燃料大食いの悪玉から環境志向の優等生へとキャラチェンジ!? 21世紀初頭の日本車&輸入車のターボエンジン事情

■輸入車のターボ

新開発のBMWツインパワー・ターボエンジンが搭載される3シリーズ。欧州のターボ潮流がにじみ出る
新開発のBMWツインパワー・ターボエンジンが搭載される3シリーズ。欧州のターボ潮流がにじみ出る

 20世紀、日本は世界一のターボ王国だった。が、21世紀になって排ガス規制が厳しくなると過給器離れが進み、その数は激減。日本とは正反対に、ヨーロッパでは21世紀初頭から過給器旋風が吹き荒れ、ダウンサイジング過給も一般的になった。

 過給器に目を向けるようになった理由は、日本と同じように排ガス規制と燃費規制が厳しくなってきたから。ヨーロッパは地球環境にやさしいクルマをディーゼルエンジン搭載車ととらえ、普及させた。ガソリンエンジンと比べてCO2(二酸化炭素)の排出量が少ないからだ。

 が、いいことばかりじゃない。今、中国の北京で問題になっているPM(粒子状物質)とNOx(窒素酸化物)の排出量は、ガソリンエンジンよりはるかに多い。早急に排ガス問題をクリアしないと死活問題だった。

 そこで注目したのが過給器だ。高精度のコモンレール式電子制御インジェクターを使って超高圧で微粒子噴射し、これにターボなどの過給器を組み合わせて希薄燃焼するとPMやNOxの発生を抑えることができる。

■ダウンサイジング過給に踏み切る、ドイツの2社

 積極的に過給器を使い、大成功を収めたのがVWとアウディだ。VWは大排気量のNAエンジンを主役にしていた。

 が、2005年にこれに見切りをつけ、ダウンサイジング過給に踏み切る。小排気量の直噴エンジンに過給器を組み合わせた「TSI」戦略の始まりだ。

 ディーゼルで実績を積んだ手法をガソリンエンジンに応用し、ターボとSC、過給圧の違いによって出力とトルクを自在にコントロール。ツインクラッチを用いたレスポンス鋭い「DSG」を組み合わせ、異次元の走りを手に入れている。

 VWの過給器は優れたドライバビリティに加え、良好な燃費が自慢だ。1.4Lターボ、これにSCを加えたツインチャージャーも設定している。可変バルブタイミング機構やリフト機構も導入。ライバル勢も追随したから一気に華やかになった。

 ボルボやBMW、ベンツなどは1.6Lの直噴エンジンにターボで武装し、これにツインクラッチの2ペダルMTや多段ATを組み合わせている。アルファロメオジュリエッタも同様だ。1.4Lのエンジンにターボ、5速ツインクラッチを採用。

 かくして、ダウンサイジング過給は瞬く間に欧州全土に広がった。プジョーは1.6Lエンジンにターボを装着し、ATを組み合わせて余裕ある走りと良好な燃費を実現。

 驚かされるのはフィアット500とクライスラーのイプシロンに搭載された2気筒ターボだ。強烈な個性の持ち主で、度肝を抜かれる。

 ちょっと前までは6気筒やV8のイメージが強かった高級車メーカーまでもが、4気筒のダウンサイジング過給に積極的に取り組んでいるのだから驚く。

1.4Lターボ搭載のジュリエッタ。パワートレーン開発部門が専用開発したバルブメカニズムが用いられている
1.4Lターボ搭載のジュリエッタ。パワートレーン開発部門が専用開発したバルブメカニズムが用いられている

■まとめとして

 高性能化のためにいち早くターボやSCを採用し、瞬く間にフルライン過給器の時代を築いた世紀末の日本。全精力を注いで開発に没頭したから、エンジンだけでなくターボや制御系など、多くの分野で技術的な蓄積を得ることに成功している。

 が、バブルが弾け、コスト優先になっている間に、欧州勢はダウンサイジング過給に目覚めた。今では高級SUVのレンジローバーや高級車のジャガーまでもが2Lの直噴エンジンにターボを採用している。

 第2ラウンドの現在は、欧米の自動車メーカーが一歩リード。高性能ターボに固執していたニッポン勢は後れをとったカタチだ。だが、日本には有形無形のノウハウがある。今後、HV車やミラーサイクルエンジンで培ってきた高度な技術も過給器に応用できるだろう。

 さらに、軽自動車を持つ日本はダウンサイジングなんてお手のもの。次期コンパクトカーの本命と目される3気筒のターボエンジンだって得意だし、ATやCVTの技術力も非凡だ。これから先の追い上げに期待しようじゃないか。

*     *     *

次ページは : 【番外コラム】軽自動車のターボ車

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

デリカD:5が遂にフルモデルチェンジ! 快進撃続ける三菱が送り出す、ニューモデルの姿に迫る!【ベストカー7月10日号】

デリカD:5が遂にフルモデルチェンジ! 快進撃続ける三菱が送り出す、ニューモデルの姿に迫る!【ベストカー7月10日号】

三菱デリカにニューモデル、現る!? 未来のための新エンジン。AT対MT対決など、今号もクルマ界の隅々まで網羅します