新しい家電製品を買うためにネットで下調べしている時に、価格が知りたいのに『オープン価格』という表示を見てもどかしい思いをした人も多いはずだ。
クルマ界で言えば、タイヤ、ドライブレコーダーなどはオープン価格となっている。人気の高い商品だけに注目度も高く、価格を知りたいと思ってもなかなかわからない。
そもそもオープン価格は何のためにあるのか? 価格がわからないというデメリット以外、ユーザーにとってメリットはあるのかについて考察していく。
【画像ギャラリー】懐かしさ全開!! ハイグリップタイヤ御用達の国産ハイパワースポーツ8台の共演
価格表示で最も新しいのがオープン価格

タイヤのオープン価格について見ていく前に、価格表示について触れておきます。
価格表示には、(1)定価、(2)希望小売価格、(3)オープン価格(プライス)の3種類が存在します。
(1)定価
メーカーが事前に決めた販売価格で、値上げや値下げが認められないのが原則となっています。しかし、卸売業者や販売店に価格を強制するとして、どれが独占禁止法に違反するとの考えから、この表記をあまり見ることがなくなりました。
(2)メーカー希望小売価格
メーカーが提示する希望する販売価格のことです。この価格で売ってほしいというあくまでも希望で、値上げや値下げの裁量は小売店にあるのが(1)定価と違う点です。
(3)オープン価格
メーカーは卸価格だけを決め、販売価格は小売店が決めます。

1980年代までは価格表示といえば希望小売価格が一般的だったのですが、ディスカウントストアなどの台頭により大きな変化が生まれてしまいました。
例えば、『希望小売価格1000円の商品を50%OFFの500円』と大々的に表示して販売するケースが続出し、二重価格表示によりユーザーはその商品の本当の価値がわからないという弊害が出始めました。
そもそも二重価格表示は違法で、その対策として登場したのがオープン価格なのです。
タイヤはなぜオープン価格なのか?

タイヤはクルマにとって何てはならないものですから、一定の需要はあります。そのいっぽうで、非常に趣味趣向、好みが反映されるものでもあります。
ハイグリップタイヤをはじめとするスポーツタイヤ、コンフォート系タイヤなどにユーザーは大注目し、現在では想像もつかないほど短期間にタイヤを交換する、ということも珍しくありませんでした。
そうなると店頭販売の激化が勃発します。1980年代後半から1990年代にかけてはタイヤの乱売により、メーカー希望小売価格と実売価格の乖離が顕著となりました。
この頃には大幅値引きは当たり前で、メーカー小売希望価格はあってないようなもの、つまり形骸化してしました。
それに対し、タイヤ業界のナンバーワンメーカーであるブリヂストンが、自社タイヤのメーカー小売希望価格をすべて廃止し、オープン価格化に踏み切ったのです。
このブリヂストンタイヤのオープン価格化に倣うように、他メーカーもオープン価格化を進め、タイヤのカタログからメーカー希望小売価格が消えていきました。
オープン価格のメリット
オープン価格をメーカーが採用した経緯を紹介しましたが、希望小売価格と実売価格の乖離することによってブランドイメージを損なうという問題が発生しました。
メーカーが危惧したのは、ユーザーが大幅値引きをするブランド、簡単に割り引きするブランドという認識を持つことで、タイヤがオープン価格を採用した最大の理由とも言えます。

オープン価格の採用によって、メーカーのブランドイメージを損なうことがなくなったというのがメーカーサイドの最も大きなメリットです。
さらに、値引き競争などにより小売店の消耗戦を防ぐことができる、実売価格をある程度コントロールすることができるなども大きなメリットです。
いっぽうユーザーサイドのメリットはどのようなものがあるのでしょうか?
希望小売価格と実売価格が乖離していた時には、どの価格で買うのがいいのか迷う、本当に適正価格で買っているのか疑心暗鬼になることもあったと思いますが、オープン価格により、提示された価格は安心できるものとなることでしょう。
オープン価格のデメリット
オープン価格のユーザーのデメリットは、価格がわかりにくいという点に尽きると思います。そういう意味では、オープン価格のユーザーのメリットは吹っ飛んでしまうほどです。
あと1カ所で価格を聞いてもそれが高いのか、安いのかさえもわからず、その商品の価値も把握することは不可能です。
今では価格ドットコムなど、実売価格を安いものから高いものまで一気に表示してくれる便利なサイトもありますが、それ以前は実際に店舗に行かないと価格がわからないというのが当たり前でした。
電話での問い合わせに応じてくれる店舗もあれば、来店者にしか教えない店舗もありました。

オープン価格は実売価格をメーカーでなく小売店が決める、事前に決まっているのは卸値だけだというのは前述したとおりですが、これも大きなポイントとなってきます。
卸値にどのくらい粗利を乗せるのかによって実売価格が決まるわけですが、タイヤの販売量など店舗によって卸値が違うため、必然的に実売価格にも差が出ます。
希望小売価格から〇%OFFというのならユーザーも実売価格がわかりやすいですが、卸値は公表されませんので、とにかく価格がわかりにくい。
ここまで読んでおわかりと思いますが、オープンプライスはメーカーにとって非常に都合のいいもので、ユーザーのメリットは限られます。
オープン価格で損しないためには、どこの実売価格が安いのか、というリサーチが重要になってくるのは言うまでもありません。裏を返せば、リサーチせずに購入することは損することなる、と断言できます。

タイヤに希望小売価格表示の波がくる!?
これまでタイヤのオープン価格について言及してきましたが、実はタイヤのオープン価格の火付け役であるブリヂストンは、ポテンザ、レグノ、エコピアをはじめ多くのブランドでオープン価格ではなく希望小売価格を明示し始めています。
これまでタイヤ業界では、トップメーカーのブリヂストンが変革を起こし、そのほかのメーカーが順次追従するというケースが多く見られました。タイヤへのオープン価格の導入の件もそうでした。

ブリヂストンが希望小売価格を明示してきていることが、他のタイヤメーカーに今後波及する可能性もあるかもしれません。
ただ、希望小売価格に戻るにしても、割引率は店舗によって違います。形態は変わりますがオープン価格と状況は変わりません。
少しでも安く買いたいと思ったら希望小売価格であろうがオープン価格であろうが、リサーチするのは同じです。
あの手この手を駆使して実売価格をリサーチして、満足のいく買い物をしていただきたいものです。
