Bremboはハイパフォーマンスブレーキシステムだけではない!! ブレンボが目指す近未来【PR】

Bremboはハイパフォーマンスブレーキシステムだけではない!!  ブレンボが目指す近未来

 Brembo社がフェラーリやポルシェ、ベンツなどの世界に冠たるハイパフォーマンスプレミアムカーの純正装着ブレーキとして採用されていることは、クルマ好きのベストカーWEB読者の皆さまであれば「何をいまさら!」の話だろう。もちろん、F1やMotoGPをはじめとするトップカテゴリーのモータースポーツシーンでも絶大な信頼を確立しているのは、高い技術力とともに、ブレーキシステムには欠くべからぬ信頼性を勝ち得ているからに他ならない。

 また、Bremboはこうしたプレミアムカーだけではなく、小型商用車と大型車などのブレーキシステムとしても高い評価を得ていて、イタリアのトラックメーカーIVECOにも納入している。

 こうしたBremboの歴史と現在は前編でお伝えした通りだ。

 さて、Bremboは新たなモビリティ時代を迎える現在、近未来に向けた新たな技術革新を背景に次のステップへと足を進めようとしている。そんなBremboの今、近未来を鈴木直也氏が深掘りする!!

文/鈴木直也、写真/ブレンボジャパン、ベストカー編集部

ブレーキの電子制御化はハイブリッド時代とともに急速に進化

 創業以来60余年、研究開発から設計、製造、組み立てから実走テストに至るまでのすべてを自社内で管理することで実績と信頼を高め、高性能ブレーキシステムで圧倒的な実績を築いたブレンボ。今、次世代に向けた大きなテーマとして取り組んでいるのが“SENSIFY”(センシィファイ)と呼ぶ完全電子制御ブレーキの開発だ。

R35 GT-Rのブレーキシステムにもブレンボのキャリパー、ディスクが採用されている。ブレンボはハイパフォーマンスブレーキシステムの代名詞的存在だ
R35 GT-Rのブレーキシステムにもブレンボのキャリパー、ディスクが採用されている。ブレンボはハイパフォーマンスブレーキシステムの代名詞的存在だ

 コンピュータがクルマに初めて搭載されたのは1970年代のこと。複雑化するエンジン制御を解決する切り札として、電子制御燃料噴射システムが開発されたのが最初の一歩だった。

 以降、いわゆる“電子制御”の領域はどんどん拡大していく。ブレーキに関しても、アンチロックブレーキ(ABS)やスタビリティマネジメントシステム(ESP)など、電子制御なしには成り立たなくなって久しい。

 ただし、このあたりまでは電子制御と言ってもベースになるのは従来どおりの油圧ブレーキ。ドライバーがブレーキペダルを踏むことで発生する油圧がブレーキパッドを押すという原理はそのまま、必要に応じて電子制御で油圧を増減させることで、ブレーキのロックやクルマの横滑りを防止するというロジックだった。

 そこから一歩踏み出したのが、トヨタがプリウスで先鞭をつけた完全電子制御ブレーキだ。

1997年に登場した初代プリウス。回生ブレーキと物理的摩擦ブレーキの協調制御を実現するため、電子制御ブレーキを採用した
1997年に登場した初代プリウス。回生ブレーキと物理的摩擦ブレーキの協調制御を実現するため、電子制御ブレーキを採用した

 ハイブリッド車は燃費が最重要課題。そのためにはエネルギー回生効率アップがカギで、減速エネルギーをなるべく発電に使いたいという事情がある。強い減速が必要な時などはもちろん別だが、それ以外の時はなるべく回生減速ですませてブレーキは使いたくないわけだ。

 そんな複雑な制御を実現するには、ブレーキペダルと油圧ラインの関係を切り離すしかない。つまり、発電機に負荷をかけて回生ブレーキを使うのか、油圧でブレーキパッドを押すのか、状況に応じてコンピュータに制御させるということ。これが、完全電子制御ブレーキ(いわゆる、ブレーキ・バイ・ワイヤー)が生まれた理由だった。

 その後も電子制御ブレーキが普及するにしたがって、技術的な流れが大きく変わってゆく。

 システムの簡略化に先鞭をつけたのは、ボッシュをはじめとするドイツ系のサプライヤーだ。“オンデマンド式”と言われるその電子制御ブレーキは、従来の油圧システムはそのままに、マスターシリンダーを人間の足ではなく電気モーターで押すというシンプルな構造。ハイブリッド車以外にも採用されてシェアを伸ばしている。現在、これが一般的な電子制御ブレーキシステムだ。

