■あり得ない古今折衷車! ラーダニーヴァレジェンド
まず、サイズ感が今じゃあり得ない。今回チェックしたのは3ドアと5ドアでほかにピックアップトラックがあるが、前者の全長×全幅×全高とホイールベースは3640×1680×1640mmと2200mmで、後者が4240×1680×1640mmと2700mm。これと張り合えるのは軽ベースのスズキジムニーシエラくらいという昭和なコンパクトさだ。
デザイン観もぜんぜん違ってなぜか初代フィアットパンダに似ている。というのもアフトワズの前身であるヴォルガ自動車工場は、1966年のフィアット124のライセンス生産から始まっており、まさしくフィアットがお手本なのだ。
丸目ヘッドライトの上にまゆ毛のごとく長方形ウィンカーが付くレイアウトもクラシカルだし、タイムスリップ感はハンパない。
さらに時代錯誤感たっぷりなのは装備のハイテク度でライト類はイマドキLEDゼロ。すべて電球だ。唯一、後付け風のハイマウントストップランプがLEDっぽいがそれくらい。
インパネにもデジタルディスプレイの類はいっさいなく、それどころかオーディオすらついてない。エアコン下にDINサイズの空きスペースがあるだけだ。
代わりにフロアには長めのシャフトの5MTとふたつのレバーが備わり、そもそもATの設定自体がない。しかも本格四駆で複数フロアレバーといえば、ランクル70系のようにローレンジとハイレンジ、さらにFRと4WDを切り替える副変速機を思い浮かべるが、ラーダに効率的なFRモードはなく、常時4WDでローとハイを切り替えるだけ。もう1本はデフロック用レバーで、まさに悪路走破に特化した男のワイルドSUVなのだ。
サスペンションはフロントが教科書に書いてあるような強固なコイル式ダブルウィッシュボーン式で、リアがリジット式5リンク。運転感覚は不思議で、ステアリングフィールはなぜかフィアットパンダに似ていて、乗り心地がことのほかヨイ。
エンジンは84ps/129Nmを発生する1.7LのSOHCガソリンで、基本設計はボディ同様に1970年代と古い。しかし、そのわりにちゃんと回るし、パワー感もあって、これぞロシア七不思議。根本設計こそ古いが、2000年代に入って燃料系がインジェクション化され、排ガスはユーロ5に対応。
また、極寒期の遭難事故も多いのだろう、SOSスイッチは法的に義務付けられ、ラーダにも後述するUAZにもついている。
圧倒的古さと絶妙モダンさが共存しているのが今のロシア車なのだ。
■超ド級の時代錯誤感はこちらが上!! UAZ(ワズ)3909SGRコンビエクスペディション
とはいえ驚くのはこれから。次の1台はさらに圧倒的だった。知る人ぞ知る、世界的にも希なワンボックス4WDのWAZ(ワズ)3909で、懐かしい三菱デリカスターワゴンのご先祖様。今、ルパルナスではミリタリーなカーキとオレンジというふたつのボディカラーが選べるが、サイズからしてラーダニーヴァ以上の時代錯誤感。
全長4363×全幅1940×全高2064mmとホンダヴェゼル並みの全長にして幅と高さは2m近く、それでいてトレッドは妙に狭い。ロシア語の愛称「ブハンカ」=(食パン)からも想像できるキュートなデザインで、時々トヨタファンカーゴの延長線的にUAZを欲しがる日本人がいるそうだが、とんでもない。ある意味、風呂なし石油ストーブの四畳半アパートに住むような覚悟が必要な超原始的カーだ。
そもそもUAZ=ウリヤノフスク自動車工場は第2次大戦中にラーダ同様、これまたヴォルガ川沿いに誕生した自動車メーカー。もとは軍需工場で、1958年(昭和33年)に初の自社開発モデルとして、ワンボックスカーの「UAZ450」が誕生した。
以来、改良とバリエーションを増やしつつ生まれたのがUAZ3909。マジメな話でデザイン&質感はほぼ60年以上前から変わらないという、リアルな走るタイムマシーンなのだ。
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