■そして「共感できないところ」は、ズバリ「コンセプト」
一方、共感できないのはシビックのコンセプトと日本に導入した経緯だ。
新型シビックの開発段階で、日本国内で売ることは想定していなかった。
それが海外需要と供給の関係でセダンを埼玉県にある寄居完成車工場で製造することになり、「ならば日本でも売るか」と話がまとまった。セダンだけでは弱いため、ハッチバックもイギリスから輸入する。
従ってシビックセダンを寄居完成車工場で製造する話がなければ、シビックは国内で復活しなかった。これでは「シビックは日本を見捨てて海外専売車になったのに、今さら成り行き的に戻ってこられても困る」という批判が生じて当然だ。
ボディサイズはセダンの全長が4650mm、5ドアハッチバックは4520mm、全幅は両ボディともに1800mmと幅広い。価格はセダンが265万320円、5ドアハッチバックは280万440円、タイプRは450万360円に達する。
「日本のシビック」を真剣に検討した結果、このサイズと価格に落ち着いたなら相応の説得力が生じるだろう。しかし実際には北米など海外の事情に基づくから、デザインから取りまわし性まで日本の共感は得られない。
緊急自動ブレーキを作動できるホンダセンシングも大問題を抱える。コンパクトカーのフィット、軽自動車の次期N-BOXなどが採用する歩行者事故低減ステアリングと、誤発進抑制機能が装着されないことだ。
歩行者事故低減ステアリングは、路側帯を歩く歩行者と衝突する危険が生じた時、警報を発して回避操作がしやすいようにハンドル操作の支援を行う。誤発進抑制機能では、障害物に向けてアクセルペダルを深く踏み込んだ時、誤操作と判断してエンジン出力を絞る。
この2つは日本の道路環境、事故形態を考えてホンダセンシングに与えられた優れた機能だが、シビックは省いてしまった。つまり日本のユーザーや歩行者を守るためのホンダセンシングとはいえない。またタイプRにはホンダセンシングそのものが採用されない。
■よりによって、なぜこの時期に発売するのか
発売時期もダメだ。2017年6月29日にフィットのマイナーチェンジ、8月31日にはN-BOXのフルモデルチェンジ、9月下旬にはステップワゴンのマイナーチェンジとハイブリッドの追加が行われる。
それなのに新型シビックの発表は7月27日、納車を伴う発売は9月29日だから、売れ筋車種が次々に刷新されて販売現場が多忙をきわめる時に、新型シビックが登場する。これでは埋もれて当たり前だ。
新型シビックを投入するなら、新型車が登場しない平穏な時期を選ぶ。そして嘘でも良いから「なぜ今になってシビックを日本で復活させるのか」という日本のユーザーが納得できる理由を明確に発信する。
かつて日本で生産されていた頃のシビックに親しんだ世代が「なるほど!それならディーラーに行ってみようか」と思わせねばならない。こんな当たり前の気配りすら、今のホンダにはできないようだ。
■多くの人の思い出が詰まった車名だからこそ
コンパクトで運転の楽しかった往年のシビックを愛した人達は今でも大勢いる。シビックと一緒に過ごした思い出を、今でも胸の中に大切に秘めている。ホンダはその人達の気持ちを考えているのか。
どうかホンダには、思い出の詰まったシビックを成り行き任せで軽く扱わないでいただきたい。「往年のシビックユーザーを舐めるな!」と私はいいたい。
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