2020年11月24日、日産はフルモデルチェンジしたコンパクトカー「ノート」を先行公開し、12月23日に発売予定であることを発表した。
3代目となる新型ノートは、ホームマーケットである日本市場の再強化を行ううえで、絶対に失敗が許されない一台。
また、新しい日産ロゴを採用した初めての市販車でもあり、「新生・日産」を代表するクルマでもある。
「コンパクトカーの常識を変える、先進コンパクト」と銘打ってデビューする、新型ノートの詳細を見ていこう。
文/吉川賢一、写真/日産、奥隅圭之
【画像ギャラリー】ついに8年ぶりモデルチェンジ! 新型ノート 内外装全部見せます!!
広さ重視から激変! 新型ノートは「正統派コンパクト」で勝負
日産によると、新型ノートのコンセプトは、「コンパクトカーの常識を変える運転の快適さと、楽しさが詰まった、先進コンパクト」だという。
その中身は、先代ノートの資産(つまりはe-POWER)を最大限伸ばし、コンパクトの競争軸「便利・快適」で勝負に出ることだ。至極まっとうな戦略ではあるが、これで他社車に勝てなければ、先がないともいえる。
新型ノートの最大のポイントは、第2世代e-POWERの搭載だ。そこに新開発の次世代上級小型車向けプラットフォームを組み合わせ、さらには改良版プロパイロットを備え、クラスを超えた乗り心地を実現したという。
また、全長とホイールベースが、大幅に縮小された(全長は-55ミリ、ホイールベースは-20ミリ)。
その結果、15インチタイヤ、16インチタイヤのどちらでも、最小回転半径4.9m(先代ノートは5.2m)を実現した。ちなみに16インチタイヤで4.9mは、国産他社コンパクトカーでは実現できていない。
プチ・アリアな新型ノートのフェイス
デザインコンセプトは「アドバンスドコンパクト」だ。テーマ色となるビビッドブルーとスーパーブラックのツートーンカラー、シャープなヘッドライト、新形状のVモーショングリル、流麗なフロントバンパーと、なかなかスタイリッシュだ。
サイドは、リアのルーフラインをなだらかに下降させ、オーバーハングも縮めたことで、よりコンパクトな印象となっている。15インチ、16インチ用のホイールカバーもガンメタ塗装となるため、足元から引き締まった印象だ。
リア周りは、テールランプが左右連結したタイプに変更され、ブランドロゴではなく、アリアと同じように、「NISSAN」の文字が入るデザインとなった。全体的な雰囲気は、「プチ・アリア」だ。
弱点だったインテリアが最先端に進化
驚いたのがインテリアの進歩だ。インテリアが苦手な日産のクルマとは思えない仕上がりとなっており、このインテリアは、新型ノートの大きな魅力となるだろう。
メーターとナビゲーションを繋げた一体型バイザーレスディスプレイは、これまでの日産車の中で、もっとも先進的になった。
また、コンパクトな新しいシフトノブや、大型のコンソールボックス、それらの表面を覆う表皮素材も、非常に質感が高い。
電動パーキングブレーキが全車標準搭載になり、オートホールド機能が備わった点もポイントだ。キックスやスカイラインといった、日産製の上級車のクオリティを抜いているようにも感じる。それほど進化しているのだ。
新型e-POWERと新プラットフォーム搭載でプロパイロットも高性能化
ルノーと共用となる新型プラットフォームも、新型ノートの魅力だ。高強度・高剛性ボディ、高遮音パッケージング、高剛性サスペンションを実現した、というこの新型プラットフォーム、ボディ剛性にいたっては、なんと30%も向上したそうだ。
これらの効果を体感することは、今回はできなかったが、コンパクト化されたボディと、縮められたホイールベースの効果もあり、新型ノートは、ハンドリングも期待ができそうだ。
ノート、セレナ、キックスに搭載されたe-POWERまでを第1世代と呼び、今回の新型ノートに採用されるe-POWERから、第2世代e-POWERと呼ぶことになるそうだ。
第2世代e-POWERでは、1.2Lのエンジン排気量は維持し、小型化・軽量化を実現しながらも、モーター出力トルクを10%以上アップ(最大トルク254Nm→280Nm、最大出力は6%UPで80kW→85kW=116ps)し、発進加速シーンでは、旧e-POWERを凌ぐレスポンスを実現。WLTCモード燃費も29.5km/Lを達成する(同市街地モード29.9km/L、郊外32.6km/L、高速27.6km/L)。
また、アクセルペダルを急に戻した際に起きる減速Gをコントロールし、なめらかに減速するように変更。
高速走行時にはアクセル操作に対して、敏感に反応させないようにし、これまで弱かったクリープも強め、停止位置をコントロールしやすいよう制御を変更した。運転のしやすさが格段に上がったそうだ。
e-POWERのエンジン発電時の騒音を気にする方も多いだろう。
第2世代e-POWERでは、この騒音がなるべく気にならないようになるよう、路面状態と車速からロードノイズの大きさを判断、このロードノイズが大きいときにエンジン発電を行うことで、なめらかな路では発電頻度を減らす技術を盛り込んだという。
プロパイロットも機能が増えた。ナビ連携機能を追加し、カーブの大きさに応じて減速するカーブ減速支援や、高速道路上で前走車に追従して停車したあとの停止時間を3秒から30秒へと変更したことで、プロパイロットを入れ直すという操作頻度を、大幅に減らすことができた。
さらには、レーダー3個、カメラ5台、ソナー8台を駆使することで、360度セーフティを実現し、日産がいま、できる限りの安全性能確保をおりこんだ一台となったという。今後の公道試乗が楽しみだ。
e-POWER専売で価格は202万から!新型ノートは日産を救うか?
2020年5月に「電動化へ推進する」と宣言した日産、その言葉を守り、新型ノートのパワートレインはe-POWER専用となる。
当然、これまで需要のあったガソリンモデルに対し、コストアップが免れないことは、日産としても、重々検討したそうだが、会社の存亡をかけた賭けに打って出た、ということなのだろう。
グレード構成は、上級「X(218万6800円)」、ミドルクラス「F(205万4800円)」、エントリークラス「S(202万9500円)」の3グレードとなる。
現行型ノートe-POWERと、ほぼ同じ価格帯に抑えたが、現行型はガソリン車が約145万円から買えたことを考慮すると大幅な価格アップとなり、新型ノートを求めるすべてのユーザーに、この価格がマッチするのか、が、新型ノートの勝負どころだろう。
だが、価格以上にこのクルマの出来は良い。自信をもって戦える武器を用意した日産の逆襲が、非常に楽しみだ。