震災から10年…「復興の象徴」 新型アクアは販売日本一に返り咲けるか

震災から10年…「復興の象徴」 新型アクアは販売日本一に返り咲けるか

 2021年7月19日、トヨタの新型アクアが初のフルモデルチェンジを果たした。初代モデルは、かつて販売台数日本一に輝いたクルマだ。新型にも大きな注目が集まっている。

 しかし、現在コンパクトハイブリッドにはライバルが多く、身内のヤリスハイブリッド、日産のノートe-Power、ホンダのフィットe:HEVなど、強者が揃う状況である。

 果たして新型アクアは再び、販売日本一に返り咲けるのだろうか。元トヨタディーラー営業マンの筆者が、新型アクアの販売展望について解説していく。

文/佐々木亘
写真/TOYOTA

【画像ギャラリー】約9年半ぶりにフルモデルチェンジ!! トヨタ新型アクアの内外装をみる


初代アクアは東北復興のシンボルマーク

東日本大震災の東北復興のシンボルマークとして、初代アクアが発売された。発売から1カ月での受注は12万台を計上した(全長4050×全幅1695×全高1455mm/ホイールベース2550mm)

 初代アクアが登場したのは、2011年12月26日。東日本大震災が発生したこの年に、メイド・イン・東北を掲げて発表された。

 「東北復興の小さな光になってくれたらいい」と、生産工場である関東自動車工業(現在のトヨタ自動車東日本岩手工場)社長が話していたのを、宮城出身の筆者は今でも思い出す。

 アクアは、燃費性能世界一、そして東北復興のシンボルマークとして、メディアでも大きく取り上げられた。

 初代の発表から1カ月での受注は、月販目標台数1万2000台の10倍にあたる、12万台を計上する。このなかには、東北復興の一助にと、アクアを購入した人もいるのではないだろうか。

 新型の生産も、トヨタ自動車東日本岩手工場にておこなわれる。しかし、震災から10年の節目にと、2011年と同じように注文数が伸びる保証はどこにもない。

 アクアの代名詞であるハイブリッドも、ヤリス、ノート、フィットなど多数のクルマに搭載され、今やコンパクトカーでも当たり前の技術になった。アクアを取り巻く環境は、この10年間で大きく変わっている。

 新型アクアが、日本一の座に返り咲くためには、背景やブランドに奢ることなく、真っ向から実力で勝負して、ライバルに勝ち切る強さが求められるだろう。

新型アクアの予約受注は「情報の少なさ」がややネックに?

2021年7月19日、新型アクアが発表、同日発売された。約9年半ぶりのフルモデルチェンジとなる(全長4050×全幅1695×全高1485mm/ホイールベース2600mm)

 6月25日から始まっていたアクアの予約受注は、大きな盛り上がりを見せずに終了した。初代発表から10年が過ぎ、買い替えに動くアクアオーナーは一定数いたが、販売店が期待していた予約台数に達してはいない。

 これは「情報開示が少なく、売りにくかった」ことが、大きな原因となっている。

 予約開始時には明らかになると予想されていた内外装のデザインは、記者発表までベールに包まれたままで、メーカーから販売店へ向けた通達等でも、アクアのデザインは描写されなかった。

19日の記者会見の時に新型の内外装のデザインが判明した。予約受注開始時には、デザインがわからず、アクアというネームバリューで購入するユーザーはいたが、購入をしぶるほうが多かった

 実際にトヨタ販売店で営業スタッフに話を聞くと、こう語ってくれた。

「アクアという名前を信じて購入してくれる人はいますが、デザインがわからないため、多くはクルマを見てからか、カタログが届いてから検討すると言われています。注文数は、まだ想定の半分程度です。実際に注文が大きく動き出すのは、19日の記者発表後でしょう。22日からの4連休が勝負ですね」

 記者発表後は、現在のアクアオーナーへ提案を続けながら、無難な立ち上がりを決めたいところだ。同門のヤリスはもちろん、日産ではノートオーラが発表され、話題を集めている。

 アクアというネームバリューに任せ、販売自体が「待ち」の姿勢になってしまうと、販売施策が失敗する可能性は高い。トヨタ販売店が得意とする、提案主体の営業スタイルが、新型アクアでは特に重要となるはずだ。

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