■まるでロケットのような加速!
さすがに濡れた朝の走行はタイヤも冷えているし、マシンへの慣れもないので、ビビリながら慎重に走った。それでも、ついオーバー1000馬力を試したくてスロットルを床まで踏み込む。
するとドライバーの背中から800馬力のV8ターボが目を覚ます。強烈な加速Gが発生し、背中をグイグイと押される。まるでロケットにまたがったような気分だった(またがったことはないが)。
路面温度が上昇しタイヤのグリップ力(ステアリングで感じる接地感)も高まってきた。
午後のセッションはホットラップ。ここでは走行データを取得し、プロドライバーとの違いをクリニックしてくれる。先導車をカーチェイスする形でホットラップが始まった。1030馬力を使いこなすには、ブレーキが重要だ。
助かったのはABS“EVO”と呼ばれる進化したABS。カーボンコンポジットのブレンボブレーキの利きは強烈だが、問題は車体がどこまで安定しているのか。
テストデイのように半乾きの路面では左右のタイヤは異なる路面状況に接地しているので、マシンの安定性が気になる。
しかし、ダウンフォースと進化したブレーキシステムのおかげで、やばいシーンはなかった。
■猛烈なスタビリティを支える空力はF1譲り
F1で鍛えた空力は惜しみなく採用され、近年のフェラーリとしては珍しい大型リアウイングが備わっている。
その結果、250km/hで530kgという強烈なダウンフォースを発生する。タイヤが温まったことを確認してから、コーナーを攻めた。
時速200kmで進入するコーナーではステアリングがずっしりと重くなり、タイヤが路面としっかりコンタクトしているのが感じられた。
だが100km/hくらいではダウンフォースが減るのでステアリングがやや軽くなるが、挙動は電子制御が見守っている。
走行モードは「RACE」にセットし、ステアリングホイールの左にあるeマネッティーノ・セレクターは「エクストラ・モーターブーストモード」を試す。他にはハイブリッドモードやEVモードもある。
ブーストモードはタイトコーナーの立ち上がりは効果的だった。理論的にはモータートルクが加速をアシストしているが、体感する加速Gのどの加速がモーターなのかは判別できない。ただデータ分析では確実に立ち上がりのスピードが増していた。
■「ただ速いだけ」でない実力
SF90XX Stradaleは荒馬かと思っていたのだが、テクノロジーによって史上最速のサラブレットに生まれ変わっていたことが確認できた。
最後にフェラーリが目指すスポーツカーは、無味乾燥なただ速いだけのマシンではなく、ドライバーが感動できるパッション(情熱)クリエイターなのだと思った。
フェラーリ SF90XX Stradale 主要諸元
・全長×全幅×全高:4850×2000×1225mm
・ホイールベース:2650mm
・乾燥重量:1560kg
・エンジン総排気量:3990cc
・最高出力:586kW(797cv)/7900rpm
・最大トルク:804Nm/6250rpm
・モーター最高出力:171kW(233cv)
・バッテリー容量:7.9kWh
・EV航続距離:25km
・タイヤサイズ(F):255/35 ZR F20 (R):315/30 ZR F20
・価格:77万ユーロ(約1億2600万円)※完売済
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