【新型ヤリス超辛口試乗】トヨタの「本気」は世界一のコンパクトカーに届いたか?

1/ヤリスのポイントは?(エクステリア、インテリア)

キーンルックと呼ばれる最新トヨタのデザイン。開口部の大きいグリルに鋭い目つきのヘッドライトが特徴
キーンルックと呼ばれる最新トヨタのデザイン。開口部の大きいグリルに鋭い目つきのヘッドライトが特徴
Aピラーが寝ていて実に伸びやかで均整の取れたプロポーションだ
Aピラーが寝ていて実に伸びやかで均整の取れたプロポーションだ
空力を意識させるテールランプやリアのルーフライン

 フロントデザインはトヨタが共通化を進めているキーンルックですが、サイドからグリルに向かって絞り込むような流れを入れたことで、フロントはシャープで凛々しいスタイリングになりました。

 また、陰影のついたリアフェンダー周りや、リアウィンドウからテールランプ周りまでをブラックで統一したことで、小気味良く走りそうなオーラが出ている秀逸なデザインです。

 5ナンバーサイズということもあり、インテリアに広さは感じられませんが、運転席の周囲は、凝縮されたコクピットのような印象を強く感じます。

 ステアリングには調整量の大きくとれた、チルトとテレスコピックが設定されており、体格に合わせたドライビングポジションが決めやすいです。

 また大型のディスプレイオーディオの位置が、ダッシュボード上の高い位置に配置されており、運転中の視線移動量が少なくてすみます。

デザインに新しさを感じる新型ヤリスのコクピット。ハイブリッドZにはインパネオーナメントにソフトパッドが使われていて全体的に質感が高い。ただシフトレバー回りやドア内張りなど細かいところをみると従来と変わらない部分もある。8インチのディスプレイオーディオは大きくて見やすい。運転席に座ると視界がよく開放感がある
デザインに新しさを感じる新型ヤリスのコクピット。ハイブリッドZにはインパネオーナメントにソフトパッドが使われていて全体的に質感が高い。ただシフトレバー回りやドア内張りなど細かいところをみると従来と変わらない部分もある。8インチのディスプレイオーディオは大きくて見やすい。運転席に座ると視界がよく開放感がある
8インチの大型ディスプレイオーディオは見やすくて大きい。ディスプレイオーディオは標準装備で、7インチ仕様と8インチ仕様の2タイプが用意されており、写真の8インチ仕様はG系グレード以上が標準装備。Tコネクトナビキットは11万円のディーラーオプション
8インチの大型ディスプレイオーディオは見やすくて大きい。ディスプレイオーディオは標準装備で、7インチ仕様と8インチ仕様の2タイプが用意されており、写真の8インチ仕様はG系グレード以上が標準装備。Tコネクトナビキットは11万円のディーラーオプション
ハイブリッドZのメーター。エネルギーモニターなどのディスプレイは中央に表示される
ハイブリッドZのメーター。エネルギーモニターなどのディスプレイは中央に表示される

 エアコンのスイッチ類も、タッチパネル式ではなく、物理的なダイヤルが用意されており、視線を動かさずに触感で探ることができるなど、抜かりなく織り込まれています。

 前席シートはシンプルなデザインながら、腰周辺のサポート性が良く、背もたれクッション側に付けられたラウンド形状の効果もあって、背中が受ける面圧を分散できます。そのため、長距離運転をしても、比較的疲れにくいといった特徴があります。

シートが大型でしっかりした作りで好印象。シートバックがラウンド型で、背中にかかる面圧を分散するので長距離ドライブでも疲れにくい。取材車のシートは合成皮革+ツィード調ファブリックのメーカーオプション(1万1000円)
シートが大型でしっかりした作りで好印象。シートバックがラウンド型で、背中にかかる面圧を分散するので長距離ドライブでも疲れにくい。取材車のシートは合成皮革+ツィード調ファブリックのメーカーオプション(1万1000円)

 リアシートの居住性ですが、ほぼ同じ時期にデビューした新型フィットと比べてみると、さすがに狭く感じます。でも前席に身長165cmの筆者が座って、膝前空間にこぶし1つ半、頭上空間もこぶし半分ほど入りますので、窮屈というほどではありません。

 新型フィットはファミリー向け、それに対して、新型ヤリスは上にアクアがありますので、新型ヤリスは走りを中心に考えた、必要充分なパッケージングを取ったと考えることができるでしょう。

