そもそも歴代スープラは“良いクルマ”だったのか?
2012年にBMWとの提携が正式に発表され、そのなかに「スポーツカーの開発」という項目があり、スープラ復活の情報に接した時、BMWが作るなら、相当期待できるということがあった。
70スープラにしても80スープラにしても、トヨタファンには叱られるかもしれないが、正直いって、世界のFRスポーツという分野ではレベルは高くなかった。
直列6気筒のパフォーマンスやフィーリングも“1G”の2Lターボは軽快だけれど、パンチが欠けていたし、“2JZ”はチューニングの素材にはよかったものの、トータルとして世界の直6と比べると、まだまだという感じだった。
そのトヨタがFRスポーツに長けたBMWのパワートレーンを使うとなれば、この復活は世界のトヨタファンを喜ばせるばかりではなく、車好きも納得させる魅力があると期待するのも当然だろう。
なぜ自前のトヨタユニットを使わなかったのかと、思うかもしれないが、この点に関して、多田さんは、
「うちにはV6しかないし、このために直6を作るわけにもいかないし、あちらにはいい直6があるわけで、これからの時代、いいものはどんどん使わないと、自動車産業だけ遅れていく」
と、トヨタの考えを語る。これはある意味トヨタの未来図でもある。
今回はスープラだが、今後、「いいクルマ」を作るためには、いろいろな手段があることを示しているとも言える。
各100万円差!! 三者三様の新型スープラは高い? 安い?
そのGRスープラだが、外装に関しては、ほぼ同じで3L直6ターボエンジンを積む「RZ」のホイールサイズが19インチであるほか、2Lターボの「SZ-R」が18インチ、「SZ」が17インチとパワーというか、価格にあった序列でホイールサイズが決まり、わかりやすい。
実際に乗ってみると、最もスープラらしい、3L直6ターボ、330psを積む「RZ」は、予想していた走りより相当良かった。
タイトターンの続くワインディング、一般道路での走りなので、中速以上のコーナリングパフォーマンスは不明ながら、低回転域でのフレキシビリティ、アクセルを踏み込んだ時のトルク感、息の長い加速感とエンジンの軽快さ、どれを取ってもそう不満はない。
まさに、BMWのエンジンの良さを味わえるし、サスペンションのチューニングレベルもこれまでのトヨタ車にはない格段の進歩がうかがえる。
そして2Lターボ、250psの「SZ-R」は装備類がRZに準じた仕様ながら、その走りはフロントの回頭性の軽さもあって、RZ以上に楽しさが味わえる。
ベーシックモデルとなる「SZ」は、190psというパワーの割には、すこぶる元気に走るし、スープラの入門用としてはいいと思うし、少しずつカスタマイズしていくユーザーに向いているかもしれない。
この価格体系の100万円ずつ開いているのは絶妙で、「SZ」の490万円は決して安くはないのだけれど、あと100万円出せるのなら「SZ-R」の方が断然いいし、もう100万円出せるのなら「RZ」の方がさらにいい。
どうにも悩ましい価格ながら、世界のライバル車から考えれば、それでも相当安くできている。BMW Z4はもちろん、ポルシェケイマン、ボクスターよりも当然安い。オーストリアのシュタイアープフ社で生産し、輸入ながらこの価格だ。
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