 さて、ちょっと前置きが長くなってしまったが、ここまでが“センシファイ”が登場するまでの電子制御ブレーキ進化の流れだ。

ブレーキハードだけではなく、システム全体をマネージメント。止めるだけでなく、クルマの動きを制御する

 こういう状況の中で、高品質ブレーキのサプライヤーとして確固たる定評があるブレンボが電子制御ブレーキ市場に乗り出すわけだから、その理由はひとつしかない。すなわち、電子制御ブレーキのさらなる高性能化と機能の拡張だ。キャリパーやディスクローターといったブレーキハードだけではなく、ブレーキシステム全体を一括して開発、管理することでさらに次元の高いブレーキ性能を発揮することができる。各輪独立して緻密な制動力制御を可能とすることで、より高度な車両姿勢制御が実現可能だ。そのハードとソフトを一括して提供する、ということをブレンボは目指している。

ブレンボが次世代のブレーキシステムとして開発を進めるSENSIFY(センシィファイ)。ハードのみならず制御ソフトまでを含めたシステムとして新たな提案をする
ブレンボが次世代のブレーキシステムとして開発を進めるSENSIFY(センシィファイ)。ハードのみならず制御ソフトまでを含めたシステムとして新たな提案をする

 そのためのキーテクノロジーとして、“センシファイ”には「なるべくブレーキ本体に近いところで制御する」という開発哲学があるように見える。

 在来型の油圧システムにせよ電子制御にせよ、これまでのブレーキはすべて車体側——ブレーキペダルと直結するマスターシリンダーで制御されていた。ブレーキがパッドを押すパワーは、そこから油圧配管を通って各輪に伝達されていた。

センシィファイのシステムを模式化したもの。前輪は大型の対向ピストンキャリパーで「ウェットシステム」、後輪はキャリパーの動作をブラシレスモーターで行う「ドライシステム」
センシィファイのシステムを模式化したもの。前輪は大型の対向ピストンキャリパーで「ウェットシステム」、後輪はキャリパーの動作をブラシレスモーターで行う「ドライシステム」

 対して、“センシファイ”の特徴は各輪のブレーキに制御システムが分散されていること。もちろん、どのくらいの減速力が必要なのか決めるのはドライバーだが、その指令は油圧ラインではなく電気信号として各ブレーキキャリパーに送られる。これによって、タイムラグなく、しかも各輪が完全に独立してブレーキを作動させることが可能となる。

 “センシファイ”には社内的にドライシステムとウェットシステムと呼ぶ2種類のモデルがあるのだが、その開発哲学を一目瞭然で理解しやすいのは、ドライシステムの方だろう。

ドライシステムのキャリパー。黒い筒状の部分にDCブラシレスモーターが内蔵されている。キャリパーに油圧系統はいっさい来ていない
ドライシステムのキャリパー。黒い筒状の部分にDCブラシレスモーターが内蔵されている。キャリパーに油圧系統はいっさい来ていない

 このシステム、どこがドライなのかといえば、これまでブレーキに不可欠だった油圧ラインがいっさい存在しないという点だ。ブレーキパッドを押すのはキャリパーに内蔵されたDCブラシレスモーターなのである。

 構造がシンプルで制御の応答性にも優れるという意味で、電気モーターをブレーキに使うというアイディアは理論的には極めて妥当なのだが、素人目に心配になるのは「信頼性や耐久性は?」という問題。また、故障時のフェイルセーフはどうなってるのかという懸念もある。

 このへんこそが、まさにブレンボの技術力が発揮される領域なのだが、モーターそのものの性能および信頼性をはじめ、キャリパーとのフィッティングや断熱構造の工夫、制御システムのクロス化によるフェイルセーフの組み込みなど、まさにノウハウの塊と言っていい。

 電動パーキングブレーキはいまや珍しくもない装備で、モーターでブレーキを作動させることに技術的な障壁はほぼないとは言えるのだが、クルマ全体でブレーキを電動化しようとすると、技術的なハードルの高さは電動パーキングブレーキとはケタ違い。そのハードルを乗り越えたという意味で、高性能ブレーキ専業60余年の歴史は伊達ではないというべきだろう。

 さて、技術的に高いハードルを乗り越えた先には、“センシファイ”がもたらすさまざまなメリットがある。

 まず大きいのは、ブレーキ制御のソフトウェアを統合できるということだろう。

 現代のクルマでは、車輪ロック防止のABSをはじめ、横滑り防止のESP、悪路走破時のブレーキLSDなど、さまざまな制御システムがブレーキに介入してくる。また、前述したとおりクルマの電動化によっていまや回生協調ブレーキも不可欠な装備だ。つまり、これまで建て増し建て増しで来たブレーキシステムに、拡張性の高い洗練された統合システムが求められているわけだ。

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