日本車にはないベンツSクラスのBEV版「EQS」の凄さと2リッター直4にはがっかり!?「新型SL」公道初試乗!

■心地よいEQS450+、暴力的な刺激のAMG EQS 53

AMG EQS53 4MATIC+の走行シーン
AMG EQS53 4MATIC+の走行シーン

 最初に試乗したのはAMG EQS53 4MATIC+。乗り込んだ時点でのバッテリー残存は82%、航続可能距離は411kmだったので、100%ならば501kmといったところ。WLTCモード値からは100kmの差はあるが、BEVはドライバーの走行方法によって相当変わる。筆者の前(に乗った)のドライバーが元気に走り回っていた、ということだろう。

 EQS AMG53の装着タイヤは、ミシュランのパイロットスポーツEV、サイズは前後とも275/40R21だ。トレッドセンター部に、FORMULA-E用レースタイヤの技術を応用したコンパウンドを採用し、強大なモーターパワーを受け止めて、パワーを確実に路面へと伝えるスポーツタイヤだ。

 サルーン向けにしてはずいぶん贅沢なタイヤだが、このEQS AMG53には、このくらいのタイヤが必須。EQS AMG53は、前後アクスルに電動パワートレイン「eATS」を備え(標準モデルのEQS450+は333psのリアアクスルのみ)、最高出力は656psを誇る。

 強力な前後モーターと高いトラクションによる加速は超刺激的だ。とてもとても、アクセルペダルを踏み切れるものではなく、一瞬のフル加速で脳が揺すられて、自分の運転ながら、少し酔ってしまった。ちなみにレーススタートを使用すると、最高出力761psにもなるが、公道で使うことはできないだろう。

通常モデルのEQS 450+の走行シーン
通常モデルのEQS 450+の走行シーン

 続いて試乗した、通常モデルの450+。こちらは、Sクラスの厳かな雰囲気に近い乗り味であった。AMGのパフォーマンスを発揮したいといった意思がないならば、穏やかな走り心地の450+のほうが、(少なくとも筆者にとっては)ずっと幸せ。

 EQSは全モデルに、「エアマチックサス(エアサスと連続可変ダンパーシステム)」が4輪に標準搭載されており、21インチ大径タイヤが路面から受ける衝撃を吸収してくれる。また、高い遮音性能によって静粛性がよいため、非常に静か。特に後席空間は至極快適だが、後席空間が広すぎて足を踏ん張るところがないため、強い加速で振り回されるとかなり辛そうだ。

 また、「サウンドエクスペリエンス」という、加速と回生ブレーキ時にサウンドを出すシステムが面白い。ドライブモードを、SPORT、SPORT+と変えることで、サス設定やモーター特性とあわせて、迫力のあるサウンドが響く。気筒エンジンのサウンドとは異なる、電子音なのだが、野太く低いサウンドが車内に響き渡る。

 これらは追加コンテンツとして購入することで、アップデートも可能だという。「BEVは無味無臭の加速がつまらない」と感じていた方にとっては、興味を持つきっかけとなりうるだろう。V8やV10のエンジンサウンドの再現ができると、なお面白いと思う。

■車両本体価格
EQS450+=1578万円
メルセデスAMG EQS 53 4MATIC+=2372万円

■最新デジタルながらアナログな雰囲気をもつ、新型「SL」のインテリア

■車両本体価格
AMG SL43(BSG搭載モデル)=1648万円

スペクトラルブルーマグノというマッドペイント(有料色22万6000円)が施されたAMG SL 43
スペクトラルブルーマグノというマッドペイント(有料色22万6000円)が施されたAMG SL 43

 一方、今作からメルセデスAMGの完全自社開発となった、新型「SL」。2+2シートレイアウト、ソフトトップのラグジュアリーロードスターであるSLの新型は、インテリアに、最新のメルセデス流デジタルながらも、アナログな雰囲気をもつ「ハイパーアナログ」デザインを採用。

 AMGのステアリングホイールの向こう側には、昨今のメルセデス共通である派手なデジタルメーターと、インパネ中央には縦型ディスプレイが並ぶが、3連のエアコン吹出口や横幅のあるセンターコンソールなどは、伝統的なロードスターのデザインが踏襲されている印象だ。

ステアリングホイールの中央下に設置されている2つの円いスイッチは、右側がドライブモード変更、左側がサスペンション設定やリアスポイラーの角度変更などの機能をアサインできる
ステアリングホイールの中央下に設置されている2つの円いスイッチは、右側がドライブモード変更、左側がサスペンション設定やリアスポイラーの角度変更などの機能をアサインできる
シートは2+2のレイアウト。後席スペースは最小限
シートは2+2のレイアウト。後席スペースは最小限

 また、ボディには、アルミニウム複合素材のスペースフレームを基本とした構造を導入し、最新の接合方法を投入。

 これによって、ねじり剛性を従来型比でプラス18%、横方向剛性はAMG GTロードスター比でプラス50%、前後方向剛性もAMG GTロードスター比でプラス40%と、ボディシェルの品質は最高水準にまで高められているという。

 同時に軽量化も実現しており、ホワイトボディの質量は270kgと、ロードスター用ボディにしては非常に軽量、まさに「SL(Super Light=軽量)」だ。

 また、最高出力381ps、最大トルク480Nmを発生する2L直列4気筒ターボエンジンには、メルセデスAMGペトロナスF1チームが長年採用してきたシステムがベースとなる、量産車としては世界初の技術、エレクトロニックエキゾーストガスターボチャージャーが投入されている。

最高出力381ps、最大トルク480Nmを発生する2L直列4気筒ターボエンジン
最高出力381ps、最大トルク480Nmを発生する2L直列4気筒ターボエンジン

 厚さ約4cmの電動モーターが、排気側タービンホイールと吸気側のコンプレッサーホイールの間で、軸と一体化されており、モーターパワーによって軸を直接駆動し加給するしくみだ。

 エンジン組立にも細心の注意を図り、AMGのエンジンマイスターが一基ずつチェックするという。なお48V電気システムと組み合わせるマイルドハイブリッドのシステムは、第2世代のBSGとなる。

サスペンションには、前後とも5リンク式の新型を投入、ダンパーの伸び側と圧側を独立でコントロールするAMG ライドコントロールサスも標準装備
サスペンションには、前後とも5リンク式の新型を投入、ダンパーの伸び側と圧側を独立でコントロールするAMG ライドコントロールサスも標準装備

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