石油ショックの影響でWRC活動を休止していた三菱が、カムバックを果たしたのが1981年のシーズン。参戦車両は4G63、2Lターボだったが、市販車としてはG62B型1.8Lターボを搭載したランサーEXターボを1981年11月に発売した。
このモデルこそが1990年代に黄金期を迎えるランエボのルーツとなるモデル。徳さんはこの“羊の皮を被った狼”をどう評価したのか? ベストカーガイドʼ82年1月号の試乗記を振り返ろう。
※本稿は1982年1月に執筆されたものです
文:徳大寺有恒
ベストカー2018年1月10日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です
■“羊の皮を被った狼”として現れた三菱・ランサーEXターボ
私が経験したターボカーの中で、“スポーツ”としてベストはなんだろう? すぐに思い浮かぶのはポルシェであるが、正直いって911ターボも924ターボもあまり好きではない。それは、たしかに恐ろしく速いのだけれど。
ポルシェ924カレラGTやカレラGTS/GTRは、たしかに純粋の“スポーツ”といえる。あれならターボ嫌いの私も文句ない。しかし、ほとんどのターボは快適で速いロングツアラーとしては認めても“スポーツ”とはいえないものが多い。
これまで国産ターボカーもそれであった。そこへランサーEXターボが登場した。わずか1,000㎏そこそこのボディに1.8L 135馬力のターボユニットをコンバインした快速車だ。
ランサーEXはどちらかというと大衆車に属するクルマだ。そのランサーEXに大パワーを与えていわゆる“羊の皮を被った狼”に仕立て上げるのは、古来より法則がある。
大パワー(それもそのクルマのそれまでの性格からは考えもつかないくらいの大パワーがいい)を与える。
次にシャシが負けてしまうからといってサスペンションを変えることはせず、バネレートを上げ、スタビライザーも追加、上質なダンパーを与える手段をとり、オーバーサイズのタイヤを与える。
3番目は外装、内装である。タコメーターや油温計、オイルプレッシャーを与え、シートをバケットとし、装備を簡略化して軽量化を図る。
外装はオーバーフェンダーとエアロフォルムを装着する。これがロードゴーイングカー、あるいは“羊の皮を被った狼”と呼ばれるクルマだ。
その点、ランサーEXターボは教科書どおりだ。1.8Lターボエンジンはベースの1.8Lが100馬力、15.0kgmだからパワーで約35%、トルクで約33%アップと強力だ。
このエンジンの中低速トルクはほかの国産ターボよりも秀でている。スロットルオフから再加速時に起こるターボラグだが、小型タービンのランサーEXターボはこれが短い。
ただし、サーキットで走らせたり、ラリーを走ったりすると小型ターボはややマイナスになる。高回転域でのパンチに欠けるのだ。5,500回転まではまあまあとしてもそれ以上はついてこない。
そのいっぽうで、一般公道で、一般ドライバーが走ると、このランサーEXターボは速い。パーシャルスロットル状態が多いからだ。
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