身長165cmの筆者が前席で最適なポジションに座った状態で、後席に座ると、頭上空間はこぶし半分。上は狭く、横方向に圧迫感がある
身長165cmの筆者が前席で最適なポジションに座った状態で、後席に座ると、頭上空間はこぶし半分。上は狭く、横方向に圧迫感がある
膝前空間はこぶし1つ半。広くはないが窮屈というほどでもない
膝前空間はこぶし1つ半。広くはないが窮屈というほどでもない

2/試乗してわかった、このクルマのココが凄い、ココがダメ

良い点(1)ファントゥドライブ! ハンドリングが軽快な快速コンパクトカー

新型ヤリスの大きなポイントは素晴らしいハンドリング性能! クルマと土台となるプラットホームは軽量かつ高剛性、低重心なコンセプトで開発されたコンパクトカー用のGA-Bプラットホームを初採用している。GA-Bプラットホームの採用により、ヤリスは現行型ヴィッツに対し、車重はエンジンの3気筒化なども含め50kg軽量化され、ねじり剛性を30%以上強化、重心高は15mm低くなっており、ハンドリングや乗り心地、静粛性といった動的な質感の向上が期待される
新型ヤリスの大きなポイントは素晴らしいハンドリング性能! クルマと土台となるプラットホームは軽量かつ高剛性、低重心なコンセプトで開発されたコンパクトカー用のGA-Bプラットホームを初採用している。GA-Bプラットホームの採用により、ヤリスは現行型ヴィッツに対し、車重はエンジンの3気筒化なども含め50kg軽量化され、ねじり剛性を30%以上強化、重心高は15mm低くなっており、ハンドリングや乗り心地、静粛性といった動的な質感の向上が期待される

 車重1090kgと、ハイブリッド車にしては軽量なボディのおかげで、コーナーへのターンインや、旋回中のステアリング切り増し操作にも、クルマがしっかりと応答してくれる、素晴らしいハンドリング性能を持っています。

 加速は力強く滑らか、かつ旋回中のブレーキングも安定しており、安心感と楽しさを持ち合わせています。

 コーナリング中にあるギャップを乗り越えた際など、若干タイヤが跳ね上げられる印象はあるものの、揺れのおさまりが速いので、ロールやピッチングといったボディモーションが小さく感じられ、安心感が高いです。

 今回、大人3人+機材(約30kg)を乗せて、小田原から沼津方面まで、箱根の山を越えるドライブをしてみましたが、中低速からアクセルペダルを踏み込めば、力強いサウンドとともにそれなりの加速をします。

 登坂ではエンジンがしきりにかかりますが、エンジンのサウンドやフィーリングは悪くはなく、小気味良く加速ができることは、非常に良い点です。

ボンネットを開けてフロントウインドウ下、バルクヘッド部分を見ると、ショックアブソーバーとダッシュ側をつなぐ黒い金属のパネルが装着されている。欧州車によく使われているもので、これを付けることによって全体のねじれを抑え、ショックの効きをよくし、ロードノイズを低減させている
ボンネットを開けてフロントウインドウ下、バルクヘッド部分を見ると、ショックアブソーバーとダッシュ側をつなぐ黒い金属のパネルが装着されている。欧州車によく使われているもので、これを付けることによって全体のねじれを抑え、ショックの効きをよくし、ロードノイズを低減させている

良い点(2)コンパクトカーなのに、高速走行時の安心感が高い!

高速道路での直進安定性の高さはヤリスがコンパクトカーであったことを忘れるほどだったという
高速道路での直進安定性の高さはヤリスがコンパクトカーであったことを忘れるほどだったという

 先進運転支援を使わずとも直進性が高く、ステアリングに手をそっと添えているだけで、真っすぐに走ります。

 自然なフィーリングに設定されたEPS(電動パワーステアリング)の恩恵もあり、ステアリング中央に戻される復元力が強いことも影響しています。

 また、先進運転支援を入れれば、コンパクトカーであったことを忘れるほどに、高速走行時の安心感が得られます。

 なお、LTA(レーントレースアシスト)には、走行車線の中央を狙って走るモードと、走行車線を外れそうになるとステアリングが戻されるモードの2パターンが用意されており、ドライバーの好みで設定できますので、LTAの動作が煩わしい方には、後者をお薦めします。

良い点(2)実燃費でも30km/L越え。燃費を悪くしようにも悪くできない!?

