ベストカー本誌で30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。今回はホンダ N-VAN(2018年-)試乗です!(本稿は「ベストカー」2018年11月26日号に掲載した記事の再録版となります)
PHOTO/平野 学
■想像力をかき立ててくれるいっぽうで、乗り手の「遊びの身体能力」が問われるクルマ
新型ジムニーと同じくらいに注目していたN-VANに、ようやく乗れることになった。
運転席以外のシートをすべて倒してフラットにできる仕組みと、センターピラーのない助手席側の巨大な開口部は、実用上も見た目も相当なインパクトがある。
ホンダはN-VANをプロボランティアで話題になった尾畠春夫さんに差し上げるべきだ。彼ならこのクルマを完璧に使いこなすだろう。でも「要らない」と断られてしまいそうだが。
N-VANは貨物車登録になる軽自動車だが「+スタイル」というシリーズは個人ユースを狙ったグレードで、ボディカラーも豊富だし、遊び心もある。
「+スタイル」には「ファン」と「クール」があって、今回の試乗車は「クール」。
本当は黄色いボディで丸目のファンが私の好みだが、N-VANの特徴と魅力はファンでもクールでも同じだ。
N-VANは想像力をかき立ててくれるクルマである。車中泊でのひとり旅はもちろん、ふたりでも可能。「N-VANを買ったらどこへ行こうか」を想像するだけでワクワクする。
クルマにとって大事なのは、想像力をかき立ててくれるかどうかだ。実際は忙しくて車中泊での旅などできないとしても「やろうと思えばできる」のが大事。それが商品の魅力となる。
この点でN-VANは相当レベルが高いが、いっぽうで、乗り手の「遊びの身体能力」が問われるクルマでもある。
N-VANを使いこなせるだけの「遊び力」がなければ所有する意味がない。大げさに言えば、人生観をも問われるクルマと言えるかもしれない。
商用車だから運転席以外のシートはかなりショボイ。助手席はバスの補助席みたいだし、リアシートは背もたれが立っていて、ヘッドレストも付けられない。
でも、それがひとつの味になっているように思うのは、N-VANに青春の匂いを感じるからだろうか。若い人が友だち4人でドライブに行き、「シートがきつかった」というのもまたいい思い出になるはず。そういう楽しさがN-VANにはあるのだ。
ちなみに、私も後席に座ってみたが、いい姿勢で座れて、かえって体にいいんじゃないかと思った。
N-BOX譲りの走りは文句なしだった。試乗車はターボで動力性能も充分だし、静かで乗り心地もいい。これなら尾畠さんも高速道路を使って日本全国、どこへでも快適にボランティアに出かけられるだろう。
内装は余計なものがなく、シンプルで好感が持てる。
荷室の壁にはユーティリティホールがたくさんあって自由にアレンジできる。また、その荷室は汚れに強く、汚れたとしてもぞうきんやタオルで拭けばいいだけであり、シートを倒すのも簡単だ。
こうした道具に徹した作りこそ、N-VAN最大の魅力なのだ。つくづく「ホンダらしいクルマ」だと思う。
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