■EVだからこそ得られたフィーリング そして“レクサスらしさ”
レクサス関係者は「EVらしさを際立たせるのではなく、EVでもGAS(ガソリン)やHEB(ハイブリッド)で追求してきたレクサスらしい走りを求めました」と言うけれど、この静粛性とともに得られるドライブフィールはやはりEVらしさと言いたい。
静か過ぎるのもエモくないので演出としてモーター音が際立つ“音作り”=アクティブサウンドコントロールを採用。
その音とともにEVならではのダイレクトな加速性能が得られるのだけど、そこにレクサスらしさを抱くポイントが2つあった。
ひとつは乗り心地と挙動。優しい加速ではHEVでもGASでも味わえないフラットライド感が静粛さとともにどこまでも続く。
一方、アクセルをグッと踏み込むとサスペンションがわずかながら沈み込み、押し出されるような自然な加速感が得られ、アナログ世代のクルマ好きもちょっとニンマリできるかもしれない。
走行モードを“SPORT”に切り替えた時のダイレクトで圧倒的な加速性能もしかり。
ステアリングフィールやアクセルペダルの操作フィールがやや重めで、それがまたUX300eの重量感とマッチしていて走りの質感を高めている。
ただクールなだけでない、このモデルならではの味わいがココにあるような気がした。
初のEVということでさまざまな技術が開発/搭載されているけれど、例えば、専用のボディ補強とともに大容量のリチウムイオン電池(従来のPHEV用に比べエネルギー密度は約2倍)パックを井桁状にフロアに固定。
より一層の剛性向上を図っていて、走行フィールの確かさに繋がっているのは間違いない。
走行フィールにボリュームを割いてしまったけれど、UX300eはEVが登場する以前からこのUXに与えられていたホスピタリティがあってこそ成立していると改めて気づいた。
ナビやオーディオ、インターフェイスにEV専用エアコンシステムの快適さが加わり、ACCなどの使いやすさも申し分ない。
さらにEV専用のメーターやカラーヘッドアップディスプレイの視認性は「電費を意識しちゃおうかな」と思わせるわかりやすさを品よく匂わせている。
デザインとクォリティが一体となって生まれるレクサスの世界観と、他ブランドとも異なるEVのドライブ&ライドフィール、そしてこのサイズ感によって、UX300eこそレクサスの第一弾EVでよかったとやっぱり思うのだ。
●レクサスUX300eバージョンL 主要諸元
・全長×全幅×全高:4495×1840×1540mm
・ホイールベース:2640mm
・車両重量:1800kg
・最小回転半径:5.2m
・駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
・総電力量:54.4kWh
・モーター最高出力/最大トルク:203ps/30.5kgm
・駆動方式:前輪駆動
・航続距離:367km(WLTCモード)
・サスペンション(F/R):ストラット/ダブルウィッシュボーン
・タイヤサイズ:225/50R18
・価格635万円(バージョンCは580万円)
【番外コラム】MX-30 EVとの違いは?
EVの個性や魅力、航続距離に対する見解も今やさまざま。レクサスUX300eは本文でもご紹介したようなドライブフィール+レクサス独特のデザインや品質とともに成立する世界観がとにかく魅力的。
MX-30 EVもデザインや実用面へのこだわりはもちろんながら、「EVならではのシームレスな挙動」に独特の価値を持たせた走行フィールに、これまで試乗したEVのなかで最も新鮮なフィーリングが得られた。e-Gベクタリングコントロールプラスなる技術がキモらしい。
走る、曲がる、止まるの姿勢制御に大きく貢献。とにかくスイスイ&フラット。これがスマートとも楽しいとも思える走りをEVで叶えているという点は、まさにマツダらしい。
(TEXT/飯田裕子)
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