【新型ヤリス超辛口試乗】トヨタの「本気」は世界一のコンパクトカーに届いたか?

3/ヤリスは世界のコンパクトカーのベンチマークとなるのか?

欧州BセグメントNO.1を狙えるレベルにあるという新型ヤリス
欧州BセグメントNO.1を狙えるレベルにあるという新型ヤリス

 まるで「弾丸」のようなデザインとなった新型ヤリス、車幅拡大を進める欧州Bセグメントのクルマに対し、車幅1700mmを死守したパッケージングは「素晴らしい!」の一言に尽きます。

 日本市場を意識してくれた表れであり、拡幅をせずともTNGAプラットフォームによって、操縦安定性の競争力は保てるという自信なのでしょう。

 また、ご存知の通り、大胆な作り分けをしたGRヤリスが存在しますので、パフォーマンスが必要な方はそちらをどうぞ、という見事な分業もなされています。

 ヤリスが「超優秀なコンパクトカー」であることは間違いないですし、国内販売台数NO.1を競う一台となるでしょう。

 しかし、クルマの細部の作り込みにおいて、欧州車のコンパクトカーと比べると、まだ粗さや妥協があるように筆者には見えます。前章で挙げさせていただいた課題は、欧州車であればできていることです。

 ヤリスは、海外市場で勝負をしてきたコンパクトカーであり、知名度も十分に高いクルマです。

 特に欧州市場では、ラリーで活躍したヤリスWRCのイメージが強く浸透しています。耐久性が高く、スポーティで良く走り、リーズナブルなコンパクトカーとしての地位を確立し、強力なライバルのいる欧州市場において、ランキング上位に入り込むことができています。

 ちなみに、2019年の欧州市場の新車販売台数ランキングで、Bセグメント1位はルノークリオ(日本名ルーテシア)、2位VWポロ、以降、フォードフィエスタ、プジョー208、オペルコルサと続き、ヤリスは6位にランクインしています。(画像ギャラリー表1を参照)。

 欧州Bセグメントのクルマの平均価格は、約1万6000ポンド~(約200万円)と比較的安く、それゆえに電子制御ショックのような高価なアイテムは使うことはできません。

 コストをあまりかけられず、ボディがコンパクトなクルマを、高速走行中でも、いかに安定させるのか。経験とアイディア、それを実行する技術力が求められます。

 「欧州市場でのコンパクトカーカテゴリーのNO.1を獲得する」。これを日本車メーカーで達成できるのは、現時点ではおそらくトヨタのヤリスだけでしょう。

 競合揃う欧州市場で、Bセグメント1位を獲得するジャパニーズコンパクトカー。自動車メーカーの元開発エンジニアとして、一目見てみたいものです。

まとめ

コーナリング性能8.5点、高速直進安定性9点、走りの質感9点と、走りの部分に高得点を付けた
コーナリング性能8.5点、高速直進安定性9点、走りの質感9点と、走りの部分に高得点を付けた

 日本市場に合わせて、一般道走行中の静粛性を上げ、やたらに足回りを柔らかくして、路面とのあたりが丸くなるように見せたクルマは多くありますが、それはトレードオフとなる操縦安定性を犠牲にしているだけで、ポテンシャルが上がっているわけではありません。

 筆者が考えるコンパクトカー設計のあるべき姿は「設計自由度が狭いなかで、弱点である走りの安定性を成立させるためにどれほど注力したか」が分かること。

 やればできるのに、妥協した様子がうかがい知れてしまうのは、元自動車開発エンジニアとしては、非常に残念なことです。

 「世界に誇れるクルマに仕上がっているのか」。我々のような自動車ジャーナリストだけでなく、ユーザーの皆さんが厳しい目を持ち、改善すべきポイントは、きちんと自動車メーカーへSNSなどを通して意見をする。

 自動車メーカーでは我々が考えている以上に、巷に流れるユーザーの声を見ています。2020年の日本およびヨーロッパのカー・オブ・ザ・イヤー、そして登録車販売台数で上位にどこまで迫れるのか、2020年末が非常に楽しみな一台です。

<元開発技術者目線から見た辛口採点チェック!!>

■コーナリング性能 8.5点/軽めの手応えの操舵力。補舵力も軽め。旋回中の操舵にもキビキビ応答する。旋回ブレーキングや加速時も安定している
■高速直進安定性  9点/素の直進性が高い。LTAには2段階で効きの強さを切り替えられる
■乗り心地     8点/フワ付き感じない。路面の突起を華麗にいなす。振動少なくすっきりした印象
■ロードノイズ   8点/十分に静か。フィットHEVよりは大きい
■エンジンフィール 8点/エンジン音は滑らかな音質。ラバーバンドフィールも少ない(CVT車)
■加速フィール   8点/速くはないが力強い。きつめの登坂路でも加速が続く。そのときのエンジン音はやや大きめ
■走りの質感    9点/静かで滑らか。路面との当たりが柔らかく、質の高さを感じる
■居住性      7.5点/前席は快適な広さ。シートの形状が身体にフィット。後席はやや狭くドアの開きも狭い
■インテリアの質感 8点/視界の邪魔をする障害がなく、シンプルな造形ですっきりしている
■コストパフォーマンス 8点/ハイブリッドZは229万円とやや高だが、装備次第ではコスパが良くなる

総合点 82点

■コメント:
 コンパクトカーの見本のような一台。操縦安定性がよい。乗り心地はフワフワせずにダンピングが適度に効いており、様々なシチュエーションで走らせやすい。ロードノイズの消し込みもうまくできている。ハイスピードでのコーナリング中に横によれる動きをする時があった。先進運転支援は30km/hでカットされるのはマイナス。コストパフォーマンスは素晴らしい。必要な装備に絞ってカスタマイズすれば、価格も抑えられ、満足のいく一台になる。

※個別項目は10点満点、総合点は各項目を集計したものです

トヨタヤリス・ハイブリッドZ 主要諸元
■全長×全幅×全高:3940×1695×1500mm
■ホイールベース:2550mm
■車両重量:1090kg(取材車は16インチタイヤ&アルミホイール装着のため+10㎏)
■駆動方式:前輪駆動
■エンジン: 1.5L 直列3気筒ガソリンハイブリッド
■排気量:1490cc
■エンジン最高出力:91ps/5500rpm
■エンジン最大トルク:12.2kgm/3800~4800rpm
■モーター最高出力:80ps
■モーター最大トルク:14.4kgm
■トランスミッション:電気式無段変速機
■サスペンション前後:前/マクファーソンストラット式
後/トーションビーム式
■タイヤ前後:前/ 185/55R16
後/ 185/55R16
■WLTCモード燃費:35.4km/L(取材車は32.6km/L)
■最小回転半径:5.1m
■燃料・タンク容量:無鉛レギュラーガソリン・36L
■車両価格:229万5000円+ メーカーオプション(39万1600円)+ディーラーオプション価格(27万3900円)

【画像ギャラリー】新型ヤリスは世界のベンチマークとなりえるか詳細写真

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

不死鳥のごとく蘇る! トヨタS-FR開発計画は再開していた! ドリキンこそレジェンドの土屋圭市さんがトヨタのネオクラシックを一気試乗! GWをより楽しく過ごす情報も満載なベストカー5月26日号、堂々発売中!