スズキ 5代目ワゴンR試乗 その走り、絶品! しかし言いたいこともある!?【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】

■クラウンから乗り換えても胸を張れた

 ただし、私はこのクルマがワゴンRという車名であるかぎり、ある種の寂しさを感じてしまう。というのは初代ワゴンRの輝きを思い出してしまうからだ。

 これは何度か書いていることだが、初代ワゴンRは「どんなクルマから乗り換えても、胸を張って車名を言えるクルマ」だった。

 カローラやコロナはもちろん、マークXやクラウンから乗り換えたとしても「へー、あえてそっちを選んだんだな」と思わせる力があった。

 今、残念ながらその神通力は、ワゴンRにはない。その地位はVWのup!に脅かされつつある。

 up!はVWのラインアップのなかで最も安くて小さいクルマだが、「お金がないから安いクルマにしたんだな」とは思われない。逆にワゴンRを買うと、新型といえども「節約したかったのかな」と思われてしまう可能性が残る。

 例えばホンダはそういう状況に一石を投じるべく、N-ONEを発売してきた。あのクルマは完全にMINIを意識しており、「小さくて安い軽自動車だけど、妥協してこのクルマにしたわけではないよ」というユーザー層を狙っている。

 もしかするとスズキの開発担当者は「ワゴンRのライバルはダイハツのムーヴやホンダのライフだ」と思っているかもしれないが、それでは志が低いのではないかと私は思ってしまう。

 そうではなくルノーのカングーBEBOPみたいなポジションをライバルとして設定してほしかったのである。

 スズキの人はこのクルマでどんな道を走っている姿を思い描いて作ったのだろうか。近所のショッピングモールだろうか? TSUTAYAだろうか? 地方のあぜ道だろうか?

 もちろん「たくさん売れるクルマ」というのはどこにでも似合う必要がある。無難なデザインになるのも仕方ない。しかし私はそれでもやはり、表参道や代官山のセレクトショップに似合うようなクルマを目指してほしかった。

 例えば女性ファッション誌のオシャレなページでクルマを登場させようと思った時に、担当記者は「ワゴンRを使おう」と思うだろうか。残念ながら私はここ10年、そういう企画にワゴンRが登場した記事を見たことがない。

 ドル箱商品だから手堅く作りたい、と思う気持ちもわかるが、売れてるクルマというのは「街の景色への責任」があると私は考えている。

 毎月2万台近く売れるクルマは、それだけで日本の景色を作り上げる力がある。このクルマがたくさん止まっている景色を見て「オシャレな風景だな」と思うだろうか。スズキのデザイナーはそこまで考えているのだろうか。

 追加グレードでも構わないから、もっとポップなスタイルの仕様をぜひ作ってほしい。時代を引っ張る役がワゴンRには似合うはずだ。

 スズキはアメリカ市場から撤退したりして大変だとは思う。売れるクルマだから最大公約数に合わせなければという考えもわかる。ただいつまでも1990年代に流行っていた髪型と衣装とメロディラインで歌っていては、いつかファンは離れていってしまう。

 どこかで新境地にチャレンジする必要がある。新曲と違ってお金もケタ違いにかかるだろうが、なんとか新生ワゴンRを生み出してほしい。

振り返ってみれば、このワゴンタイプのフォルムも初代ワゴンRが世の中に広めたものであった。そういう過去も含めて、古いファンを大事にしつつも、ワゴンRはいつも何かに挑戦してほしいぞ!
振り返ってみれば、このワゴンタイプのフォルムも初代ワゴンRが世の中に広めたものであった。そういう過去も含めて、古いファンを大事にしつつも、ワゴンRはいつも何かに挑戦してほしいぞ!

(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

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