 新型ヤリスのハイブリッド車は、走行中にエンジンを停止できる速度上限が、これまでの70km/hから130km/hまで引き上げられており、高速道路巡行中は、アクセルペダルを戻すとエンジンが停止し、モーター駆動となります。

 試乗時の燃費は、高速道路走行にて30.5km/L、箱根の山を上り下りした最終燃費でも25.5km/Lを記録するなど、まさに驚異的でした。

■ヤリスハイブリッドZのWLTCモード燃費カタログ値(185/60R15タイヤ+6J×16スチールホイール・樹脂フルキャップ)
・WLTCモード燃費:35.4km/L
・市街地モード燃費:35.5km/L
・郊外モード燃費:38.5km/L
・高速道路モード燃費:33.6km/L
■試乗車には185/55R16タイヤ+6J×16アルミホイールを履いているため、WLTCモード燃費カタログ値は以下になります
・WLTCモード燃費:32.6km/L
・市街地モード燃費:32.7km/L
・郊外モード燃費:35.3km/L
・高速道路モード燃費:30.8km/L

■パワートレインの種類
●1.5L、直3ハイブリッド 91ps/12.2kgm(エンジン)+80ps/14.4kgm(フロントモーター)。4WDは+リアモーター(5.3ps/5.3kgm)
●1.5L、直3NA 120ps/14.8kgm
●1L、直3NA 69ps/9.4kgm
■WLTCモード燃費
●1.5L、直3ハイブリッド ハイブリッドX:36.0km/L、ハイブリッドG:35.8km/L、ハイブリッドZ:35.4km/L
●1.5L、直3NA Z、X:21.6km/L(CVT)、G:21.4km/L(CVT)、6MT(Z、G、X)は19.6km/L
●1L、直3NA 20.2km/L(G、X、X”Bパッケージ”のCVT)
※WLTC燃費はすべてFFの数値

気になる点(1)ACCとLTAが時速30km/h以下になるとカットされる

車線の中央を走行するために必要なステアリング操作の一部を支援するLTA(レーントレースアシスト)。白線(黄線)が見えにくい、または見えない場合も、先行車を追従してステアリング操作を支援
車線の中央を走行するために必要なステアリング操作の一部を支援するLTA(レーントレースアシスト)。白線(黄線)が見えにくい、または見えない場合も、先行車を追従してステアリング操作を支援

 ヤリスにも当然、渋滞時の自動追従システムがあるものだと考えていましたが、意表を突かれました。

 6速MT仕様を設定していることでシステムの作り分けが大変だったのか、カメラやセンサーなどにかかるコストがネックだったのか、理由は分かりませんが、
ACC(アダプティブクルーズコントロール)とLTA(レーントレースアシスト)が時速30km/h以下になるとカットされるには意外でした。

 競合車である「ホンダフィット」には標準装備されており、ホンダは軽自動車にもつけています。次のヤリスのモデルチェンジまで、6、7年このままで売るつもりなのでしょうか。

気になる点(2)欧州車系のクルマと比べ、ドアを閉めた時の音が安っぽい

インテリアの新しさや質感の高さ、作りのいいシートはいいのだがドアを閉める時の音が安っぽいとのこと
インテリアの新しさや質感の高さ、作りのいいシートはいいのだがドアを閉める時の音が安っぽいとのこと

 ドアヒンジ構造やドアパネルの高剛性化、ウェザーストリップの形状やドアストライカーの対策など、ドアを閉めた時の音の改善は、トヨタの技術力であれば、問題なくできるはずです。ヤリスは、海外でも売る世界戦略車です。

 ヤリスから、金属同士がはまり合うような「ジャギッ」という剛性の高さを感じるドアの閉まる音が聞こえたら、それだけでポイントをつけたくなるでしょう。

気になる点(3)右足の足置きも欲しかった!

 ACCやLTCといった先進運転支援技術は、長距離移動の必須装備として、ますます装着率があがっていくと考えられます。

 ACCを入れたあとは、アクセルペダルの上で右足を軽くのせるよりも、右側のタイヤハウス裏側に足を置きたくなるのは、筆者だけでしょうか。

 VWゴルフにあるような、立派な右足用のフットレストは必要ありませんが、2、3cmの平面を作ってもらうだけでもいいのです。ちなみに新型フィットには、右足を置くエリアが用意されています。

次ページは : 3/ヤリスは世界のコンパクトカーのベンチマークとなるのか?

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