スペックなどが公になってきた新型スープラ。登場は2019年春とされているが、大きな話題はBMWとの協業にあるだろう。
珠玉のシルキーシックスをBMWから提供され、インテリアなどにもBMWの香りがプンプンする。
味付けこそトヨタ流というが、実際にBMW Z4とスープラ(プロトタイプ)を乗り比べた2人のジャーナリストにその共通点と差異について聞きました。
文:渡辺敏史、小沢コージ/写真:ベストカー編集部
ベストカー2019年2月10日号
■シャープなZ4の遺伝子を色濃く残すスープラ
(TEXT:渡辺敏史)
Z4に初めて乗ったのはポルトガルの程よく空いた高速道路やタイトなワインディングといった、日本の一般道と相違ない環境だった。
そこでの振る舞いは驚くほどシャープで、その動きに慣れるまではまっすぐ走らせることにも気を遣ったことを思い出す。
ロックtoロックで2.1回転のステアリングはセンター付近の遊びはほとんどなく、そのギアレシオも斬り込むほどにみるみるゲインを高めていく設定。
そこに強烈なショートホイールベース&ワイドトレッドが加わっての旋回感は、いかにもロングノーズ的な操作と動きとの位相ずれ感もなく、まるで自分を中心に車体が曲がるというより回るような感覚に近かった。
Z4がこのような仕上がりになった背景には、メタルトップを持つ先代が軟弱なクルマになったと市場に評されたことも関係している――とは開発エンジニアの話。
すなわちトヨタからの協業の持ちかけは、Z4を激烈なディメンジョンに振り切る後ろ盾になったのかもしれない。
現在伝わっているスープラのディメンジョンはこのZ4とほぼ変わらず、ジオメトリーは同一と想定される。
ちなみに多板クラッチを用いた電子制御デフはZ4も3LモデルのM40iに標準装備。
タイヤもスターマーク付きのミシュランパイロットスーパースポーツをともに履いている。
つまるところ、Z4とスープラとの足回りの違いは重量剛性差も勘案したコイル、スタビ、アブソーバーなどのレート、電子制御デフのセッティングといったところで差別化されているのではないかというのが僕の予想だ。
スープラのライドフィールについてはプロトタイプのうえ、試乗時の天気が大雨だったため、計りかねるところは多い。
が、グリップを探りながら恐る恐るステアリングを操作していても感じるのは、Z4に比べて僅かながらロールやピッチの量が大きく挙動そのものはつかみやすいということだ。
ワイパーが高速作動するほどの路面状況を鑑みれば、スタビリティの面も大きな問題はないように思える。この段階ではリアデフの差動も巧く貢献しているのだろう。
が、その路面状況を差し引いてもスープラは滑り出しのタイミングはわかりづらく、そこからのカウンターなどのアクションも素早い操舵が求められるように窺えた。
これは素晴らしい回頭性を生み出すディメンジョンの副作用でもあり、FRゆえ簡単にスピンモードまでには至らないがゆえの確信的設定だと思う。
加えて、アクセルによる滑りのコントロールについては時折不自然な癖が感じられた。思うにリアデフの制御が挙動に難しさを生んでいる場面もありそうだ。
Z4の印象から推すれば、ドライ路ではこれらのネガは小さくなるかもしれない。が、ハンドリングの細かな修正はこの先も重ねていくことになるだろう。
が、それ以外に気になるところはない。エンジンのフィーリングやパワー感、ミッションの変速スピードや駆動伝達のダイレクト感などもZ4と互角。
屋根があるから当たり前とはいえ、剛性感などはZ4をひと回りは上回っている。想定されるライバルはZ4以外にも多いが、それらと相まみえても個性を認められることになるだろう。
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