■「FUNなクルマ」にするため、操安性も徹底的に向上!
パワートレーン系のエンジニアに聞いたところによると、今回はことさらにパワーを演出するようなことはしなかったという。驚いたのは、エンジンをスムーズに制御することによって、乗り心地をよくしようと考えたという点だ。
「エンジンと乗り心地は関係ないでしょ!」と思われるかもしれないが、実はこれが大いに関係アリ! 先代のエンジン制御では各気筒の爆発が均一にならず、それがエンジンマウントを介してボディへ振動として伝わっていた。新型ではこの爆発を最適化することで各気筒の爆発を安定させ、結果として音と振動を抑えることができたそうだ。
インプレッサは「FUNなクルマを作る」という開発目標を掲げたそうだが、それは単純に「スポーツ走行のような運転が楽しいクルマ」というよりも、「疲れないクルマ」「ずっと乗っていたくなるクルマ」を目標として開発してきたという。
その目標を意識して開発を進められたのは、もちろんパワートレーンだけではない。操縦安定性の分野もその筆頭だ。
先代のインプレッサは、サーキットではどちらかといえば自分でハンドルやペダルをグイグイ動かして、クルマの手綱を引っ張りながら乗りこなすような面白さがあった。しかし、新型は、もっとこちらの操作を汲んで先回りしてくれるような素直な運転を楽しめるのだ。
特にセンターからハンドルを切り始める、ごく初期の操舵がしっかり効くから、一般道でもサーキットでもクルマがピッタリとついてくる感覚が強い。これは、新型クロストレックにも採用されている2ピニオン方式のパワーステアリングの効果も大きいようだ。
また、スポット溶接の打点間を構造接着剤でしっかり接着することで、ボディ剛性が高まっていることも大きい。
■FWDも軽快だが、AWDの懐の深さに魅了された!
そして、サーキット走行をしていると、FWDとAWDでかなり感覚が違うことがわかった。今回はコース上にパイロンが置いてあったり、スキール音を立てるのが禁止だったりと、そこまで思い切った走りはできなかったが、AWDモデルの安心して自由自在に操れる感覚は病みつきになりそうになった。
前後輪へのトルク配分が絶妙なので、コーナー脱出時にアクセルを思い切り踏み込んでも、滑り出さずにしっかりトラクションがかかるし、高速コーナリング時にもレールに乗ったようにピターッと旋回してくれる。
確かにFWDは軽快で、自分で操れる喜びはあるものの、AWDはサーキット初心者でも安定して走ることができるし、逆にさらなる上級者になっても、インプレッサの懐深いポテンシャルを感じられるのではないかと思う。
■「どこか1点」ではなく、「すべて」の性能を底上げ!
エンジニア曰く、「当たり前ですが、クルマというのは何万点もの部品、何千もの制御があるので、何かひとつを変えるだけではいいクルマになりません。新型インプレッサはできるかぎり、その一つひとつに磨きをかけて全体の性能を底上げしました。例えば、乗り心地をよくしようと思ったら、足回りのセッティングだけではなく、前述したようにエンジンの制御も変えたり、シートも一から設計しています。とにかく新型インプレッサは全方位を進化させ、疲れにくく、ずっと乗っていたくなるようなFUNなクルマを目指してこだわり抜きました」とのこと。
今回試乗してみて、「プラットフォームが変わってないの?!」から「プラットフォーム以外は全部変わってる!」という印象にガラリと変わった。運転してみても、その全体の一体感や操作の滑らかさ、室内の静かさが相まって、とても心地がいい。
最近はSUVモデルが人気を博しているものの、やはりスバルの走りの基本のモデルとなるのはこのインプレッサなのだろうと感じた。
※なお、今回の正式発表により、価格が公表された。2Lガソリン車の「ST」はFWDが229万9000円、AWDが251万9000円、2Lマイルドハイブリッドのe-BOXER「ST-G」はFWDが278万3000円、AWDが300万3000円、同「ST-H」はFWDが299万2000円、AWDが321万2000円。
【画像ギャラリー】新型インプレッサはどのように進化を果たしたのか!? サーキット試乗でその真髄を解き明かす!(32枚)画像ギャラリー
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