■LCAで考えたエクリプスクロスPHEVのメリット
今回試乗したエクリプスクロスPHEVを例にとって、そのメリットを列記してみよう。
(1)57.3km(WLTCモード)と実用充分なEV航続距離がある。将来日本でも再エネ電力が増えてくれば充電時のCO2排出量が減るし、ユーザーの平均走行距離が少ない日本ではその大半をEV走行でまかなうことも可能。EVモードで走っている限り、LCAで計算するCO2排出量は純EVと変わらない。
(2)搭載するリチウムイオン電池は13.8kWhで、これは平均的なEVの4分の1程度の容量。製造時に大量のCO2を排出する電池搭載量をなるべく減らしたいというLCAのニーズにマッチしている。
(3)ロングドライブ時の航続距離はガソリンエンジンによって確保されているので実用上の不便/不安がない。また、熱効率の高いエンジンとハイブリッド技術によって、WLTCモード16.4km/Lの燃費を達成している。
欧州環境機関発行のLCA検討基準をベースに、EU、日本、タイ、インドネシアの各国でCセグSUVのLCAを試算した結果が興味深い。
CO2フリー電源に力を入れるEU圏では2030年あたりからEVの優位性がハッキリしてくるが、日本とタイでは2040年でもPHEVが優勢。インドネシアではなんと2035年時点でもエンジン車のほうがトータルではCO2排出量が少なく、2040年になってようやくPHEVがベストソリューションになるという計算結果が出ている。
この試算が絶対的なものと言うつもりはないが、LCAで見たCO2排出量が地域によって大きく異なるのはまぎれもない事実。
大手メディアのニュースソースは欧米主体だから、「これからはEVの時代」という報道ばかりが目につくが、世界はそんなに単純な原理で動いていないという点はしっかり認識しておくべきだと思う。
いかがだろう。もちろん、EVにはEVならではのメリットがあるだろうし、年間5000kmも走らないようなライトユーザーなら、車重が軽く(車体部分の製造時CO2排出量が少ない)コストの安い軽で充分という考え方もある。
しかし、同じセグメントの似たような車種で、EV、PHEV、HV、ICE(内燃機関)のLCAトータルCO2排出量を比べると、PHEVはなかなかバランスよく高得点を稼いでいるのが知られざる事実なのだ。
いずれにせよ、クルマの電動化はどうやって電気を作るかという問題とセットで考える必要があり、国家単位でエネルギー政策を考えないとEVはそのポテンシャルを効果的に活用できない。CO2問題は、内燃機関をEVに置き換えればいいという単純な二元論に矮小化してはいけないと思う。
さらに言えば、日本は2011年の東日本大震災で一時すべての原発が停止するなど、エネルギー問題でさまざまな試練を経ている。こうした災害時の経験をもとに、非常用電源として電動車を活用する試みが自治体や公共機関のネットワークを通じて広がっているが、ここでもPHEVの特性を活かした利用法が注目されている。




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