■鈴木直也のトヨタ RAV4 PHV 試乗評
(TEXT/鈴木直也)
RAV4に追加されたPHVモデルはこれまでのトヨタハイブリッド車の常識をひっくり返す存在といっていい。
初代プリウス以來、トヨタハイブリッドシステム(THS)は一貫してエネルギー効率を高めることがテーマ。結果として、圧倒的な燃費性能が世界中で高く評価されてきた。
その一方「THSは燃費はいいけど面白くないよね」という声があったのも事実。エンジン出力と発電機負荷をバランスさせる原理上、単純にパワフルなエンジンを積むわけにもいかず、これまでボクも「ここはTHSの苦手な分野」と評価してきた。
ところがRAV4 PHVは電動パワー部分を思いっ切り強化することで、その制約を突破してきた!
スペック面でRAV4ハイブリッドとPHVを比較すると、エンジン部分は177ps/22.3kgmでほぼ同じだが、フロントモーターが120psから182psへパワーアップ。リアモーターは54psで同じながら、システム最高出力は222psから306psへと強化されている。
これは、モーターのみならず、18.1kWhの大容量リチウムイオン電池と、そこから大電流を引き出す強化型パワコンユニットの合わせ技。これまで効率一辺倒だったTHSのシステムを、パフォーマンス方向へ振るとこうなるという、新たなロールモデルとなっている。
そのRAV4 PHVを試す舞台は袖ヶ浦フォレストレースウェイ。なるべく自制心を働かせて全開アタック以外の日常走行も試してみた。
パワースイッチをオンしてシステムを起動させると、基本的に最初はEVモードで立ち上がる。EVのみでも出力は236psもあるから、軽快にピットレーンからコースに滑り出る。
そんなに踏んだつもりはないんだけど、ここでぼくも同乗の編集ウメちゃんも揃って「オッ!」と声が出たね。
アクセル開度の小さいところから、グイッとトルキーに発進するその加速感は、まさにイマドキのEVそのもの。
車重は1900kgのヘビー級ながら、ズンとパンチの効いた初期加速の鋭さは60kWhリーフやテスラモデル3あたりにも引けを取らない印象だ。
スタッフが電池を満充電にしておいてくれたおかげで、最初の1周はほぼEVモードのみで周回。さすがに、100km/hくらいになると余剰トルク感はあんまりなくなるものの、静かでスムーズなEV走行が堪能できる。
カタログ値EV航続距離95kmで実力がその7掛けくらいだったとしても、日常の用足しはすべてEVでこなせそうだ。
2周目はいよいよハイブリッドモードに切り替えて全開走行を試す。
EVモードでは床まで踏まないとエンジンは始動しないが、このモードでは従来のトヨタハイブリッドと同じ感覚。踏めばエンジン+モーター、戻せば臨機応変にエンジンを停めて回生充電する。
本気で走るとこのRAV4 PHV、そうとうに速い!
サーキット走行でキモになるのは、いうまでもなくコーナーからの立ち上がりだが、モーターが低速トルクをアシストするうえに、4WDの優れたトラクションがあいまって、どこから踏んでもグイグイいくイメージ。
システムトータル出力306psは伊達じゃない。
ただし、サーキットをガンガン攻めると、物足りなくなるのがタイヤとブレーキのキャパシティ。パワフルなうえに車重が重いから、そのしわ寄せが全部タイヤにかかってくる感じで、減速時や高速コーナーではけっこうズルズルくる。
ここだけはオプションでもいいからパフォーマンスパッケージみたいなセットを用意して、より高性能なタイヤとブレーキを選べるようにしてほしいと思った。
実際、欧州プレミアムのスポーツバージョンは、そういったオプションでけっこうな金額を稼いでるわけだし。
それにしても、これほどまでにパワフルでスポーティなトヨタハイブリッドは初めて。
まもなく誕生から25年を迎えるTHSだけど、そのポテンシャルにはまだまだ伸び代があるのにビックリの試乗でした。
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