2019年5月17日、ついに新型スープラが正式に発表された。同モデルは1978年登場の日本名「セリカXX(ダブルエックス)」から数えて、通算5代目のモデルとなる。
そこで、リアルタイムでスープラを見続け、この新型のスクープ情報も掴んできた「ベストカー」元編集局長の筆者が、歴代モデルとの対比も含めて、新型スープラに乗り、その素顔を追った。
果たして、新型は登場までの経緯も含めて“予想通りの車”だったのか。
文:宇井弘明(『ベストカー』元編集局長)
写真:茂呂幸正、ベストカー編集部
デビュー前にスクープ!? 歴代スープラとの強烈な思い出
今回の試乗会で新しいスープラを見た時、ようやく出会えたと思った。思えば「スープラ」とは因縁と言っていいほど深いつながりがあるように感じている。私が「ベストカー」に入る一つのきっかけになったと言っていいかもしれない。
今だから言えるが、忘れもしない1985年3月。私はドイツのケルンにいた。ケルン大学に留学していた友人を訪ね、その友人とアウトバーンを走っていた。
120km/hあたりで流していると後方からシルバーの見慣れないスポーツカーが追い抜いていった。それが70スープラだった。
当時、マツダRX−7の新型が近かったこともあり、日本車であることは間違いないものの、撮影した写真を現像して浮かび上がった画像が新型RX−7なのか、スープラ(当時はセリカXXだと思っていた)なのかは当然わからなかった。
4月に日本に帰り、ベストカーの当時の局長から、強く入社を勧められたのを機に訪問し、この一件を報告したところ、強引とも言えるほどの勢いで、入社が決まったという経緯があった。入社後に、それが新型XX(=70スープラ)だと判明し、誌面を飾ったのはご想像のとおりだ。
(編集部注:日本市場において「XX」がセリカから独立し、それまで海外市場で使われていた「スープラ」という車名で統一されたのは1986年2月)
それから9年後の1993年、スープラは80系に進化した。バブル末期に登場した80スープラは米国ロサンゼルスで試乗会が行われ、ベストカー編集長になった私は、徳大寺有恒さんと参加した。
これも強烈な思い出で、70、80と2代にわたってスープラは私の脳裏に深く刻み込まれることになった。
“予想通り”だった新型スープラの登場と“意外な”素顔
そして、新型の90スープラ。正式名GRスープラとなるが、おそらくこのモデルもトヨタ関係者以外では、けっこう早くからその存在を含め、デザイン、成り立ちまで知っていただけに、冒頭の「ようやく」という表現になるのだ。
すでに新型スープラに関しては2年以上前に正確なデザインを始め、1年前にはエンジンスペックなど基本的な情報は掴んでいた。
例えば、全グレードBMWのエンジンを使いMTの設定がないこと、次期Z4とプラットフォームを共用することなどもわかっていた。
長い間ベストカーの使命として追いかけていただけに、こうして出てきた新型スープラに期待もしてきたし、実際にこれまで頭に描いてきた予想とがどこまで正確だったのかをぜひ知りたいと願っていた。
試乗開始直後に、86で名を馳せ、このスープラの開発責任者で、よく知っているチーフエンジニアの多田哲哉氏と話したのだけれど、イメージとしては、BMWが開発した新型Z4用のシャシーの上に、トヨタがデザインしたボディをポン付けした感じでしょ、と言ったところ多田さんが怒った。
「それをみんな誤解しているんですよ。車の基本性能を決めるホイールベースとトレッド比から始まって、BMWと喧々諤々やりあっていろいろ決めていった。基本骨格が決まってからは2つのチームで別々に開発していったんです。
向こうはオープン、こっちはクーペという棲み分けもでき、協業により本当にお互い勉強させてもらってようやくできたということです」
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