■SUVながらCd値は0.26
RZのサイズ感はbZ4Xよりやや大きく、ライバル級のBEVになぞらえれば、メルセデスベンツEQCのそれにほど近い。一方、2850mmのホイールベースや1000mmの前後席間といったパッケージ面での数値はbZ4Xと同じだ。
エクステリアはグリルというよりもフロント周りの形状そのものがスピンドル化しているように解釈されており、その立体的な造型のために深絞りを要するフェンダーはスチール製とされた。
また、実際の冷却口となるロアーグリルにはシャッターが設けられ、適温時の空気抵抗削減に寄与している。リアスポイラーは左右端で車体の揺れを抑えながら中央部はエアフローを下方へと導くユニークな形状で、その導風効果によりリアワイパーレスでの視界確保を実現。
フロアカバーには渦流効果によるスタビリティ向上を狙ったディンプル加工が施されるなど、エアロダイナミクスについては隅々まで配慮がなされており、空気抵抗の大きなSUV的な車型でありながら、Cd値は約0.26に収まっているという。
■質感の高さがキラリと光ったRZプロトの躾のよさ
戦いのフィールドがBEVになると、レクサスの特徴でもある静粛性において、ライバルとの差別化が難しくなることは間違いない。それでもRZに乗ると、まず感心させられたのはその静かさだった。
物量による封じ込めに頼らずも、インバーターやモーターの作動音、ロードノイズや風切り音とあらゆる項目のレベルが相対的に低い印象で、かつて初代セルシオで施された源流対策を思い起こさせるところがある。
0〜100km/h加速は5.6秒、最高速は160km/hと、動力性能は数値的にみれば平均的なBEV四駆のそれだが、乗ってみるとここでも光るのは質感の高さだ。歩くような速度での発進から胸のすくような加速まで、気張らずとも自然なアクセル操作でいかようにでも力を滑らかに引き出せるパワートレーンの躾のよさは、さすがにクルマ屋の仕事だなぁと納得させられる。
BEVといえばゼロスタートからむち打ち級の加速というイメージが先行してしまっているが、考えてみれば環境的にみれば元も子もない話に、自動車メーカーがやすやすと乗じるわけもない。
■ナチュラルにこだわったRZのダイナミクス性能
そのぶん、RZが売りにするのはDIRECT4による新次元のドライバビリティということになるが、こちらについても想像以上に常識的な味付けがなされていた。攻め込んでいけばその粘り腰が尋常ならざることは伝わってくるが、舵角や荷重移動をすっ飛ばしてまで、駆動変化を誇示するようにグリグリ向きを変えるというほどの着色はない。
聞けばダイナミクスにおいてはとにかくナチュラルであることにこだわったとのことで、その趣旨は充分に果たされている。が、個人的には新出のBEVというプレミアムのために、スポーツモードではもう少し積極的に旋回力を強めた制御に振ってもいいのではという気もした。
ちなみに、今回試乗した個体はラインでの生産試作が始まる前、単品試作の車両ということで、発売に向けてはまだまだ改良の余地がある段階とのことだった。内装も正規のフィニッシュには届かないところが多く、総合的な質感は発売の暁に知ることになる。
走りにおいては最大の見せ場となるだろうバイワイヤー式操舵システムとDIRECT4とのコンビネーションももうしばらくはお預けだ。が、RZが目指すところのナチュラリズムはしっかり感じられる仕上がりであることは現時点でも伝わってきた。年内予定という発売に向けて、まだまだ磨き込みは続くのだろう。
(※試乗車両は開発中のプロトタイプとなり、実際の販売仕様とは異なります)
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