BMWのデモンストレーションから分かった課題とは?
今回のデモンストレーションのシナリオは、「スマートフォンのアプリで呼び出された、人が乗っていないクルマが、そのオーナーを迎えにやってくる。
到着とともにスマートフォンによるアクセス認証をして、希望の出迎え地点まで車両を誘導する。
そして区切られた敷地内を一周して戻ってきて、乗員が下りた後には、クルマが自動的に駐車スペースに戻る」というものだった。誰しもが夢見た「自動運転」の姿に限りなく近いデモになるはずだった。
しかし、残念ながら、デモ試乗は豪雨のために中止となってしまった。担当したBMWエンジニアによると「豪雨の場合、システムが「ドライバー運転モード」にするようにと判断するため、狙いのデモンストレーションができない」というのが、デモ試乗中止の理由のようだ。
通常の雨程度では自動運転レベル4は問題ないという。集中豪雨とデモ時間がぶつかってしまったことは、この日のためにドイツから来日した開発担当エンジニア達にとっても不幸ではあったが、雨の時こそクルマに目の前まで来てほしいと考える多くの顧客にとっては、現時点、応えられるシステムではないということは分かった。レベル4実現にはまだまだ大きな課題があるようだ。
自動運転レベル4実現のための肝は「AI」
日産のプロパイロット2.0では、高速道路の大部分の区間を網羅する3D高精度地図データ、フロントのミリ波レーダー、3眼カメラ、4つのサイドレーダー、7つのカメラ、12個のソナーなど、360度のセンシングによって自車周辺を検知している。
またBMWのハンズ・オフ・アシストでは、中・長距離を監視する3眼カメラシステムがレーダーと互いに補完し合い、濃霧や豪雨などの悪天候時でも、前走車を検知するシステムを搭載した。
「レベル4」では、急な交通渋滞や、濃霧や豪雨、強風などの天候変化、そして雨の降っている夜であっても、クルマ側が実現可能と決めた条件内では、原則、クルマ側が何とかしなければならない。
そのため、従来のセンサーからの情報に加え、自車の周囲の環境を正確に把握する膨大なデータを瞬時に処理して、人間の代わりとなって正確な決断を下す「頭脳」が必要となる。
そのためBMWは、中国やアメリカなどの世界各地の公道で、データ収集を進めており、センサーで取得したデータを、1時間で8テラバイト処理できるBMWの自動運転キャンパスへ送り、AIによる「学習」を進めているという。その実験で鍛えられた「AI」が、ドライバーの感覚にどこまで迫ることができるのか、その点が、この「自動運転レベル4」の課題であろう。
まとめ/自動運転のライセンスが必要ではないか?
「レベル3」以上の自動運転システムを稼働中に起きた事故は、クルマ側が負うことになる、といわれている。
ただし、現時点で明確な法律が制定されているわけではなく、また、ドライバーが、自動車保険への加入から免れるわけではない。
世界中の各国政府は、各開発メーカーの技術動向を監視しながら、法律制定の論議に挙げるべきか否かを探っているという状況だ。
BMWは2021年に、高速道路上でのみ可能な「レベル3」を搭載したクルマを出す計画だという。
BMWは、その先にあるレベル4を市街地走行まで想定しており、そのためには車両開発はもちろん、インフラや地図データ、専用エリアでの実用とすることが必要だという。
つまり、我々は今すぐ免許証を放棄できるわけではない。そして、これらの自動運転システムを使うにあたっては、動作を理解するために、自動運転のライセンス制度のようなものが必要ではないか、と筆者は考える。
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