今と比べれば絶対的性能こそ劣るものの、クルマ好きを熱くさせたスポーツ車が1990年代には多かった。
そんなクルマたちに今、実際に乗って、その魅力を探ろうという本企画。鈴木直也&片岡英明両氏が、ホンダ・日産の90’sスポーツたちのステアリングを握る。
文:鈴木直也、片岡英明/写真:平野学
ベストカー2016年2月10日号
S660 VS ビートで実感“バイクから自転車に乗り替えたかのよう”
2015年登場モデルとしてND型ロードスターとスポーツカー人気を二分したS660。
オープンでしかもミドシップの軽スポーツが21世紀に復活するなんて、ホンダファンならずとも感涙にむせんだわけであります。
そこで思い出すのがS660のご先祖様であるビート。もう四半世紀も前のクルマだけど、あの頃はバブル真っ盛り。AZ-1、カプチーノと3台そろい踏みで、よく比較テストなんかやったもんです。
あれから25年、クルマのハードウェアが大きく進化したのは間違いないが、走りの楽しさはじつは大して変わってないのでは? 今回改めてビートに乗って、ぼくは新鮮な驚きを感じました。
S660は、現代においては「走る機能以外は潔いほどにすっぱり削ぎ落としたピュアスポーツ」と評価されてるわけです。
シャシーは軽とは思えない贅沢な作りで、ハンドリングもリアルスポーツカーというに相応しい本格派。ぼくの記憶の中にあったビートとは「格が違う」というイメージでした。
ところが、S660からビートに乗り換えてビックリ。まるでバイクから自転車に乗り換えたかのように、すべてが軽くダイレクト。
スピードは出ないけど、スポーツカーとしての面白さではぜんぜん負けていないんだな、これが。
まず大きいのは、ビートのステアリングがノンパワステということ。現代人には車庫入れがちょっと辛いけど、いったん走り出したらそのダイレクト感に「やっぱノンパワステはええなぁ」と魅了されること必至。
全長で100mm、全幅で80mm小さなボディと相まって、ものすごくすばしっこい運動性を演出している。
ちなみに、車重もビートが100kgほど軽い。動力性能はエンジンでカバーできるけど、絶対的な“質量”の差はどうやってもゼロにはならない。
いまや衝突安全やらなんやらで小さく軽いクルマが生きづらい時代だが、やっぱり軽さとコンパクトさにこそ、スポーツカーの魅力のタネが詰まってるって感じなのだ。
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