いすゞ ジェミニ ZZ リアルスポーツが持つ圧巻のパンチ力【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】

いすゞ ジェミニ ZZ リアルスポーツが持つ圧巻のパンチ力【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】

 徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回はいすゞのジェミニ ZZを取り上げます。

 いすゞは1971年にGMと資本提携し、GMの世界戦略車構想の一環としてʼ74年に生まれたのが初代ジェミニ。そのジェミニに待望のDOHCモデルが追加されたのがʼ79年登場の「ダブルズィ」でした。

 いすゞ117クーペのDOHCエンジンをベースに電子制御化されたG180エンジンは最高出力130psを発生。

 ライバルとなるTE71レビンの1.6L、2T-GEUが115psですから、その差は歴然。じゃじゃ馬的な走りとともに、ZZこそリアルスポーツと大いに評価を高めました。

 徳さんもそのパワフルさに膝を打ったベストカーガイド1980年3月号初出の試乗記を振り返ってみましょう。

※本稿は1980年2月に執筆されたものです
文:徳大寺有恒
ベストカー2016年11月26日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です


■セリカらを凌駕する奔放な走りを実現したジェミニ ZZ

 比較的簡単に25~70パーセントもパワーアップでき、コストも安く、コンパクト、そして燃費もなかなかとターボチャージャーのマーケットは拡がるばかりだ。

 これに対して古典的なパワーユニットであるDOHCエンジンはコストが高く、ガスも食うのでニューエンジンはとんと出なくなった。

 しかし、スロットルの動きに敏感に反応し、高回転でのトルクの大きさなど、スポーツエンジンとしてはまだまだ負けていない。

 DOHCエンジンといえばトヨタでコロナやセリカに搭載される2Lの18R-GEU(最高出力135ps)とレビンやトレノ、セリカの2T-GEU(最高出力115ps)が独占してきた。

 今回のジェミニの出現はトヨタにとって大きなショックだったろう。ジェミニのパワフルな1.8L DOHCエンジンに比べるとトヨタのDOHCエンジンはマイルドになりすぎてしまった印象だ。

G180エンジンは117クーペのものを電子制御化し、130馬力を発生。ブルーのヘッドカバーが目印だ
G180エンジンは117クーペのものを電子制御化し、130馬力を発生。ブルーのヘッドカバーが目印だ

 それらはたしかにOHCエンジンよりもパワフルだし、高回転もトルクを残してはいるが、高価なDOHCエンジンとしては不満がある。かつてのTE27レビン・トレノにあった猛々しいまでの力強さとパンチを失ってしまった。

 ところがジェミニのG180エンジンにはそれがある。軽くスロットルを煽って、レーシングを繰り返しても、その予感はした。ヴァー、ヴァー、とけっしてスムーズでも静かでもないが、タコメーターの針はビンビン動き回る。

FRにDOHCエンジンというその走りはじゃじゃ馬そのもので、エンジンサウンドも勇ましいものだった
FRにDOHCエンジンというその走りはじゃじゃ馬そのもので、エンジンサウンドも勇ましいものだった

 0~100㎞/h加速 12.51、0~400m加速 16.94秒はスプリンタートレノに比べ、0~100km/h加速で0.3秒、0~400m加速で0.7秒速い。ついでに最高速は171.22km/hとスプリンタートレノの168.03km/hを上回ったのだ。

 もちろん200ccというキャパシティの差を差し引かねばならないが、今回テストに同行したセリカ2000GTは0~100km/h加速が13.39秒であり110~400m加速 16.75秒であったことを考えると、ジェミニZZ-Rの性能がわかるだろう。

 少なくともジェミニのユニットは、スポーツマインドという点でトヨタの2つのDOHCエンジンを凌いでいる。回転を上げるにつれ、かなりけたたましいノイズを発し、トルクも大きくなる。

 そして、それはほぼ最高許容回転の7000rpmまで続く。DOHCエンジンはこうじゃないといけない!とドライバー(もちろんマニアであろう)に思わせるものを持っている。

ブラックに統一されたコックピット周り。5MTはクロスミッション化され、ショートストロークでタッチもいい
ブラックに統一されたコックピット周り。5MTはクロスミッション化され、ショートストロークでタッチもいい

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