■気になったのは、ノイズとCVT
市街地の試乗では、視界や取りまわし性も重要だ。前方視界は良く、ボンネットも視野に入るからボディの先端位置や車幅が分かりやすい。
斜め後方の視界は、ほかの多くのSUVと同じように見にくい。サイドウインドーの下端が後ろに向けて持ち上がり、ボディ後端のピラー(柱)も太いからだ。注目されるのはリヤゲートの形状で、リヤウインドーを二分割して、真後ろの視界はある程度確保した。
いずれにしろ、購入するなら縦列駐車や車庫入れを行って、取りまわし性は確認したい。最小回転半径は5.4mだから、小回り性能はSUVの平均水準だ。
エンジンは直列4気筒1.5Lターボを搭載する。動力性能はターボを装着しない2.4Lのノーマルエンジンと同等だ。実用回転域の駆動力が高く運転がしやすい。4000回転を超えると回転の上昇が活発になって加速性能も相応に優れる。
気になったのはノイズで、2000〜3000回転付近で軽くアクセルペダルを踏み増すと、少しゴロゴロとした粗い音が響く。
トランスミッションはCVT(無段変速AT)だが、8速の疑似変速機能を組み込み、なおかつステップシフト制御も採用した。フル加速する時は、有段ATのようにエンジン回転数を上下させながら車速を高めていく。
この制御はあまり意味がない。CVTは無段変速とあって、高効率な回転域を保って速度を高められることに価値があるからだ。パドルシフトで8速の疑似変速が行えるのだから、通常のステップ変速は不要で、回転数は一定に保ちながら最強の加速力を発揮させるべきだ。
■「安定感」と「活発な走り」を実現させたところが三菱
走行安定性は数あるSUVの中でも優れた部類に入る。プラットフォームは、先に述べたとおりホイールベースの数値まで含めてアウトランダーやRVRと共通だが、安定性や操舵感はエクリプスクロスが最も優れる。
構造用接着剤などを使ってボディ剛性を高め、足まわりを改めてチューニングした効果が大きい。
コーナーの手前でハンドルを切り込むと、アウトランダーなどに比べて、小さな舵角から正確に車両の向きを変える。
カーブを曲がっている時の挙動も異なり、エクリプスクロスは全高が1685mmに達する背の高いボディでありながら、舵角に応じて車両を確実に内側へ回り込ませる。前輪が踏ん張り、旋回軌跡を拡大させにくい。
そうなると後輪の接地性が心配になるが、カーブを曲がっている最中にアクセルペダルを戻すような操作をしても、挙動を乱しにくい。相対的に後輪の接地が削がれても、挙動の変化が穏やかだから安定性は大きく損なわない。
この安心感と活発な走りをSUVで両立させたことが、三菱車の真髄、三菱らしさといえるだろう。エクリプスクロスは前述のように背が高いから、カーブを曲がる時には、低重心のセダンやクーペに比べるとボディが大きめに傾く。
この挙動変化を穏やかに進めることで、エクリプスクロスはセダンやクーペとは違う運転の楽しさを身に付けた。
つまりエクリプスクロスは、背の高さ、高重心まで味方にして、走りを追求している。同じようなことはトヨタC-HR、マツダCX-8などにも当てはまり、新しいSUVに共通する醍醐味となっている。
乗り心地は少し硬いが、走行安定性を考えれば納得できるだろう。速度が上昇すると快適になるタイプだ。
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