徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回は三菱パジェロの3.5Lモデル(1993年7月に登場)を取り上げます。
1991年に2代目が登場し大人気となった三菱パジェロ。その2年半後にV6、3.5L DOHC24バルブエンジンを搭載したスーパーパジェロが追加されました。
ランクル80の直6、4.5L DOHC24バルブの215馬力を上回る230馬力を発生したそのパワフルな走りはRVファンの度肝を抜くものでした。
RVが悪路の走破性よりもオンロードでのスポーツ性能を重視していくことを象徴したこのモデル。1993年9月10日号の記事を振り返りましょう。
※本稿は1993年8月に執筆されたものです
文:徳大寺有恒
ベストカー2017年4月10日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です
■4WDに求められた「走破性」からの“脱皮”
へヴィデューティ4WDのファストツアラー、これは一見おかしいように思うけれど、今、多くの4WDの使われ方を見ると納得できることなのである。もともとへヴィデューティ4WDは野山を駆け巡るものである。
だからギアは低いしノイズも多い。ヴァイブレーションもすごい、というモノでもかまわなかった。問われるのはその走破性なのだから。
しかし、レンジローバーが世に生まれ、大衆的ともいえるパジェロが世界を走り回るようになると、ヨーロッパや日本では、このクルマを乗用車として使うようになった。
ちょっとマッチョな男らしいクルマとして、へヴィデューティ4WDは面白い選択なのである。
新しい4WDのユーザーは普通の乗用車とまるで変わらない使い方をする。ちょっとお使いに行くし、彼女とのデートにも使う。高速道路を使って遠くへ行きもする。こうなると、エンジンそのものへの要求が変わってくる。
従来は低速、いや極低速でのトルクが重要で、そのためギア比もうんと低く、それこそ歩くようなスピードでも走れることが有効であったが現在の4WDは100km/hプラスで走る性能も重要になってきたのである。
むろん、ある面でこの2つの性能は反することもある。それを両立させるためにはシャシーの進歩とともにエンジンのキャパシティをアップし、低速トルクと高速性能をカバーしよう、となってきたのである。
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