逆に、マツダCX-3、日産ジュークは、もっと小さくてもいいのでは? と感じないだろうか。

 ボディサイズも比較的コンパクトで、きびきびと小回りが効きそうなイメージなのに、どうして最小回転半径は大きいのだろうか。ホイールベース、トレッド、タイヤの切れ角、このうちのどれかが原因だ。

リアエンジンリアドライブという特徴的なレイアウトもあって、最小回転半径が非常に小さいルノー・トゥインゴ。モデルのキャラクターにも合っている

■小さいクルマなのにどうして最小回転半径が大きいクルマがあるのか?

 例えば最小回転半径が5.3mもあるジューク、ホイールベース(2530mm)も、トレッド(1525/1525mm)も特別大きいわけではないが、タイヤ外径(標準装着サイズ:215/55R17)が668mmと、ティアナやスカイライン並みに大きいことが影響している。

コンパクトSUVというキャラクター性もあって、もう少し小回りが効くイメージだった日産ジューク。ポイントは車格よりもタイヤサイズ

 タイヤが転舵する際の様子を真上から見ると、タイヤはキングピン軸を中心線として、回転する軌跡を描く。その際、車両内側には車体(サイドメンバー等)があるため、タイヤが内側へ侵入できるスペースが制限される。サイドメンバーの内側にはエンジンや補機類がいるためレイアウト的に内側へ移動させる事は不可能に近く、サイドメンバーを縦長の四角にしたり、タイヤ侵入部を凹ませるなどの対策をしても、タイヤの限界切れ角には限界があるのだ。

 クルマによっては、まだストロークに余裕のあるステアリングラックに、あえてストッパーをつけ、転舵量を規制している。そのため、ボディサイズとアンバランスな最小回転半径となってしまう。

 また、86やBRZの様なスポーツカーの場合も、タイヤ幅が広いことで、車体内側への干渉が起きる。

 タイヤが転舵できるようにトレッドを広げたり、フロントにマルチリンクサスを使って、転舵時の仮想キングピン軸をコントロールして、タイヤを車両外側寄りで転舵させることもできるが、大変更(投資)が必要となるため、設計する側としては、避けたいのが実情だ。同じ車種なのに、スポーツグレード=幅広タイヤ装着だと最小回転半径が大きくなるのは、こうした理由がある。

スズキ・スペーシアも最小回転半径がイメージより小さかったモデル。ボディの四隅にタイヤが付いているので取り回しも楽。こういう「取り回しのよさ」もクルマ選びの参考にしたい

■まとめ

 衝突安全法規の引き上げや魅力性能アップのため、ボディサイズが年々大型化している昨今、最小回転半径を増やさないよう、サスペンション設計者はミリミリと検討している。

 ちなみに、コンパクトカー以外の普通乗用車の場合、最小回転半径を積極的にカタログで謡うことはない。なぜなら、「最小回転半径」は「燃費」の様に、クルマの性能を数字で表すことができてしまう指標なので、自動車メーカーの本音としては、「あまり知られたくない」のだ。

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