2020年11月6日、ホンダは、上級ミニバン「ODYSSSEY(オデッセイ)」をマイナーモデルチェンジし、同日より発売開始した。
主な変更点は、エクステリアデザインの刷新のほか、インテリアの質感向上、コンビメーターパネル内の高精細フルカラー液晶パネルの大型化、そして、ジェスチャーによって操作ができるパワースライドドアや予約ロックの採用による使い勝手の向上など、だ。
こうして書くと、よくあるマイナーチェンジの内容にみえるが、その中身は想像を超えていた。詳細を見ていこう。
文/吉川賢一、写真:HONDA、奥隅圭之
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マイチェンで再起なるか!?
5代目である現行型がデビューしたのは2013年11月のこと。すでに7年が経過したモデルだ。
歴代オデッセイは、「低床ミニバン」を技術キーワードに、「家族のみんなが使いやすいクルマ」を目指し、時代に合わせてその姿を変え、ユーザーの支持を得てきた、7~8人乗りのミニバンだ。
なかでも、初代オデッセイの人気は凄まじく、発売翌年の1995年には、登録車販売台数ランキングで4位にランクインするほどの人気ぶりで、当時はエスティマよりも人気があった。
しかしいまは、背高ミニバンやSUVが全盛の時代。オデッセイのような比較的背の低いミニバンは、いまや風前の灯火だ。
このカテゴリの雄であったトヨタエスティマも、2019年12月をもって生産終了、ラージミニバンのアルファードにその座を奪われている。
背が低いミニバンといえば、日産エルグランドも忘れてはならない。エルグランドは、アルファードに市場を奪われてから、「背高」に対抗するかのように低床化。
今回、奇しくも、同じ運命をたどっているオデッセイと同じタイミング(2020年10月)で、マイナーチェンジとなり、エルグランドは、アルファードを刺し返さんとばかりに、ド派手フェイスに生まれ変わっている。
今回の改良型オデッセイは、マイナーチェンジ前後で基本構成の変更はない。
2Lガソリン+2モーターハイブリッドのe:HEVと、2.4Lガソリンエンジンを備えた7/8人乗りの3列シートミニバンで、FFもしくは4WD(2.4Lのみ)となる。
WLTC燃費はe:HEVは20.2km/h(e:HEV ABSOLUTE 7人乗り)、2.4Lガソリンは12.8km/h(ABSOLUTE FF 7人乗り)。ボディカラーは全5色、新色としてオブシダンブルー・パールが加わった。
本気で変えてきたエクステリアデザイン
エクステリアの変更内容からは、今回の改良型オデッセイに賭ける、ホンダの意気込みがうかがえる。
フード前端のプレスラインを持ち上げ、さらにはフロントフェンダーにも手を加えている。樹脂部品のバンパーやヘッドライトとは違い、プレス成型品となると途端にコストがかかる。オデッセイの起死回生を願う、ホンダの熱い思いを垣間見た気がした。
これにより、改良型オデッセイは、風格あるスタイリングはそのままに、厚みのあるフードと大型グリル、そして薄型のヘッドライトによって、力強いフェイスとなった。
ヘッドライト周りやブラック基調のグリルは、同社のインサイトやステップワゴンに似た雰囲気だ。
リア周りも、リアコンビライト変更と合わせ、バックドアの形状が変更された。メッキ加飾も施され、シャープなスタイルとなっている。
クルマの内側から外側へと流れるシーケンシャルターンシグナルランプを前後のウィンカーに採用。他にもパワーテールゲートを今回より採用した。
大幅な変更が加えられたものの、改良型オデッセイのデザインは、オデッセイ本来の独自性がキープされた。
ホンダ開発担当者に聞いたところ、某社の背高ラージミニバンの方向性は目指さなかったそうだ。どこかで見たような、「メッキ多用の鉄仮面」にならなくて、本当によかったと思う。
インテリアも正常進化、お客様の声を取り入れた改良がいたるところへ!
インテリアでは、インパネの加飾パネルの変更に加え、メーター内の液晶モニタのサイズが3.5インチから7インチへと変更された。
また、「収納がもっと欲しい」といったユーザーの声に応えるため、格納式ドリンクホルダーを運転席側に、リッド付きのインパネボックスを助手席側へと追加された。
手を伸ばしたところにある車内収納は、いくらあっても困らないものだ。いかにうまく隠せるかは、メーカー技術者の腕の見せ所であるが、改良型オデッセイでは、見事なまでに自然に溶け込んでいた。
また、純正アクセサリとして、ナビゲーションシステムにはこれまでの最大9インチサイズから、10インチの大型液晶モニタに変更した(税込27万5000円+取付アタッチメント税込4400円)。
後席用の11.6インチモニタ(税込9万3500円+取付アタッチメント1万3200円)や、オデッセイ専用の音響チューニングがなされたハイグレードスピーカーシステム(税込4万5100円)も設定されており、車内のエンターテイメントも、ぬかりは一切ない。
唯一、気になったのは、エアコンのコントロールパッドだ。操作しづらい低い位置にあることに加え、静電パッドによるスイッチなのだ。
静電パッドは、凹凸がなくすっきりするため、デザイン的に採用したくなるのはわかるのだが、エアコンのような、運転中に操作する可能性が高い機能のスイッチは、運転中でも手探りで操作ができる物理的なスイッチであるべき。
物理スイッチを外したいのであれば、音声操作可能にするか、動作時にクリック感を伴うタイプにする、などの工夫が必要だ。この点は、改良してほしい、ポイントだ。
ジェスチャー操作バックドア開閉はホンダらしい「遊び心」!!
後席スライドドアは、ジェスチャー操作で開閉が可能な「ジェスチャーコントロール・パワースライドドア」が、なんと標準装備となる。
スライドドアのウィンドウガラス下側に付いたセンサー部のブルーLED手を近づけ、ライトの流れに沿って手をスライドすると、ドアの開閉が可能だ。開閉途中でタッチすればストップもできる。
最初は、「フットセンサーやタッチスイッチでもよくないか!?」と思ったが、実際に動作を見ると、実に面白く、そして動作条件もよく考えられている。
手袋をしていてもOK、両手が塞がっていても肘で動作可能という。「他メーカーではやっていない」装備を、遊び心として入れる、ホンダのチャレンジングスピリットは実に好ましい。
オデッセイの「素のよさ」を体感してほしい!
ホンダの開発担当者によると、マイナーチェンジによって改良した部分も大切だが、オデッセイがもともと持っていた「素の良さ」を再認識していただきたい、というのが、今回の改良型オデッセイのポイントだという。
運転のしやすさ、ドラポジの取りやすさ、前・後席シートの座り心地、走りの気持ちよさ、そしてホンダセンシングの質の高さなど、従来型から評判のいい部分はそのままに、クルマを一層熟成させた、と話してくれた。
また、オデッセイの他社車に対する強みは「走りの楽しさ」と力強く語ってくれた。オデッセイに限らず、ホンダ開発陣の走りへのこだわりは強く、他社メーカーには絶対に負けたくないところだそうだ。その辺りは、今後公道試乗の際に確かめたいと思う。
改良型オデッセイの希望小売価格は、e:HEVが419万8000~458万0000円、2.4Lガソリンは349万5000円~392万9400円。