驚愕の静粛性と直進性 しかしe-POWERのような強い加速はない
まず試乗したのは、e:HEV Z 4WD。気温は20度程度で、時折雨がぱらつく天候だが路面コンディションはドライという好条件下での試乗だ。標準装着タイヤは225/50R18サイズのミシュランプライマシー4、ウェット路面にも強いプレミアムコンフォートタイヤだ。225幅もあるリッチなタイヤは、先代ヴェゼルツーリングと同タイヤだ。
まずは30km/h程度の低速走行で味見をする。すぐに感じたのは、静粛性の高さと、ボディの揺れの少なさだ。ロードノイズは皆無。道路の段差を乗り越えると、18インチタイヤの硬さを若干感じるものの、インパクトノイズは小さく、また、ボディが大きく揺すられるようなこともなく、フラットな姿勢を常に保っている。
60km/h程度まで車速を上げていくと、高い直進性とフラットライドな印象が強く出てくる。ロードノイズも静かな状態のままだ。時折、発電のために始動するエンジンの音も、遠くに聞こえる程度。
しかし、アクセルペダルの操作に対しては、パンチのある日産キックスのe-POWERとは違い、ヴェゼルのe:HEVは、従来のガソリン車の延長線のような、なだらかな加速フィールをする。
このe:HEVの発進時の「おしとやかさ」について、パワーユニット開発チーフエンジニアの明本禧洙(あきもと よしあき)氏に伺うと、「e:HEVの味付けとして、あえてモーター駆動特有の強いトルクの出し方は狙わなかった。あまりに強い加速は、ドライバー以外の乗員にとっては心地いいものではない。(ガソリン車に乗っていた)これまでのお客様が運転しやすいように、なめらかな加速特性とした。」とのこと。
驚きを狙わずに、他の乗員のことを考えたバランスに落とし込んだ、というのは、「なるほど」と思った。
続けて「e-POWERは、出足のトルクフルさはあるが、その後の加速が続きません。新型ヴェゼルのe:HEVでは、その先に加速の伸びを感じてもらえるようにセッティングした(明本氏)」ともお話しされていた。パワフルなモーター駆動フィーリングか、従来のガソリン車のような加速フィール。もはや好みの問題でもあるが、電動車を運転していて感動を得られるのは、前者であることの方が多い。そこをあえて「捨てた」ところにホンダの意思が感じられる。
ハンドリングは、操舵に対してキビキビと曲がるような印象は少ないが、ナチュラルで安心感があり、誰でも扱いやすいだろう。シフトポジションをBレンジに入れた時の減速感も滑らかで、4段階で効きの調節ができる点もよいとろだ。
100km/h程度の高速走行でも、直進性は依然として高く、なめらかに高速走行することができる。横風耐性も高い。ワンクラス上の重厚な乗り心地だ。途中、後席にも乗り込んだが、揺れは少なく、また、横のウインドウが大きいため景色がよく、かなり快適に過ごせる。快速ツーリングにもってこいだと感じた。
続いて試乗したe:HEV 2WDは、おおむね4WDと同じような走行フィーリングであったが、全体的にボディの動きに軽さがある。例えばコーナーではコブシ半分程度、内側のラインに入っていくような印象だ。軽快な反面、4WDで感じた直進性の高さは若干落ちる。
ちなみに車両重量は、e:HEV 2WDが1350kg、4WDは1430kgと、80kgの差があり、その大半は、後輪側の駆動装置たちによるものだ。先代ヴェゼルの魅力でもあった「クルマの軽快感」は、e:HEV 2WDの方が味わいやすいが、クルマの落ち着きっぷりは4WDの方が遥かに上だ。
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